こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「自分のイメージしている色味を、誰かに正確に伝えたい。」
- 「マンセル表色系、オストワルト表色系。・・・苦手な表色系をさくっと理解したい。」
という皆様に向けて、
インテリアコーディネーターや色彩検定でよく出題される表色系について画像で解説します。
表色系とは
日常生活で「色を相手に伝えたいとき」ってありますよね?
そんな時には、一般的に「赤」や「青」などの基本色名や、「オレンジ」や「ピンク」などの慣用色名などの「色名(いろめい、しきめい)」を用いて相手に伝えることが多いと思います。
▼基本色名と慣用色名って何だっけ?て方はコチラから▼
ところがこれにはちょっと不都合があって、この伝え方だと自分のイメージしている「色」と相手のイメージしている「色」が、けっこう違う色だったりすることがあります。
たとえば「赤」と相手に伝えても、相手のイメージする「赤」は自分のイメージしている「赤」よりちょっとだけ明るい「赤」かもしれません。
出典:321web
▲一言で「赤」と言っても、明度と彩度によってこんなに色味が異なる。
色に正確さを求めないのであれば、多少色のイメージが違って伝わっても問題ありませんが、ファッション業界、インテリア業界、出版業界、印刷業界など、色のプロでなければならない職業の人達にとって色を相手に正確に伝えられないのは致命的となります。
そこで、色の表示について誰もが共通認識できるルールや体系が必要となり作られたのが『表色系(ひょうしょくけい)』です。
代表的な表色系には『PCCS(日本色研配色体系)』のように色相とトーン(色調)によって特定の色を示すようなものがありますが、他にも世界的なレベルで最も普及している表色系である『マンセル表色系』をはじめ、さまざまな組織や色彩団体によって改良・発展されたものがあります。
▼PCCSって何なん?て方はコチラから▼
■表色系の種類
- マンセル表色系:1905年にアメリカの画家・美術教師アルバート・マンセルが考案
- オストワルト表色系:1923年にドイツのノーベル賞化学者オストワルトが考案
- CIE表色系:1931年にCIE(国際照明委員会)が発表
- DIN表色系:1955年にM.リヒターによって開発されたドイツの工業規格
- PCCS:1966年に日本色彩研究所が発表
- NCS:1981年に考案されたスウェーデンの工業規格
- CCIC:日本の商工会議所が2000年に発表したカラーチャート
顕色系と混色系
まず表色系を大別すると、『顕色系(けんしょくけい)』なるものと『混色系(こんしょくけい)』なるものに分けられます。
顕色系(けんしょくけい)とは、色の三属性である「色相・明度・彩度」によって表現する表色系で、「色空間(いろくうかん)」という立体的な3次元空間ができるのが特徴です。
出典:日本のものづくり
▲「マンセル表色系」の色空間を表現した『マンセル色立体』。中央が無彩色となっていて、その周囲を環状に色相が並んでいる。上下(高さ)で明度を表現し、上の色ほど明度が高い。また中央の無彩色から離れるほど彩度が高くなる。
代表的な顕色系には「マンセル表色系」や「PCCS」があり、これらの表色系は「物体」の色表示に使われるため、色票(いろひょう)と呼ばれる紙や板に彩色した色見本が存在します。
出典:COCOLOR
▲マンセル表色系の色票。顕色系は物体の色表示に用いられるため、このような物体の色見本がある。
一方、混色系(こんしょくけい)は「赤」、「白」、「黒」などいくつかはじめに元となる色(一次色)を決めて、それら一次色の混ぜ具合(混色量)によって色を表現する表色系です。
出典:ブランコ株式会社
▲混色系は、元となる色の混ぜ具合(混色量)によって色を表現するので、基本的には色票をもたない(物体ではなく「光」であったりするため色票を作れない)。
代表的な混色系には「オストワルト表色系」や「CIE表色系」があります。
代表的な表色系
マンセル表色系
マンセル表色系とは、H(Hue=色相)、V(Value=明度)、C(Chroma=彩度)という3つの属性を尺度化して、数字と記号を用いて正確に色味を伝達・表示することを目的とした表色系です。
マンセル表色系で用いられる3つの属性について、順番に説明してゆきます。
色相(マンセル色相環)
