こんにちは、しけたむです。
この記事では
- 「スティーブ・ジョブスも触発された禅ってどんなもの?」
- 「禅宗の用語って分かりづらいから画像で確認したい。」
という方に向けて
禅宗の教えや特徴を分かりやすく画像付きで解説していきます。
禅宗(ぜんしゅう)文化のインテリア
そもそも『禅』ってなんですか?
皆様は『禅(ぜん)』という言葉を聞いたことはありますか。
禅という言葉は、仏教用語として「心が動揺することのなくなった状態」を意味する サンスクリット語「ध्यान( dhyāna、ディヤナ)」の音写(聞こえた音をそのまま日本語に当てはめること)である「禅那(ぜんな)」の略語です。
中国で禅那の教えを説くとする宗教『禅宗(ぜんしゅう)』が確立すると、禅は「禅宗」の略語にもなったので、ちょっとややこしいですね。
また、禅宗における座って行う瞑想は『坐禅・座禅(ざぜん)』と呼ばれ、禅宗における修行の中心とされていますが、なんと禅という言葉はこの坐禅(座禅)の略語としても用いられるので、とっても広い意味があるのだと頭の片隅に入れといてください。
禅とは
・「禅那」の略語
・「禅宗」の略語
・「坐禅・座禅」の略語
日本では坐禅修行を主とする仏教宗派を『禅宗』という総称で呼んでいて、
・臨済宗(りんざいしゅう)
・曹洞宗(そうとうしゅう)
・黄檗宗(おうばくしゅう)
という3つの宗派があります。
宗派によって解釈は異なりますが、「坐禅(座禅)を行い、精神を集中して無我の境地に入ること」を各宗派共通の目的としています。
禅の起源
出典:Quora Who is Bodhidharma and what did he do?
▲日本で有名な縁起物の『だるま』はインド人の『菩提達磨(ぼだいだるま)』がモチーフとなっている
禅の起源は古代中国にさかのぼり、南インド出身で中国に渡った僧『ボーディ・ダルマ』を始祖としています。
『ボーディ・ダルマ』という名前は、古代のインドや南アジアで用いられた言語「サンスクリット語」です。
このサンスクリット語の名前を音写(聞こえた音をそのまま日本語に当てはめること)したのが『菩提達磨(ぼだいだるま)』となります。
菩提達磨は5世紀から6世紀の人で、中国に渡り仏教の始祖『釈迦(しゃか)』の弟子として禅を広めました。
達磨によって伝えられた禅はやがて鎌倉時代の日本にも伝わり、室町時代に入ると禅宗文化が武士層を中心として流行します。
書院造や、枯山水の庭、絵画や茶道などの芸道まで、現代に通じる日本文化のあらゆるものがこの禅宗の影響を受けています。
▼禅宗が影響を与えた書院造、枯山水はこちら▼
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禅宗文化のインテリア用語
方丈(ほうじょう)
出典:浄土宗総本山知恩院
▲京都にある浄土宗総本山知恩院の方丈
方丈(ほうじょう)とは禅宗の長老や導師などの尊い人が住む部屋のことです。
「方」には四角形の意味があり、「1丈(約3m)」四方の広さの部屋であったことが、方丈の語源となりました。
生活の場である部屋を意味することばなのですが、住職や師匠など人に対しても方丈と呼びます。
方丈の中で、坐禅をする部屋を特に『室中(しつちゅう)』といい、方丈の出入口を『玄関(げんかん)』といいます。
庫裏・庫裡(くり)
出典:金閣寺-御朱印
▲1602年創建、1835年に再建された金閣寺の庫裏
庫裏・庫裡(くり)とは寺院の台所・厨房のことで、庫院(くいん)と呼んでいる寺院もあります。
一般的には台所の役目を担っていますが、食堂も庫裏に含まれることも多いです。
小さな寺院は、本堂、方丈、庫裏の三つで構成されています。
眠蔵(みんぞう、めんぞう)
出典:関西の巡礼地
▲京都大徳寺にある眠蔵は1964年の改修工事で1502年の創建当初の姿に復元された。基本的には寝るだけの部屋なので広くは無い。
眠蔵(みんぞう)とは、寝室のことです。
家具をしまっておく納戸のことも眠蔵と呼ばれ、寝室が納戸と隣接していることが多いです。
また眠蔵は、眠堂(めんどう)といわれることもあります。
曲彔(きょくろく)
出典:精選版 日本国語大辞典/きょくろく
曲彔(きょくろく)とは、僧が法事の際や法会などで座る椅子です。
鎌倉時代に中国の宋から伝来したもので、背もたれが大きく曲がっている独特の形状をしています。
曲彔ということばは曲彔木(きょくろくぎ)の略で、彔は『木を削(はつ)る(そぎ落とす)』という意味なので、木を削って曲線をつくった椅子ということになります。
出典:お仏壇ちゃんねる
▲僧が法事のときに用いる椅子として、現代でも使われている曲碌。写真は座面が回る回転曲碌。
脚部がX型に交差したデザインで、折りたたみができるタイプのイスは交椅(こうい)とも呼ばれます。
朱色や黒の漆で塗装され、金具には装飾が施されるものもありました。
水墨画と枯山水
禅宗の襖絵(ふすまえ)には水墨画(すいぼくが)が描かれ、庭には枯山水(かれさんすい)の石庭(せきてい)が主流となりました。
この水墨画は、各部屋の個性を表現する主要なエレメントとなり、水墨画家の雪舟(せっしゅう)が日本独自の水墨画を大成したことで有名です。
雪舟と水墨画
出典:BUSHOO!JAPAN
▲雪舟の自画像と代表作品『秋冬山水図』の秋景(1470年頃)
水墨画(すいぼくが)とは、中国で7世紀頃に成立したとされる墨の濃淡で表現された絵画技法です。
