こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「フール・プルーフとフェイル・セーフの違いが分かりません。」
- 「インテリア業界で働く上で、地震対策や住宅の健康被害については理解しておきたい。」
という皆様に向けて、
地震への対策と安全な避難計画、住宅における健康被害について画像で解説します。
▼安全・健康住宅の前編はこちらから!▼
地震への対策
出典:えのげ
▲地震の揺れの恐怖からスチールラックにしがみ付いた猫
日本は世界有数の地震大国であり、世界で発生しているマグニチュード6以上の地震の約2割が日本周辺で発生しています。
近年では平成23年3月11日の「東日本大震災」をはじめとする大規模地震が発生し、多くの被害をもたらしました。
さらに40年以内に起こると予想されている「南海トラフ地震」においても、被害の範囲は東海地方から九州までの広範囲におよび、死者は最大23万人に達するとの被害想定が内閣府から発表されています。
出典:株式会社アーウィン
▲90〜150年前後の間隔で発生している「南海トラフ地震」は、最後に発生したのは1940年代。やがてくる地震、そして津波への懸念から、海から離れた場所や高台の物件に人気が集中している。
インテリアや建築に関わるものとして、地震発生を考慮した提案は必須となります。
また多くの転倒防止&地震対策グッズが販売されているので、家具の配置やインテリアに合った正しい対策を行いましょう。
転倒防止&地震対策グッズ
L字金具
出典:ディノス
L字金具は、家具と壁をネジやボルトなどによって固定するもので、大きな家具が前に倒れてくるのを防ぎます。
壁がすかすかの場所にネジを刺しても意味が無く、必ず心材(芯材)が通っている場所に固定することが重要です。
金具の大きさは大小さまざまで、まっすぐなカタチをした「I字金具」などもあります。
ベルト式
出典:Buhitter
ベルト式は、家具と壁をそれぞれネジ止めした金具によりベルトで結んだもので、壁の心材(芯材)が固定したいものと離れている場合にベルトの長さを調整して固定できるという特徴があります。
L字金具と同様、家具の左右両端と壁等に固定するのが一般的で、背の高い家具はもちろん冷蔵庫と壁の固定にもベルト式が使用されます。
ポール式
出典:平安伸銅株式会社
ポール式は多くの方が利用したことがあるのではないでしょうか。
「突っ張り棒」という名前でも有名な、壁にネジ止めすることなく家具と天井の隙間に設置できる棒状のものです。
様々なサイズが販売されていて長さも調整が出来ますが、天井と家具の空間が大きすぎると効果は下がります。
ストッパー式
出典:東京消防庁
ストッパー式は家具の下に挟み込み、家具を壁側に傾斜させて倒れにくくさせる転倒防止具です。
壁や天井に対して固定する必要が無く気軽に設置が出来て、 転倒防止と引き出しの飛び出しを抑えることができるのが特徴です。
ポール式とストッパー式を組み合わせて使用するとL型金具と同等の高い効果が期待できます。
またキャスター付きの家具やオフィスでのコピー機には、以下のような車輪の動きを抑制するストッパーが有効です。
出典:高津伝動精機株式会社
▲車輪用のストッパーも様々な種類が販売されている。
粘着マット式
出典:ROOMIE
▲粘着性のゲルは、家具や家電の底面の四隅に貼り付ける。(上の画像は家具を横に寝かしています)
粘着マット式も様々な種類がありますが、一般的には粘着性のゲル状のものが多く、家具や家電の底面に貼ることにより地震による揺れを最小限に抑える効果があります。
粘着性のゲルは引っ張れば簡単に剥がすことができて、水で洗うことにより何度でも使用できます。
出典:HEIM
▲びよーんと伸びてどこにでも設置できるが、長時間使い続けるとくっ付いて剥がれなくなるゲルもあるようなので、賃貸住宅では使用する場所に注意が必要。
ロック機構(耐震ロック)
出典:pamouna
ロック機構(耐震ロック)とは、地震が発生したときに扉が開いて中の物が落ちてこないようにするために扉を自動でロックする装置のことです。