出典:ミツマジコウブログ
色相環(しきそうかん)とは、最も彩度の高い色である「純色(じゅんしょく)」を順序立てて円環にして並べたもののことで、「マンセル表色系」、「オストワルト表色系」、「PCCS」などで色相環が用いられます。
▼純色って何だっけ?ならこちらから▼
マンセル表色系に用いられる色相環は『マンセル色相環』と呼ばれます。
マンセル色相環は、5色の基本色相と中間色相である5色を加えた合計10色の主要色相からなります。
基本色相は「赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)」の5色です。
■マンセル色相環の基本色相
- 赤(R)
- 黄(Y)
- 緑(G)
- 青(B)
- 紫(P)
中間色相は「黄赤(YR)、黄緑(GY)、青緑(BG)、青紫(PB)、赤紫(RP)」の5色となります。
■マンセル色相環の中間色相
- 黄赤(YR)
- 黄緑(GY)
- 青緑(BG)
- 青紫(PB)
- 赤紫(RP)
以下のマンセル色相環では、これらの主要10色相が以下のように20分割されて表示されています。
▲このように純色を環状にならべたものがマンセル色相環で、それぞれの色相が数値で表されている。
時計回りによく見てみると、黄色(Y)が「5Y」「10Y」、次に中間色の黄緑(GY)が「5GY」「10GY」・・・という表記になっています。
これは色を区分するための番号で、マンセル色相環は主要10色がそれぞれ10分割されていて、赤(R)を見てみると実際は「1R」から「10R」というように番号で分けられているのです。(すべて表記すると色相環が細かくなりすぎるので、通常は上図のような省略された色相環を用いるのが一般的です。)
「5R」は、赤(R)の中心の色であるということになります。
明度
マンセル表色系の明度は、最も明るい色(理想的な白)を「10」、最も暗い色(理想的な黒)を「0」とした11段階で設定しています。
しかし、理想的な(完全な)白(「10」)と黒(「0」)は物理的に表現することが不可能なため、マンセル表色系では現実的な数字として「1〜9(9.5)」までの範囲が用いられます。
出典:日本のものづくり
▲マンセル色立体は、上にある色相ほど明度が高い。中央にある無彩色の上に突出した白が「10」、下に突出した黒が「0」で、現実には存在し得ない理想的な(完全な)白と黒とされる。
また最高明度は色相ごとに異なっていて、上の「マルセル色立体」を見ると「青(B)」や「青緑(BG)」の最高明度は低く、「黄(Y)」の最高明度は最も高くなっています。
彩度
マンセル表色系の彩度は無彩色を「0」として、彩度が大きいほど数値も大きくなりますが、色相や明度によって最大値は異なります。
最も彩度の数値が大きいのは赤(R)〜黄(Y)で「14」程度で、最低値の青緑(BG)は「8」程度しかありません。
出典:カラホM
▲無彩色の「0」は、実際には数字なしのアルファベット「N=Neutral」で表記される。
出典:カラホM
▲色相や明度によって彩度の最大値は異なるが、青緑(BG)が最も最大値が低い。
オストワルト表色系
オストワルト表色系とは、色彩調和を目的に作られた混色系の表色系で、ノーベル化学賞も受賞したドイツの化学者であるヴィルヘルム・オストワルトが1923年に考案しました。
まずオストワルトの色相環は、「黄、橙、赤、紫、青、青緑、緑、黄緑」という8つの基本色相のそれぞれを3分割した24色相となります。
▲オストワルトの色相環は8色のカラーのアルファベットの頭文字と1〜3の数字で24つに分けられている。この並びを暗記する必要は全くなし。
また、オストワルト表色系には明度や彩度という概念はなく、明度に相当するものを「白色量(白色が含まれている量)」、彩度に相当するものを「純色量(純色が含まれている量)」で表しています。
すなわち、オストワルト表色系の明るさや鮮やかさは、純色に混ぜる白と黒の量の割合(混合比)で決まる、ということです。
オストワルト表色系を色立体で見てみると、マンセル色立体とは異なる均整の取れた回転体(そろばんの玉型)になっています。
▲下にいくほど黒が多く混ぜられていて、上に行くほど白が多く混ぜられている。マンセル表色系とは異なり、オストワルト表色系の純色の位置は各色相で同じとなるように調整されている。
