こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「色相・明度・彩度の違いがごちゃごちゃになって覚えられない。」
- 「流行色ってだれがどうやって決めてんの?」
という皆様に向けて、
色彩の表示法について画像で解説します。
色彩の尺度
出典:ハジデザ
色は光の長短の波長なので理論上は無限に存在すると言えますが、人間はそれを感覚による区別によって分類・体系化し、「色相(しきそう)」、「彩度(さいど)」、「明度(めいど)」と呼ばれる3つの属性を作り上げました。
この3つの属性があることにより、色を見ていない相手にも言葉で色のイメージを伝えることができ、また3つの属性をコントロールすることにより自由自在のインテリア空間を作り上げることができます。
色相
▲色相を円で表したものを「色相環(しきそうかん)」という。
色相(しきそう)とは、物や光を見たときに感じる「赤」「青」「緑」のような『色味』のことを指し、英語では「hue(ヒュー)」 で「H」や「h」で略記されます。
色相のある色は有彩色(ゆうさいしょく)、色相の無い色(白、灰、黒)は無彩色(むさいしょく)といいます。
出典:吉田印刷所
明度
出典:321web
明度(めいど)とは、色の『明るさ』の度合いのことで、英語では「Brightness(ブライトネス)」 または「Value(バリュー)」で表記されます。
明度が高くなれば白に近づき、明度が低くなれば黒に近づきます。
無彩色は、明度の高さと低さだけで表現されています。
出典:321web
▲明るい色ほど明度が高く、最も明度の高い色は「純粋な白」となる。
彩度
出典:321web
彩度(さいど)とは、色の『鮮やかさ』の度合いのことで、英語では「Saturation(サチュレーション)」または 「chroma(クロマ)」と表記されます。
彩度が高ければ高いほど明瞭な色味となり目を惹く効果がありますが、彩度が低いとくすんだ色味となります。
同じ色相と明度であっても、彩度が高ければより鮮明に見える、ということになります。
出典:321web
▲彩度が低くなればなるほど無彩色に近づいていき、彩度が0になると色味が完全になくなって無彩色となる。
純色と中間色
また、各色相において最も彩度が高い色のことを純色(じゅんしょく)と言います。
この純色に白を混ぜた色が明清色(めいせいしょく)、黒を混ぜた色が暗清色(あんせいしょく)、灰色を混ぜた色が中間色(ちゅうかんしょく)または濁色(だくしょく)です。
▲「赤」の色相における明度と彩度のトーン(色調)。純色に混ぜる無彩色とその量によって、さまざまな明清色、暗清色、中間色が出来上がる。
トーンという尺度
PCCS
出典:NOIE
さて、前項で「赤」という色相におけるトーン(色調)というものをご紹介しましたが、トーンとは「明度と彩度を掛け合わせて色相の濃淡や明暗などの調子を表したもの」のことです。
この「色相」と「トーン」で体系化されたカラーシステムは『PCCS(日本色研配色体系)』といって、1964年に(一財)日本色彩研究所によって考案・開発されました。
色相、明度、彩度があることによって、色のイメージを他者に伝えることができるようになりましたが、トーンがあることによって「ストロングのレッドを使ってくれ!」というように、さらに細かい色の指示を出せるようになりました。
出典:NOIE
▲PCCSのカラーシステムの各トーンには「グレイッシュ」などの名前以外に、関連付けられるイメージがつけられていて、たとえば「ダル」には「鈍い」「くすんだ」とか、「ディープ」には「濃い」「深い」というイメージがある。ちなみに「灰み」は「はいみ」と読む。
色名による分類
人間の目は10万色以上の識別能力を持っていると言われています。
これら膨大な色の情報を記録・伝達するための学術的・実践的分類方法が数多く考案されていて、その一つが「色名(いろめい、しきめい)による分類」です。
色名とは、色に対して付けられた名前のことで、単純な「赤」や「青」というものから、修飾語を伴った「くすんだ黄色」や「鮮やかな緑」というもの、「藍色」「オレンジ」「アイボリー」というものまで様々です。
色名にはいくつかの種類があり、便宜上「基本色名(きほんしきめい)」「系統色名(けいとうしきめい)」「固有色名(こゆうしきめい)」の3つに大別されます。
基本色名