一般的に震度5前後の地震が発生すると、吊り下げられている物が大きく揺れて吊り戸棚の収納物が落下してくることがあります。
皿やグラスなどの割れやすい物や重い物を収納していると頭上に落下して怪我に繋がる恐れがあるので、近年販売されている吊戸棚にはロック機構(耐震ロック)が標準となっているものが一般的です。
▲メーカーによってロック解除の仕方はさまざまだが、だいたい強く押して解除することが多い。
合わせガラス
出典:レスキューラボ
▲合わせガラスはガラスの間にある柔軟で強靭な特殊フィルムの働きにより、ガラスを割ることは出来ても貫通させることは困難であるため、防犯ガラスとしても用いられる。
合わせガラスとは「防災ガラス」とも呼ばれ、2枚の板ガラスの隙間に柔らかくて強靭な特殊なフィルムを挟み込み、加熱圧着したガラスです。
ガラスと特殊フィルムが接着されている為、地震や衝撃などで万一ガラスが割れた場合でもほとんど破片が飛び散ることがありませんので、避難する際に足で踏んだり、上から落ちてきたガラス片で怪我をすることがありません。
出典:KODAMA GLASS
▲フロートガラス(普通ガラス)の約3.5倍の強度を持つ強化ガラスだが、地震の強い力の前では耐えることができない。強化ガラスの破片は細かい粒状になるのが特徴。
出典:株式会社ヤマテ・サイン
▲網入ガラスとは、ガラスに金網(ワイヤー)を封入したガラスのことで、金網により火災時のガラスの飛散を防止する。別名で「ワイヤー入りガラス」、「防火設備用ガラス」とも。
その他の対策として、可動式棚板を金物で固定する『棚板の固定』や、棚板の先端から収納物が滑り落ちないよう『立ち上がり』を付けて落下を防ぐ対策、棚に『横バー』を取り付けて滑り落ちによる落下を防ぐ対策などがあります。
出典:楽天市場
▲収納物の滑り落ち、飛び出しを防ぐ「横バー」は、もともと棚に取り付けられているものと後付け可能なものがある。一見頼りないバーだが、有ると無いとでは効果は段違い。
安全に避難するための計画
建築物や家具、家電、および人間が活動を行う場にある全ての物は、危険が無いように寸法や素材、動かし方などさまざまな工夫が凝らされています。
家具や家電についてはJIS(日本産業規格)で安全性の試験方法が定められ、基本的な安全性能が備えられているものが一般的です。
▼JIS(日本産業規格)って何なん?てかたはこちらから▼
このような家具や家電は誤った使い方が出来ないような、もしくは誤った使い方をしても危険が無いような設計となっていて、災害などの不測の事態にも同様の概念が積極的に導入されています。
フール・プルーフ
フール・プルーフとは安全工学における用語のひとつで、工業製品やシステムを設計する際、そもそも間違った使い方ができないように配慮する設計手法のことです。
英語では「壊したり間違えたりすることなく誰でも簡単に使える」という意味を持つ「idiot-proof(イディオット・プルーフ)」という言葉が使われることもあります。
例えば、全自動洗濯機で蓋が開いたままだとスタートボタンを押しても動作しなかったり、脱水槽が完全停止しないと蓋が開けられない、洗濯乾燥機は停止後温度が下がらないと開けられない、などがあります。
出典:サイクリングロード
電子レンジもドアが閉まらないとスタートしませんし、温め中にドアを開けると自動停止するのも安全に使用できる工夫なのです。
出典:サイクリングロード
避難時においては、火災や地震によりパニックとなり判断力が低下することを想定し、必要となる操作を簡単にするなど、誰もが間違えることなく非難できるような設計としています。
出典:サイクリングロード
▲パニックになり急いで逃げようとすると、人はドアをまず押そうとする。その心理を利用して、避難扉は必ず外開きとなっている。これもフール・プルーフである。
フェイル・セーフ
フェイル・セーフとは、なんらかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害や失敗(Fail)が発生しても、常に安全(Safe)に制御することです。
