こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「建築物の火災への対策について学習したい。」
- 「インテリア業界にいるのに内装制限、防火区画について知らないなんて言えない。」
とお悩みの皆様に向けて、
建築物の火災への対策について画像で解説します。
火災への対策
屋内消火栓
出典:株式会社永吉
屋内消火栓とは屋内に設置される消火栓の事で、消火栓は消火活動に必要な水を供給する設備です。
消火栓には「1号消火栓」や「易操作性1号消火栓」、「2号消火栓」、「広範囲2号消火栓」といった種類があり、それぞれに使いやすさや放水量などに違いがあります。
屋内消火栓は「延べ面積700㎡を超える防火対象物に設置」されますが、鉄骨造などの耐火構造にすることによって設置延面積が1,400㎡、2,100㎡になるという緩和があります。
出典:能美防災株式会社
▲「1号消火栓」は2人で使用するタイプ。1人がノズルを持って火の元に向けて、もう1人が消火栓の開閉弁を開ける。「易操作性1号消火栓」は1人で使用するタイプで、消火栓の開閉弁を開けてからノズルを持って火の元へ向けて、ノズルの開閉装置(レバー)を開けると放水する。
屋内消火栓は一般の方が使うためのもので、火事になった時に消防隊が火災現場に到着するまでの初期消火用です。
消火栓の扉を開けて、ホースを引っ張り出してバルブを回せば放水出来ます。
消防用スプリンクラー
住宅やオフィス、商業施設などの天井で目にすることができる「スプリンクラー」ですが、正式には「消防用スプリンクラー」といい、火災の感知から放水までを自動的に行う消防用設備の一つです。
防災設備の中では最も高額なので設置費用がかかりますが、初期消火の効果が高いので多くの施設に設置されています。
消防用スプリンクラーは、大きく「閉鎖型」と「開放型」と「放水型」に分けられます。
■閉鎖型:水の出口(ヘッド)が常に閉じられているもので、熱を感知すると開いて散水するタイプ(火災を検知しやすい小規模住宅など)
■開放型:水の出口(ヘッド)が常に開いているもので、「火災報知器」で炎を感知することにより一斉に開放して散水するタイプ(火災を検知しにくい高い天井をもつところ。倉庫、化学工場など)
■放水型:感知器が火災を感知すると制御部が作動し、強力な放水によって短時間で消火するタイプ(大規模な空間。ドーム球場、イベントホール、大きな劇場など)
出典:HOCHIKI
▲ドーム球場での「放水型」の消防用スプリンクラー。強力な放水力で一気に消火する。
「閉鎖型」のスプリンクラーは、さらに「湿式(しっしき)」、「乾式(かんしき)」、「予作動式(よさどうしき)」の3種類に分けられます。
出典:日建学院
閉鎖型湿式スプリンクラー設備
閉鎖型の中で最も一般的な「湿式」は、水の出口(ヘッド)まで常に水が充満しているので、火災になったらすぐに散水できるというメリットがあります。
出典:ヤマトプロテック株式会社
▲火災時に閉鎖型スプリンクラーヘッドが直接熱を感知することで開放し、満たされている水を放水して自動的に消火する。消火と同時に火災の報知と警報も行う。
閉鎖型乾式スプリンクラー設備
「乾式」は、ヘッドまで水ではなく圧縮された空気が常に充満していて、凍結の恐れのある寒冷地で使用されているタイプです。
出典:ヤマトプロテック株式会社
▲火災発生により閉鎖型スプリンクラーヘッドが直接熱を感知して開放し、加圧空気が放出される。すると配管内が減圧し、減圧により流水検知装置が作動してヘッドから散水する仕組み。
閉鎖型予作動式スプリンクラー設備
「予作動式」もヘッドまで水ではなく圧縮された空気が常に充満されていて、凍結の恐れのある寒冷地はもちろん、誤作動で水が掛かったら困るような場所(コンピュータールームなど)で使われます。
出典:ヤマトプロテック株式会社