基本色名(きほんしきめい)とは、色を言葉で伝える際に最も基本となる色の名前のことです。
10色の有彩色と3色の無彩色に大別され、「紫」や「黄緑」などほぼ誰が聞いてもカラーをイメージできて、そのイメージするカラーに差異が無く世界共通での認識が可能です。
JIS(日本産業規格)では、無彩色に
- 「白(white)」
- 「灰色(gray)」
- 「黒(black)」
の3種類が用いられ、有彩色には
- 「赤(red)」
- 「黄(yellow)」
- 「緑(green)」
- 「青(blue)」
- 「紫(purple)」
の5色に加えて、これらの中間的な色を表す基本色名として
- 「黄赤(yellow red, orange)」
- 「黄緑(yellow green)」
- 「青緑(blue green)」
- 「青紫(purple blue, violet)」
- 「赤紫(red purple)」
を加えた計10色が採用されています。
系統色名
系統色名(けいとうしきめい)とは、基本色名に「鮮やかな〜」とか「濃い〜」などの修飾語を組み合わせた色のことです。
基本色名は色を分類する上で最も基本になる色名ですが、この世界に山ほど存在する色味を表すには基本色名だけでは不十分で、名前を付けてあげることのできない色味が残されてしまいます。
そこで、色相・明度・彩度に関する修飾語である系統色名を付加することで、広い色域を表現することができるということです。
■色相に関する修飾語
「赤みの」「黄みの」「緑みの」「青みの」「紫みの」
■明度・彩度の差異を表す修飾語
「明るい」「暗い」「鮮やかな」「くすんだ」「濃い」「薄い」「ごく薄い」「ごく暗い」「明るい灰みの」「灰みの」「暗い灰みの」
固有色名
出典:BHD
基本色名や系統色名は、色空間に属する色域を分割し区別するための表示方法ですが、固有色名(こゆうしきめい)はそれらとは異なり、既存の物体や事象、動植物や人名、地名などのイメージと関連づけられた色名のことです。
例えば、その色を得る直接の材料となった染料や顔料に由来する色名(藍色、朱色、べんがら色など)や、その色から喚起されるイメージに合う動物(鼠色、ラクダ色、サーモンピンク)や植物(薔薇色、桜色、桃色)、自然物(土色、水色、スカイブルー)や人工物(ワインレッド、テラコッタ、チョコレート色)などから色名が採用されています。
固定色名は「慣用色名(かんようしきめい)」、「伝統色名(でんとうしきめい)」、「流行色名(りゅうこうしきめい)」に大別されます。
慣用色名
慣用色名(かんようしきめい)とは、固有色名の中でも特に日常的に使われ一般に広く知れ渡っている色のことで「桜色」、「ラベンダー」、「オレンジ」、「生成り」などがあります。
系統色名である「薄い赤」という色は、慣用色名では「ピンク」にあたり、系統色名の「暗い黄赤」という色は、慣用色名では「茶色・栗色」にあたります。
間違えやすい慣用式名に次のようなものがあるので、覚えておきましょう。
■弁柄(べんがら)色
由来:インドのベンガル地方の赤土に由来
出典:カラーセラピーライフ
■山吹(やまぶき)色
由来:山吹の花の色
出典:カラーセラピーライフ
■利休鼠(りきゅうねずみ、りきゅうねず)
由来:茶人利休のイメージの緑みの鼠色
出典:カラーセラピーライフ
■鉄(てつ)色
由来:藍染の一種で鉄を使用する染め色
出典:カラーセラピーライフ
■浅葱(あさぎ)色
由来:薄い葱(ねぎ)の葉のような色
出典:カラーセラピーライフ
■納戸(なんど)色
由来:納戸の暗がりのような色
出典:カラーセラピーライフ
■藍(あい)色
由来:蓼藍(タデアイ)で染めた暗い青
出典:カラーセラピーライフ
■オリーブ色
由来:オリーブの実のような色
出典:カラーセラピーライフ
JIS(日本産業規格)では、269色もの慣用色名が規定されています。
伝統色名
出典:日本舞踊のぬりえ
伝統色名(でんとうしきめい)とは、日本古来から使われ続けてきた伝統的な色名のことで、「菖蒲色(あやめいろ)」、「銀鼠(ぎんねず)」、「杜若色(かきつばたいろ)」などがあります。
名前を聞いてもピンとこない色名が多いですが、「紅(くれない)」、「漆黒(しっこく)」、「桜色(さくらいろ)」、「浅葱色(あさぎいろ)」などのように慣用色名としても使われている伝統色名もあります。
流行色名
出典:apartment
