どうも、しけたむです。
この記事では
- 「エルゴノミクスって何か聞くけどどういう意味?」
- 「人間工学についてとにかく基礎の基礎から知りたい。」
という皆様に向けて、
人間工学の基礎について画像でしっかり解説します。
人間工学の基礎を覚えよう
人間工学とは?
インテリア計画を進める上で、最も基礎的な資料となるのが人間工学(にんげんこうがく)のデータです。
人間工学とは、人間のサイズや重量、動作、筋肉の動きなどを数量的に捉えて、それを空間設計や商品製作に役立てようとする科学のことです。
人間工学のことを、アメリカ圏では「Human Engineering(ヒューマンエンジニアリング)」、ヨーロッパ圏では「Ergonomics(エルゴノミクス)」と呼んでいます。
人体寸法とは?
人間工学を研究する上で根幹となる資料が人体寸法(じんたいすんぽう)です。
人体寸法には、人体そのものの寸法を示す「静的(せいてき)人体寸法」と、生活の中で人の動作と移動に必要な寸法や、人と物を組み合わせた空間の寸法を示す「動的(どうてき)人体寸法」があり、これらの計測値が建築・インテリアの分野では重要な資料となります。
▲人体寸法には静的なもの(静止した人体寸法)と、動的なもの(身体の各部の移動や行為に必要な寸法)がある。椅子やベッドなどの家具の設計には「静的人体寸法」が、建築系の家具の設計には「動的人体寸法」が重要になる。
わたしたちが日常使っている様々な道具、家具や建物の大きさは人体寸法を基準につくられていますが、人体寸法がそのままズバリでモノの設計寸法になるわけではありません。
空間の設計では人体寸法とともに、人の行き来がしやすいように、またゆとりを持って動作ができるように「あき」や「ゆとり」のスペースを設けて設計する必要があります。
出典:株式会社オカムラ
▲例えばオフィスだと、人体寸法が許す限りデスクや収納家具を配置すると「あき」や「ゆとり」の無い窮屈な空間となる。家具占有率55%の室内(右)から青い色のデスクと収納を撤去して家具占有率を45%にまで下げると、通りやすく使いやすい空間となった。
▲住宅の室内でも同じように、人体寸法の「あき」と「ゆとり」を考慮しないで家具を詰め込むと暮らしにくいイケてない部屋となってしまう。
また、人体寸法は民族、年齢、性別などによって大きく異なることにも留意しなければなりません。
例えばさまざまな人体寸法の平均値を採用してソファを作った場合、このソファのサイズにばっちり適合する人は平均値に近い人体寸法(体格)を持つ人たちに限られてしまい、平均値から外れた人体寸法を持つ人々にとっては使いにくいソファとなってしまいます。
そこで、平均値と共に標準偏差(ひょうじゅんへんさ:平均値の周りにばらついている数値のこと)も考慮して、設計を進めることも重要です。
略算値(りゃくさんち)とは?
高さ方向の人体各部の寸法は身長とおおよその比例関係にあるため、身長を基準にして必要寸法を略算(※)することができます。
※略算(りゃくさん)とは
近似値を求めるときに、その誤差を許される範囲内にとどめることを条件として、計算の手数を簡単にする方法のこと。
ちなみに略算値(りゃくさんち)とは、略算の値のこと。
下図は代表的な人体寸法の略算値です。
これさえ覚えておけば、寸法を測りたい時にメジャーを忘れても略算を求めることができるので便利です。頭に入れておきましょう。
出典:note
▲身長(H)を基準として上記の数値を乗すれば、略算値を求めることができる
上図の人体寸法の略算値には記載がありませんが、
「肘から指先までの長さ = 0.25H」
という略算値もよく使用されます。
出典:日経Gooday
▲あなたの腕から指先までの長さは、身長の4分の1になりますか?