▲配管内の凍結防止やスプリンクラーヘッドの誤作動による事故防止のために、予作動式流水検知装置以降に充水しない設備方式。火災時には火災感知器などの作動により予作動弁を開放し、圧力水が供給されヘッドより散水するシステムである。
内装制限
建築基準法における『内装制限(ないそうせいげん)』とは、建物内部で火災が発生した際に、内装が激しく燃えて火災が拡大したり、有害ガスを発生して避難を妨げることがないよう、燃えにくい素材しか使えないようにするなど内装に関する規定を設けて制限することです。
この仕上げ材に使われる「燃えにくい素材」というのが「不燃(ふねん)材料」、「準不燃(じゅんふねん)材料」、そして「難燃(なんねん)材料」です。
これらは「炎で加熱した時に何分間燃えない状態が続くか」によって区別されています。
出典:確認申請ナビ
▲上記のように、不燃・準不燃・難燃は「材料を加熱したときに何分間、燃えない状態が続くか」によって区別されている。
内装制限は、天井や1.2m以上の高さの壁部分の仕上げ材を制限するもので、「床」は制限の対象外です。
また、ドアや間仕切りなどの「建具」も含まれません。
内装制限の対象となる建築物
内装制限の対象となる建築物一覧表が、以下になります。
一見、分かりにくい表ですが、主に劇場、病院、百貨店など不特定多数の人が出入りする建築物(特殊建築物)が内装制限の対象となっていて、他にも一定面積以上の大規模建築物、厨房などの火気使用室、窓が無いか著しく小さい居室(無窓居室:むそうきょしつ)、11階以上の高層建築物、地下街なども対象となっている事に注目してみましょう。
出典:チヨダウーテ
▲特殊建築物は「建物が耐火建築物か否か」と「用途に供する部分の床面積」によって内装制限の対象となるかどうかが変わる。(例:床面積合計200㎡以下の診療所は内装制限対象とならない。)
一般住宅でも、2階建て以上の建物で、最上階以外の階にある火気使用室(2階建てなら1階のキッチン)は内装制限の対象となります。
しかしコンロが「IHクッキングヒーター(IHコンロ)」なら、そもそも火を使わないので火気使用室に該当しません。
防火区画
防火区画(ぼうかくかく)とは建築基準法で定められた区画のことで、火災が発生した際に被害を最小限に抑えるために「防火戸(防火扉)」を用いて炎を建築物の1区画に封じ込めることを目的としたものです。
防火区画の壁や床には燃えにくい耐火構造や準耐火構造、開口部には防火シャッターなどの防火戸、柱や梁には不燃材料を用いて一定の区画に区切ります。
出典:貸しビル大百科
▲炎や煙を防火区画に封じ込めることにより、延焼を防いで避難経路や避難する時間を確保することが可能となる。
防火区画の種類は、以下の4つに大別されます。
①面積区画
出典:アーキクラウド
面積区画とは、主に水平方向の火災拡大を防ぐために一定の面積ごとに防火区画で区切ったものです。
建築物の床面積や主要構造部の耐火構造などによって防火区画の面積は異なります。
(例えば、1,500㎡を超える耐火建築物を設計する際は、1,500㎡以内ごとに防火区画を設けなければならない。)
出典:貸しビル大百科
▲スプリンクラーなどの消火設備等を設けた部分については、その床面積の1/2を面積区画の対象から除くことができるという「面積区画の緩和」がある。(2,000㎡に消火設備を設けた場合、床面積は1,000㎡とみなされ、1,000㎡ごとに防火区画を設ける。)
②高層区画
出典:ITmedia
高層区画とは、11階以上の高層建築物の場合には火災が発生した際にはしご車が届かず消火活動がより困難になると予想されるため、面積区画よりさらに区画面積が制限された区画のことです。
出典:貸しビル大百科
▲面積区画と同様、不燃材の有無に応じて区画面積が変動する。燃えにくい不燃材料を使っていれば、防火区画を大きくすることができる。