流行色名(りゅうこうしきめい)とは、時代の風俗や技術を反映して一時的に流行して生まれた色名のこと、または商業的な目的により予め作られたり選ばれたりする色名のことです。
かつて日本の流行色名は、役者や茶道の達人たちが好んで使った色がもてはやされて世に広まったり、社会風俗の中で自然と発生したりして形成されたものでした。
そのあるものは歴史の中に忘れ去られて消滅し、あるものは「路考茶(ろこうちゃ)」、「利休鼠(りきゅうねず)」、「新橋色(しんばしいろ)」などのように伝統色名の中に名を残しているものもあります。
出典:カラーセラピーライフ
▲路考茶は江戸時代の歌舞伎役者「瀬川菊之丞(俳号:路考)」が好んで使用した茶色で代表的な流行色である。
現代の流行色名は、アメリカのグラフィック関連企業『PANTONE(パントン)』と『Inter Color(インターカラー)』という団体によって、組織的に販売戦略の有力な手段として生み出されています。
建築・インテリア業界に携わるものなら知らない人はいないであろう、色見本帳でお馴染みパントンカラーの『PANTONE』は、もともと化粧品メーカーに色見本帳を印刷する会社を母体に創業され、現在では世界共通の色見本を提供する会社として認識されています。
出典:PANTONE
▲PANTONE社による色見本帳。一言で「黄色」といっても様々な色味の黄色があるので、正確な色味を伝えるための基準となる色が必要になる。色見本帳のそれぞれのカラーには「色番号」がふられているので、色番号でカラーを指定することにより正確な色味を伝えることができる。
▲各企業のロゴを始め、この世の全ての製品や雑誌などの印刷物には細かく番号で色の指定がされている。印刷物は「CMYK」、webなら「RGB」などなど色については各媒体によって細かいルールがあるので、デザイナーはこのルールに則ってデザインを行う。
▼CMYK?RGB?っていう方はコチラから▼
そして、世界の流行色を司るもう一つの団体がフランス・パリの『Inter Color(インターカラー)』です。
正式名称は『INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR(国際流行色委員会)』で、2022年現在で日本を含む17カ国が加盟しています。
出典:Intercolor
トレンドカラーを発信している色彩情報団体は世界各国にあり、日本では「JAFCA(社団法人日本流行色協会)」が、イギリスでは「BCC(イギリス色彩協議会)」、アメリカでは「CAUS(アメリカ色彩協会)」や「TCCA(織物色標協会)」、フランスではビルビル社やロフィシェル社などが有名で、インターカラーはそれら各国の色彩情報団体のメンバーで構成されています。
各国の色彩情報団体から提案されたトレンドカラー候補がインターカラーに持ち込まれ、各国のメンバーによる会議により20〜30色ほどの流行色が決定されます。
日本では、この20〜30色の中からJAFCAによってさらに絞り込んでから、日本国内に発信しているのです。
■近年の『PANTONE』と『InterColor』による流行色
(左:PANTONE、右:InterColor)
ナンタルカのまとめ
■色彩の尺度
(1)赤、青、黄といった色味のことを(①)という。(①)を少しでも持つ色を(②)といい、黒、白、灰色などの色味が無い色を(③)という。
(2)色の明るさの度合いのことを(①)、色の鮮やかさの度合いのことを(②)という。それぞれの色相において最も(②)の高い色を(③)といい、(②)に灰色を混ぜることによってできる色を(④)または濁色という。
(3)明度と彩度を掛け合わせて色相の濃淡や明暗などの調子を表したものを(①)という。色相と(①)で体系化されたカラーシステムは(②)、またはヒュートーンシステムといって、1964年に(一財)日本色彩研究所によって考案・開発された。
■色名による分類
色名にはいくつかの種類があり、便宜上3つに大別される。色を言葉で伝える際に最も基本となる赤や緑、青などの色の名前のことを(①)、(①)に修飾語を組み合わせた色のことを(②)、既存の物体や事象、動植物や人名、地名などのイメージと関連づけられた色名のことを(③)という。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
▼次回、表色系はこちらから▼