オストワルト色立体をまっぷたつにぶった斬ると以下のようになっていて、左右の両端がそれぞれの色相の純色、中央は白と黒の含有量が高く無彩色となっています。
出典:COLOR PALETTE
▲オストワルト色立体の左右同じ位置にある色は、色相は違えど「白・黒・純色」の含有量の割合は同じになる。
CIE表色系
CIE表色系とは、光の色(光源色)を数字で表すことができる混色系の表色系で、1931年にCIE(国際照明委員会)という組織によって開発されました。
色光(光)の3原色である「赤(R)・緑(G)・青(B)」を基準とした表色系で、これらを加法混色することで全ての色味を表すことができます。
▼色光(光)の3原色?加法混色?て方はコチラから▼
先にご紹介した「マンセル表色系」や「PCCS」は、人間の色の知覚の最も基本的な特性である色相、明度、彩度の3属性に基いているため、誰にでも直観的に分かりやすく、また表示方法も簡単で運用も手軽というメリットがあり、世界中で使用されています。
しかし、物体色だけが対象で光源色には使用できないこと、準備できる色票の種類数に限界があること(微妙な色味の中間色などは膨大に存在するから、すべて色票を作ったらえらいことになる)、細かい色の差を問題にするような場合には精度的に粗いこと、などのデメリットもあるのです。
これらのデメリットをカバーして、学界や産業界を中心に世界的に広く使用されているのが CIE表色系で、光源色はもちろん物体色にも適用できて、LED照明などにおいてもこのCIE表色系が盛んに使われています。
ただ、直感的な色味の分り易さについてはマンセル表色系やPCCSなどには及ばず、やや難解なので取っ付きにくいという感じを持たれる方も多いようです。
CIE表色系を種類で分けると「RGB 表色系」、「XYZ表色系」、「L*a*b* 表色系」、「L*u*v* 表色系」というなんだか訳のわからない多くの種類があるのですが、ここではCIE表色系を表示する色度図(しきどず)の見方が分かっていればOKです。
色度図とは、光の色の特性を数値で表した「色度(しきど)」を平面座標の点として表示した図形のことで、横軸「x」と縦軸「y」で示される直交座標平面の三角形(馬のヒヅメ型とも言われます)の領域内に色を付けた下のような図となり、これを「xy色度図」といいます。
▲座標位置(x,y)を指定すれば、その座標点に対応する色を求めることができるという表示システムで、世の中に存在する全ての色をこの「三角形」の中の座標(x,y)と明るさを表す数値(Y)の3つの数値で表示することができる。
数学が苦手な方はちょっと敬遠してしまいそうな xy色度図ですが、カラフルな三角形の中央部の(x,y)=(0.333, 0.333)あたりが、白に近い無彩色になっているのがお分かりになりますでしょうか。
この無彩色の部分を中心として、右端の赤から反時計周りに「黄赤→黄→黄緑→緑→青緑→青→青紫→紫→赤紫」と色相が変化していますが、この外周の虹色の配列順序となっている曲線部分を「スペクトル軌跡」と呼びます。
また、中央の無彩色部分を中心として、外側へ向かうほど彩度が高くなり、最も外側の色味が純色となることも覚えておきましょう。
▲中央の(x,y)=(0.333, 0.333)近辺が最も彩度が低く、外側に向かうほど彩度が高くなる。
ナンタルカのまとめ
■表色系
(1)色の表示について誰もが共通認識できるルールや体系が必要となり作られたのが(①)で、代表的な表色系には(②)のように色相とトーン(色調)によって特定の色を示すようなものがある。他にも世界的なレベルで最も普及している表色系である(③)をはじめ、さまざまな組織や色彩団体によって改良・発展されたものがある。
(2)表色系を大別すると、色の三属性によって表現する表色系で、色空間ができるという特徴のある(①)と、一次色の混色量によって色を表現する表色系である(②)に分けられる。
(3)色彩調和を目的に作られた混色系の表色系である(①)は、ノーベル化学賞も受賞したドイツの化学者によって1923年に考案された。また光源色を数字で表すことができる同じく混色系の表色系である(②)は、1931年に国際照明委員会によって開発された。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
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