失敗できない「フール・プルーフ」に対して、失敗しても安全に制御するのが「フェイル・セーフ」と覚えてください。
例えば、ぶつかって倒れてしまった電気ストーブは自動的に電源がオフになることや、エレベーターに挟まれてしまっても接触を感知して開くのもフェイル・セーフです。
出典:サイクリングロード
また避難経路においても、逃げ道には行き止まりを作らず、間違って最短距離の避難ルートを選ばなかったとしても外に出れる道へと繋がるように2方向以上の避難経路を常に確保して設計しておくこともフェイル・セーフの考えによるものです。
出典:Slide player
▲フェイル・セーフとフール・プルーフの避難時の例。フェイル・セーフは間違った避難経路を選んでも外に出れるように複数箇所の避難経路を用意しておくこと。
住宅における健康被害
シックハウス症候群
出典:DENHOME
シックハウス症候群とは「シック=病気」という名前の通り、室内の汚染された空気を吸うことで引き起こされる、様々な体調不良のことです。
体調不良には倦怠(けんたい)感・めまい・頭痛・湿疹・のどの痛み・呼吸器疾患などがあり、新築の住居だけでなく職場でも発症する例が見られます。
室内空気の汚染源としては、家屋など建物の建設や家具製造の際に利用される接着剤や塗料などに含まれる「ホルムアルデヒド」や、木材をシロアリの食害から守る殺虫剤である「クロルピリホス(※)」などがあるとされています。
※クロルピリホスとは
農薬やシロアリ駆除などに用いられてきた有機リン系殺虫剤のこと。
住宅では、主に木造住宅の1階部分の柱や土台などに塗布し、シロアリからの食害を防ぐものとして多用されてきた。
しかしシックハウス症候群への対策として、居室を有する建築物へのクロルピリホスを含んだ建材の使用が、建築基準法の改正により2003年(平成15年)から禁じられている。
▼シックハウス症候群と対策はこちらの記事でも解説!▼
ホルムアルデヒド
出典:iesumu
▲ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因となる代表的な化学物質で、ヒトの粘膜を刺激して目がチカチカして涙が出る、鼻水が出る、のどの渇き・痛みや咳などの症状を引き起こす。
ホルムアルデヒドとは「VOC(揮発性有機化合物:きはつせいゆうきかごうぶつ)」の一種で、毒性が強く刺激臭のある無色透明な気体です。
揮発性有機化合物には「トルエン」や「ベンゼン」などいくつか種類があり、壁紙や家具に使用される接着剤、塗料などの溶剤や燃料、防腐剤として重要な物質であることから、私たちの生活の中で幅広く使用されています。
室内に放散されたホルムアルデヒドを多量に吸い込むとアレルギーや中毒を起こす恐れがあり、具体的な身体への影響としては目・鼻・喉の痛みやかゆみ、頭痛、ふらつき、皮膚のかゆみなどがあり、重度の場合には吐き気や不整脈、手足のしびれ、呼吸器障害などがあります。
健康被害への取り組み
化学物質の放散量が少ない建材を使用する
2003年(平成15年)7月の建築基準法の改正によりホルムアルデヒドを含有する建材、換気設備の規制など、室内空気中の化学物質の濃度の改善が図られるようになると、建物に使われる素材には昔ながらの漆喰(しっくい)、そして接着剤で貼り合わされた合板では無く本物の木などの「自然素材」を使った健康的な住宅が注目されるようになりました。
出典:クラフトホーム
▲ビニールなどの化学物質が使われた建材ではなく、本物の木などのナチュラルな素材を使用した建材は、健康志向の高まりを受けて注目されている。
建材に使われる合板やフローリングなどには、ホルムアルデヒドの放散量が星マーク(☆)で製品に表示されるようになり、表示記号は「F☆☆☆☆(エフフォースター)」が星マーク4つで最も放散量が少量で、次いで「F☆☆☆(エフスリースター)」、「F☆☆(エフツースター)」などがあります。
出典:大阪や商店
▲F☆☆☆☆であってもホルムアルデヒドが入っていないわけではないことに注意!
