こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「錯視ってなに?どんな種類があるの?」
- 「反転図形、多義図形、矛盾図形の違いが分からない。」
という皆様に向けて、錯視やゲシュタルト、さまざまな図形について画像で解説します。
ゲシュタルト心理学
ゲシュタルト心理学とは、人間を取り巻く世界をバラバラな「部分」や「要素」としてではなく、「全体性」や「構造」に重点を置いて捉える心理学です。
そして、この全体性を持ったまとまりのある構造をドイツ語で「ゲシュタルト(「形態」という意味)」と呼びます。
つまり「人間は物を部分部分で見ているのではなく、全体の構造(枠組み)をまず見ている(見ようとする)」ということです。
下図のような点を見た時、私たちはそれぞれの点は互いに無関係な点とは見ずに、四角形の四隅に当たる点や、星形の頂点に当たる点というように「全体性を持ったまとまりのある構造」として、まず見てしまいます。
▲個々の点という「部分、要素」を前にした時、それぞれ「四角形の点」、「星形の点」など、まず全体の構造(枠組み)を見てしまう。
漢字やひらがなといった文字も線や点の組み合わせですが、それらを「文字」として理解している上で「全体性を持ったまとまりのある構造」として捉えているから文字として認識が出来ています。
出典:STUDY HACKER
▲漢字や平仮名など、文字は点や線の部分が集まって構成されているが、それを全体として捉えることにより意味を認識できている。
▲「を」という字を紙に書き続けると、だんだん「を」という字を認識できなくなってしまうことがある。このような現象が「ゲシュタルト崩壊」で、ずっと見続けるだけでも起こることがある。
全体として認識しているゲシュタルトの例
図形
中途半端な線や点であっても、パターンを補って丸や三角、四角という図形として理解できます。
出典:UXTIMES
目と口に当たる部分さえあれば、人の顔に見えます。
絵
点と線の集合体ですが部分として見ることはもはや難しく、どこからどう見てもヒツジにしか見えません。
近くに寄って見ることで、点や線の集合体であることが分かります。
曲やメロディ
ゲシュタルト心理学はデザインだけでなく、音楽の分野にも当てはまります。
曲やメロディは、多くの人間は1つ1つの単音の集合と捉えず、音のまとまりをメロディやリズム・曲のようにまとまりとして認識してしまうのもゲシュタルトの一種です。
図と地の関係
前回の記事『視覚心理と造形①』でご紹介した「ルビンの壺」という反転図形も、ゲシュタルト心理学でよく引き合いに出されます。
▼前回記事、『視覚心理と造形①』はコチラから▼
「ルビンの壺」とは、白い壺が描かれた絵が、しばらく見つめていると向かい合う黒い顔に見えるという反転図形のことです。
▲最初に白い部分が壺に見えやすいのは「明度が高い」、「全体構成の中央を占めている」、「何かに囲まれている」などといった条件を備えているため。
このように、1つの視野内に「2つの領域」が同時に存在するとき、一方の領域には形だけが見え、もう一つの領域は背景を形成します。
背景から分離して知覚される部分(「ルビンの壺」では壺のこと)を「図(ず)」といい、背景となる部分を「地(じ)」といいます。
1912年に「図と地」ということばを初めて使った人物こそが、「ルビンの壺」の作者であるデンマークの心理学者ルビンであり、「図と地」はゲシュタルト心理学の重要概念のひとつとなっています。
▲鏡を見つめる女性が「図」となる絵だが、見つめ続けると「図と地」が反転して白い骸骨が図として浮かび上がってくる。『All is Vanity』
錯視
▲渦巻なのに指でなぞっても中央に行けない?(『フレイザー錯視』)
前回の記事でご紹介しました恒常視(こうじょうし)とは逆に、目にした対象を実際のものとは違う形で捉えてしまうことを錯視(さくし)といいます。
▼恒常視って何なん?という方はコチラから▼
錯視にはさまざまな種類があり、ものの大きさ・角度・色が変わって見えるもの、止まっているものが動いて見えるもの、 存在しないものが見えるもの、平面なのに立体的に見えるものなど、多くの錯視が発表されています。