日本へは12−13世紀頃、鎌倉時代に禅とともに伝わりました。
その後、禅宗の広まりとともに14−15世紀頃の室町時代に日本水墨画の全盛期を迎え、雪舟をはじめとする優れた画僧が登場しました。
雪舟(1420年 – 1502年)は禅僧ですが幼い頃から画才を発揮して、中国留学を経て室町時代に大成した水墨画家です。
雪舟は京都にある臨済宗『相国寺』で修行した後、周防国(山口県)に移り、その後中国(明)に渡って、水墨画の本場中国の画法を学んでいます。
それまでの日本人水墨画家は中国模倣ばかりをしていたのですが、雪舟のすごいところは日本独自の画風や表現技法を確立したというところにあり、日本絵画史上最大の画派『狩野派』からも師として仰がれていたため、江戸時代頃からは神様扱いをされるほどになりました。
▲現存作品のうち6点が国宝に指定されていて、日本の絵画史において雪舟は別格の高評価を受けている『天橋立図』(1501−1506)
枯山水
出典:庭園ガイド
▲枯山水の代表格とも名高い臨済宗『龍安寺』の石庭
枯山水(かれさんすい)とは水を使わずに岩や砂などで山水を表現した日本庭園の様式の一つで、室町時代中期にこのような様式が確立されました。
枯山水は禅宗の影響を強く受けた庭園ですが、「禅の精神性を表現」したものでなければ禅の庭といえず、枯山水と禅の庭はイコールではないとされます。
禅の庭とは目に見える庭を通して、そこに繋がる延々と続く宇宙を表現したもので、石が置かれている場所、数、大きさなどに全て意味があります。
砂は水面を表現していて、広い場合は海や池であることが多いです。
▲砂には箒目(ほうきめ)と呼ばれる文様をつける事も多く、それぞれに意味がある
枯山水は水を使わないため屋内や屋上にも作れ、近代的な建築にも馴染み日本らしい雰囲気がでるため、禅の精神のあるなしに関わらず現代においても人気が高い様式です。
ジョブスも虜になった『禅』
出典:ニッポンドットコム
アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブスも禅の精神に触れ、日本に通い、禅の心について学んだと言われています。
生まれた直後に養子に出されたジョブズは、若い頃から精神世界に没頭し、大学を中退した19歳の頃には当時のヒッピー(※)の通過儀礼ともいえるインド放浪に旅立ち、1カ月を過ごします。
ヒッピーとは
1960年代のアメリカで若い世代を中心に、既成の制度や慣習、価値観念に反抗して、ジーンズやカラフルな衣装、ドラッグ、ロックンロール、瞑想を好み、人間や自然との直接的なふれ合いに高い価値をおいて、定職につかず放浪するなどしていた人々。
▲「ラブ&ピース」が合言葉のヒッピーは、現代でもアメリカを中心にヒッピー文化として残っている
その際に、ジョブスは精神世界に関する書物を読み漁り、最後にジョブズが拠り所としたのが、禅でした。
出典:ニューヨークの遊び方
▲1982年のジョブズの自宅の様子。何でも完璧主義だったジョブズは満足のゆく家具が見つからず、写真のようなガランとした部屋に住んでいた。
ジョブスは坐禅によって心の奥深くを見つめ、普段の物の見方とは異なる視点を常に持つように努めました。
異なる視点を持って「自分は何を望むのか」を探ることが、「人々が何を望むのか」を知ることにつながる、、、
これこそがジョブスの究極のマーケティング・リサーチであり、その為に坐禅を使っていたのでした。
ジョブスは人々が本当に望むものを精神世界の深層まで探しに行っているので、ジョブスが開発したアップル製品には顧客の深い心を揺さぶる力を持っていたのです。
出典:The Newyork Times
▲数々の革新的な製品を発表し続けたスティーブ・ジョブス。2007年のiPodイベントにて。
もともと新しくてスマートなものには目がないアメリカのIT企業は『ジョブズの禅』に触発され、こぞって禅を社員プログラムに取り入れ始めました。
膨大な情報の海に溺れかかっていた知的エリートたちは、情報と自分をコントロールする術を禅に見いだそうとしています。
禅を導入している企業は、グーグル、インテル、IBM、フェイスブック、そしてその流れはアメリカ国防総省にも及びます。
出典:Culturia
▲ リーダー育成や社員の能力開発のため、GAFAで導入されるマインドフルネス
ジョブズによりスタイリッシュなイメージをまとった新たな禅のうねりは、宗教色を排した『マインドフルネス』という名称のもとで欧米に拡散し、日本に逆輸入されています。
ナンタルカのまとめ
■禅宗文化のインテリア
(1)鎌倉時代に(①)が日本にもたらされ、室町時代には武士を中心に広がりを見せた。書院造の形成、(②)のような作庭の考え方や(③)が大成した水墨画などの芸術など、現代に通じる日本文化の多くが(①)の影響を受けている。
(2)禅宗の導師の生活の場は(①)と呼ばれ、座禅の部屋である(②)、台所や食事の場である(③)があった。また現在の(④)の語源は、(①)の出入り口から来ている。
(3)禅宗の生活は中国の様式を取り入れ、椅子が法事に用いられた。背もたれが円弧を描く独特の形をした(①)や、折りたたみ式の椅子である(②)が使用された。
お疲れ様でした。
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次回もお楽しみに!
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