24時間換気システム
出典:マイホーム体験記
▲24時間換気システムの吸気口は15×15cmくらいの大きさで、戸建てでもマンションでも取り付けが義務付けられている。手動で開閉が可能。
ホルムアルデヒドを含む建材を住宅に使用した場合、窓を閉め切ったままでいると、発生する化学物質で汚染されてしまいます。
そのため改正建築基準法が施行された2003年7月以降、全ての建造物に『24時間換気システム』と呼ばれる、24時間稼働し続ける換気設備を設置することが原則として義務付けられました。
24時間換気システムは、窓を開けて換気するような従来の自然換気とは異なり、機械(ファン)によって強制的に室内の空気の入れ替えを行う事を可能とした換気設備のことです。
出典:SUUMO
▲2003年7月以降に建築された全ての建築物に24時間換気システムの設置が義務付けられている。機械を使っているのはトイレ、洗面室、浴室に設置された排気口のみ。
出典:NETオーナーズクラブ
▲24時間換気システムは室内のスイッチにより手動で風量の調節やオンオフが可能。スイッチのデザインは24時間換気システムのメーカーによりさまざま。
機械換気の種類
給排気の方法によって「第一種換気」、「第二種換気」、「第三種換気」と3つの換気方式に分けられます。
第一種換気
第一種換気とは、給気口と排気口の双方にファンなどの機械換気装置をつける換気方式です。
給気の際に室内の空気を暑くしたり寒くしたりしないよう、室内温度に近い温度で給気ができたり、湿度の調整を行うことができるなど、効率よく計画的な換気が可能ですが高額になります。
第二種換気
第二種換気とは、給気口は機械換気装置、排気口は自然排気という換気方式です。
入り口にあるファンが強制的に室内に空気を押し込み、押し出される形で排気口から空気が出て行くことで、室内の気圧が外気より上がります(『正圧(※)』)。
汚れた空気を室内に入れさせない働きがあることから、手術室や無菌室、精密機械を扱う工場などに使用されています。
第三種換気
第三種換気とは、給気口は自然給気、排気口は機械換気装置という換気方式です。
出口で空気を引っ張り出していることで、室内は外気より気圧が下がります(『負圧(※)』)。
住宅に最も採用されている換気方式で、コストが安く湿気の侵入を防ぐなどのメリットがありますが、住宅の気密性能があまり高くない場合、様々な隙間から空気が室内に流入することで、給気口から十分な給気が行われず、家の中に換気不良の箇所が生まれる危険性があります。
※正圧(せいあつ)と負圧(ふあつ)とは
正圧とは、室内の空気の圧力が室外の空気より高い状態のことで「第二種換気」でみられる。
室内の空気がいっぱいになる事で圧力が高く、汚れた空気を室内に入れさせない働きがあることから、手術室や無菌室、精密機械を扱う工場などに使用される。
負圧とは、室内の空気の圧力が室外の空気より低い状態のことで「第三種換気」でみられる。
圧力が低いと室内に空気を入れる働きがあり、排気口から汚れた空気は室外へ逃げていくので、トイレや厨房に使用される。
出典:株式会社さくら
▲正圧は換気フィルターを通した綺麗な空気で室内がパンパンになるため、外部の汚い空気を室内に持ち込みにくい。負圧は機械で排気するため、室外の空気がどんどん入ってくる。例えば空のペットボトルを吸い込むとペットボトルが凹むのは負圧の状態。
ナンタルカのまとめ
■地震への対策
地震発生時に室内の安全を確保する方法として、窓ガラスの破損によるガラス片の散乱を防ぐ(①)や、扉にロックを付けて収納物の散乱を防ぐ(②)、L字金具やポール、ベルトなどによる家具と壁の固定がある。
■安全に避難するための計画
避難時において、火災や地震によりパニックとなり判断力が低下することを想定し、必要となる操作を簡単にするなど、誰もが間違えることなく非難できるような設計とすることを(①)という。また逃げ道に行き止まりを作らず、間違った避難ルートを選んでも外に出れる道へと繋がるよう2方向以上の避難経路を常に確保しておくなど、間違えても危険につながらない設計とすることを(②)という。
■住宅における健康被害
新築住宅に多く見られる、室内の汚染された空気を吸うことで引き起こされる、様々な体調不良を(①)という。室内空気の汚染源としては、家屋など建物の建設や家具製造の際に利用される接着剤や塗料などに含まれる(②)や、木材をシロアリの食害から守る殺虫剤である(④)がある。
■健康被害への取り組み
揮発性有機化合物を含む建材を住宅に使用した場合、窓を閉め切ったままでいると発生する化学物質で汚染されてしまう。そのため改正建築基準法が施行された2003年7月以降、全ての建造物に(①)と呼ばれる機械を使用した換気設備を設置することが原則として義務付けられた。一般住宅には(②)換気が採用されることが多い。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
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