出典:みんなの知識
▲同じ大きさの図形でも、大きい物の周りに置かれると小さく、小さい物の周りに置かれると大きく見える。(『エビングハウス錯視』)
錯視図形
上方過大視
上方過大視(じょうほうかだいし)とは、同じ形でも上方向にある形の方がちょっとだけ大きく見えてしまう錯視です。
人は視線をやや下に落として生活しているため、上下に並んでいるものは上の方が遠く、下の方が近くにあるものと認識しやすくなっています。
出典:DS INSIDE
▲同じ図形を縦に並べた時に上の方が大きく見える傾向があるため、下の図形を大きめにバランス調整すると同じ大きさに見える。
出典:321web
▲上方過大視のため、下方を大きくしてバランス調整しているフォント。多くの身近な場所で、このような視覚調整が行われている。
水平・垂直の錯視
水平・垂直の錯視とは、同じ長さの線でも垂直線は水平線より長く見えてしまう錯視です。
垂直線を、まるで地面の上を地平線に向かって伸びる道路のようなものと感じてしまい、同じ長さでももっと長いものと脳が解釈して起こります。
出典:みんなの知識
▲AとBは合同だが垂直のBが長く見え、さらにAはBより太く見える。(『フック錯視』)
出典:DS INSIDE
▲正方形も「水平・垂直の錯視」により、やや長方形ぎみに見える。Webなどのデザインではそのまま使用することも多いが、より正方形らしく見せたい時には少しだけ高さを縮めるとよい。
分割・長さの錯視
分割・長さの錯視とは、分割されたものは分割されないものより大きく見えるという錯視で、『ヘルムホルツの図形』が有名です。
▲どちらも全く同じ大きさの正方形だが、横線で分割すると縦長、縦線で分割すると横長の正方形に見える。(『ヘルムホルツの図形』)
▲「分割・長さの錯視」はファッションにはもちろんインテリアにも取り入れられている。カーテンのストライプ柄は、天井の高さを高く見せるようにほとんどが縦型となっている。
角度・方向の錯視
角度・方向の錯視とは、角度をもって交わる線や曲線のために、平行線が平行に見えない、または直線が曲がって見える錯視のことです。
▲赤い正方形が背後の青い線の影響を受けて歪んで見える。(『オービソンの図形(錯視)』)
出典:ブランコ
▲平行に並んだ6本の線が、斜線によって傾いて見える。(『ツェルナーの図形(錯視)』)
出典:ブランコ
▲一直線の線が隠されることでずれて見える。(『ポッケンドルフの図形(錯視)』)
出典:321web
▲2本の平行線が放射線によって大きく歪んで見える。(『ヘリングの図形(錯視)』)
対比の錯視
対比の錯視とは、ある形態が他の形態の大きさや長さに影響を受ける錯視のことです。
▲全ての横線は同じ長さだが、矢印の閉じ方によって異なる長さに見える。(『ミュラー・リヤーの図形(錯視)』)
▲どちらも同じ大きさの黒い円だが、大きな円に囲まれることにより小さく見える。(『デルブーフの図形(錯視)』)
多義図形と矛盾図形
錯視を利用した図形には、1つの図形でいくつもの解釈ができる多義図形(たぎずけい)や、実際にあり得ない形が表現されている矛盾図形(むじゅんずけい)などがあります。
多義図形
▲表紙をコチラに向けて向こうに開いてる本にも見えるし、その逆に開いているようにも見える。(『マッハの本』)
▲なんの変哲もない階段だが、天井からぶら下がっている階段にも見える。(『シュレーダーの階段』)
▲19世紀から存在する最も有名な多義図形のひとつ『妻と義母』(作者不詳)。向こうを向いている女性にも見えるし、老婆の横顔にも見える。
矛盾図形(不可能図形)
▲上は繋ぎ目がどう見ても有り得ない『ペンローズの三角形』と、下はフォークのような形だがどうやっても実現ができない『ブリヴェット(悪魔のフォーク))』
▲修道士たちが僧院の階段を延々と上りながら下っている矛盾図形。マウリッツ・エッシャーのリトグラフ『上昇と下降』
お疲れ様でした。
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