この略算値を応用すると、
身長(H)+ 肘から指先までの長さ(0.25H)= 1.25H
となり、「手をまっすぐ上に伸ばした時の高さ」の略算値を求めることができます。
人体各部の質量比
出典:時は素敵な暮らしなり
▲座った姿勢での人体寸法の質量比。頭部、腕部、膝(ひざ)から下部がそれぞれ約8%の質量比になることを覚えておけば良い。
人体寸法の質量比も設計の際に用いられます。
例えば上の図を見ると、人体の部位の中で頭部の重さは体重の 8% を占めていることが分かります。
背もたれの無いスツールに腰掛けた場合、膝から下の重さを除く 約84% の重さがスツールにかかると計算できるということです。
(100% ー (6%+2%)× 脚2本)= 84%
背もたれの無いスツールでは無く、休息性の高い背もたれのあるソファだと、座面と背もたれにより重さが分散されます。
また、人体寸法の質量比は人間の成長によって変化します。
生まれた時は頭部の質量比が大きいですが、成長するに従い胴体や四肢の質量比が大きくなります。
人体の4つの姿勢
出典:しかくしか
人体がとる姿勢は、多く分けて次の4種類に分類されます。
直立や前かがみ、中腰の姿勢を「立位(りつい)」、椅子に腰掛けたり壁へ寄りかかったりした姿勢を「椅座位(いざい)」、しゃがんだり四つん這い、正座やあぐらをかいた姿勢を「平座位(へいざい)」、うつ伏せや仰向けで横になっている姿勢を「臥位(がい)」といいます。
立位(りつい):直立、背伸び、前かがみ、中腰
椅座位(いざい):寄り掛かり、腰掛け
平座位(へいざい):しゃがみ、四つん這い、正座、あぐら
臥位(がい):伏臥(ふくが:うつ伏せ)、仰臥(ぎょうが:仰向け)
作業域とは?
一定の場所にいる人間が、手足など身体各部位を動かすために必要な空間領域のことを作業域(さぎょういき)、または動作域(どうさいき)ともいいます。
私たちが何か作業をする際に、デスクや作業台の上のような水平面で行われることが多いですが、このような平面で行われる作業域を「水平作業域」といい、さらにそれは最大限に手を伸ばして届く範囲の「最大作業域」と、肘を曲げて楽に動かせる範囲の「通常作業域」に分けられます。
出典:しかくしか
▲カリフォルニア大学のBarnes (バーンズ)教授は戦前から人間工学の研究を行っていて、アメリカ人の最大作業域と通常作業域を提唱した。戦後、アメリカ海軍のSquires (スクアイアース)はバーンズの数値を修正して、上図緑色の通常作業域が好ましいとした。
また上下方向で手の届く範囲を垂直作業域、水平作業域と合わせた立体的な手の届く範囲を立体作業域といいます。
■水平作業域:水平方向で手の届く作業域
・通常作業域:肘を曲げて楽に動かせる水平作業域
・最大作業域:最大限に手を伸ばして届く水平作業域
■垂直作業域:上下方向で手の届く作業域
■立体作業域:水平作業域と垂直作業域を組み合わせた空間のこと
ナンタルカのまとめ
■人間工学とは
インテリア計画を進める上で、最も基礎的な資料となるのが(①)のデータで、人間工学とは、人間のサイズや重量、動作、筋肉の動きなどを数量的に捉えて、それを空間設計や商品製作に役立てようとする科学のことである。アメリカ圏では(②)、ヨーロッパ圏では(③)と呼んでいる。
■人体寸法とは
人体寸法には人体そのものの寸法を示す(①)と、生活の中で人の動作と移動に必要な寸法や、人と物を組み合わせた空間の寸法を示す(②)があり、これらの計測値が建築・インテリアの分野では重要な資料となる。また空間の設計では人体寸法とともに、人の行き来がしやすいように、またゆとりを持って動作ができるように(③)や(④)のスペースを設けて設計する必要がある。
■略算値とは
高さ方向の人体各部の寸法は身長(H)とおおよその比例関係にあるため、身長を基準とした(①)を用いて求めることができる。代表的な(①)である「手をまっすぐ上に挙げた時の高さ」は(②)となる。
■人体の4つの姿勢
人体がとる姿勢は多く分けて4種類に分類される。直立や中腰などの姿勢である(①)、椅子に座っている姿勢である(②)、正座や地面にしゃがんだ姿勢である(③)、寝ている姿勢である(④)がある。
■作業域とは
デスクや作業台の上のような水平面で行われる作業域を(①)といい、さらにそれは最大限に手を伸ばして届く範囲の(②)と、肘を曲げて楽に動かせる範囲の(③)に分けられます。
お疲れ様でした。
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