③竪穴(たてあな)区画
出典:総合施設管理
竪穴(たてあな)区画とは、炎や煙が広がりやすく危険な階段や吹き抜け、エレベーター昇降部分、メゾネット住戸など、縦に空間が広がっている部分を防火扉や防火シャッターなどの不燃材料で覆って、火や煙を閉じ込めるための区画です。
出典:貸しビル大百科
▲防火シャッターは一度閉じられると通行することは不可能となるが、避難経路を確保するため別途「避難扉」を設ける決まりとなっている。
竪穴区画が必要な建築物は、以下2つどちらにも合致する建築物です。
- 地下、または3階以上に居室がある建築物
- 主要構造部が準耐火構造(・耐火構造)
出典:確認申請ナビ
▲主要構造部が準耐火・耐火構造の場合、階段には竪穴区画が必要になるが2階の吹き抜けは竪穴区画は不要。
竪穴区画は、2019年6月25日施行の建築基準法改正によって、以下の内容で緩和されました。(『準竪穴区画』)
■新基準①:下記のすべてに当てはまる建築物は、間仕切壁 or(遮煙性能のある)戸で竪穴部分を区画する。(防火戸や防火扉、防火シャッターを使用しなくてもよい。)
・ 用途:ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、通所系の児童福祉施設
・3階建て
・床面積200㎡未満
・準耐火構造(・耐火構造)以外の建築物
■新基準②:「3階が病院、診療所(就寝施設あり)、児童福祉施設等(就寝施設あり)の用途」で、床面積200㎡未満の「準耐火構造(・耐火構造)以外の建築物」は、間仕切壁 or 以下の防火設備で竪穴部分を区画しなければならない。
・スプリンクラー等が設けられた建築物 : 防火設備(10分間遮炎性能・遮煙性能)
・スプリンクラー等がない建築物 : 防火設備(20分間遮炎性能・遮煙性能)
④異種用途区画
出典:貸しビル大百科
▲住宅と事務所が1つのビル内に混在している場合、事務所部分で発生した火災を住宅部分に広がらないように不燃材料等で囲う必要がある。
一つの建築物に異なる用途の区画が複数混在するような建築物の場合、利用時間帯や利用者の人数、火災の発生する可能性などがそれぞれ異なります。
異種用途区画とは、建物の被害を最小限に抑えるために異なる用途の区画間を不燃材料等を用い、燃え広がりを他区画に広がらないようにするための区画です。
ナンタルカのまとめ
■火災への対策
(1)消火活動に必要な水を供給する設備で屋内に設置される消火栓のことを(①)といい、初期消火に有効である。
(2)火災の感知から放水までを自動的に行う消防用設備を(①)という。防災設備の中では最も高額なので設置費用がかかるが、初期消火の効果が高いので多くの施設に設置されていて、(②)型、開放型、放水型の3つに大別される。(②)型はさらに(③)、乾式、予作動式に分けられ、住宅には(③)が用いられることが多い。
(3)建物内部で火災が発生した場合に、内装が激しく燃えることで火災が広がったり有害なガスを発生したりして内部にいる人間の避難を妨げる状況がないよう、内装に関する規定を設けてそれを制限することを(①)という。仕上げ材に使われる燃えにくい材料には、燃えにくい順に(②)材料、(③)材料、(④)材料がある。
(4)建築基準法で定められた区画で、火災が発生した際に被害を最小限に抑えるために防火戸などを用いて炎を建築物の1区画に封じ込めるものを(①)という。(①)には水平方向の火災拡大を防ぐために一定の面積ごとに区切った(②)、縦に空間が広がっている部分を防火扉や防火シャッターなどで覆って火や煙を閉じ込める区画とした(③)などの種類がある。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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