こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「東ヨーロッパから西アジアにかけてのオリエンタルな雰囲気のインテリアや建築に興味がある。」
- 「イスラム文化について理解を深めたい。」
という皆様へ向けて
イスラム文化のインテリアについて画像で解説していきます。
イスラム文化
▲天使ジブリールから啓示を受けるムハンマド(14世紀,エディンバラ大学所蔵『集史』「預言者ムハンマド伝」載録の細密画)
7世紀、預言者マホメット(アラビア語ではムハンマド)がメッカ(サウジアラビアの都市)で開いたイスラム教を理念とするイスラム(イスラーム)文化は西アジア、北アフリカ、スペインなどで開花しました。
出典:コトバンク
▲緑色の部分がイスラム帝国の最大領域で、赤い点がイスラムの遺跡のある場所を指している。イスラム教の誕生の地であり聖地である「メッカ」は、現在のサウジアラビアにある。
イスラムとはアラビア語で「神に帰依すること」を意味し、キリスト教は創始者であるイエス・キリストを「神の子」と神聖化しているのに対し、イスラム教は創始者であるムハンマドをただの人間と見なしています。
これはイスラム教が「神(アッラー)の前にはみな平等」という考えであり、イスラム建築では室内装飾などに人物などは描かれず、幾何学的な模様(アラベスク模様)などが発達しました。
出典:Flickr
▲イスラム建築では人物は描かれず幾何学的な模様、植物モチーフなどが使用される。写真はウズベキスタンにある世界遺産『レギスタン』のモザイクタイル。
イスラム建築の特徴
出典:Flickr
▲トルコのイスタンブールにある世界遺産『スルタンアフメト・モスク(ブルー・モスク)』は「イスラム建築で最も美しいモスク」と評される。
イスラム建築(イスラーム建築)とは、7世紀から19世紀までの期間にイスラム文化圏で形成された建築を指しています。
約1200年にも渡る長い期間と、世界の半分と言ってもよいほどの地域を占めていて、イスラム文化の建築や装飾・意匠はイスラムを信奉する民族と同じほど多様性を持つと言っても過言ではありません。
イスラム建築は古代ローマやビザンチン、そして7世紀と8世紀にイスラム教徒が征服した他のすべての土地からの影響を受けています。
東からは中国やインドの建築からの影響も受けるなど、その範囲は非常に広大です。
出典:インドイスラム建築史/タージ・マハル
▲現在のインドの主要な宗教はヒンドゥー教だが、当時この地を支配していたムガール帝国はイスラム王朝だったため、ヒンドゥー文化とイスラム文化が交わった建築物となった。
広大な地域からの様々な影響により、イスラム建築は独特な建築と装飾を生み出しました。
またイスラム建築に共通する全般的な傾向としては「パティオ(中庭)」をもつ建築が多く、建築材料には古代から使用されている日干し煉瓦(ひぼしれんが)を、また仕上げ材料には漆喰(しっくい)やタイル、石、テラコッタが使用されました。
出典:Pinterest
▲スペイン最南部に存在していたイスラム王朝が建てた『アルハンブラ宮殿』には、『ライオンの中庭』と呼ばれる美しいパティオがあり、宮殿は鮮やかなテラコッタ焼きの屋根瓦が使用されている。
イスラム建築の開口部には、様々な形状のアーチをはじめ、ドームなどの曲面構造を駆使している例も多く見られます。
▲イランのシーラーズにある『ナスィーロル・モルク・モスク(ピンク・モスク)』(1888年)の特徴的なアーチ。
▲イスラエル・聖地エルサレムの東にある『岩のドーム』は、現存するなかでは最古のイスラム建築で687~691年に建立された。ドームは「サフラ」と呼ばれる聖なる石を覆っていて、木造ドームの外装は金メッキ、外壁は 16世紀にモザイクタイルから彩釉タイル装飾に改装されている。ビザンチン建築の特徴を受継ぎつつ、それを越えようとした建築の代表作である。
▼ビザンチン建築って何だっけ?ならこちらから▼
また、徹底した偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)否定の精神から、人物画や神仏像などの彫刻は普及せず、アラビア文字で書かれたコーラン(イスラム教の聖典)の一文、抽象的な幾何学文様、植物文様などを浮彫り(うきぼり)やモザイク、象嵌(ぞうがん)などによって表現する、平面上での装飾が発達したのも大きな特徴です。
出典:SquareKufic
▲立体的な文様が施された「浮彫り」は、イスラム建築のレンガやタイルに多用された。青い釉薬(ゆうやく)で色付けすることにより、青と白のコントラストで浮き上がりを目立たせている。
出典:Authindia
▲「象嵌(ぞうがん)」とは、地となる素材に異素材をはめ込んで模様を描き出す技法。『タージ・マハル』では白い大理石に宝石や黒大理石が埋め込まれている。
アラベスク
出典:Flickr
▲モスクを装飾する幾何学模様と花の模様が組み合わせれたアラベスク
アラベスク(arabesque)は、モスク(イスラム教の礼拝堂)の壁面装飾などに見られるイスラム美術の一様式で、幾何学的模様や植物のツルや花をパターン化した装飾です。
西洋のキリスト教の教会にはイエス・キリストをはじめ多くの人物が描かれていますが、イスラムでは偶像崇拝が禁止されていたため特定の人物などは描かれずに幾何学模様が発展し、美しいアラベスクがイスラム建築を彩りました。
アラベスク模様は、大きく分けて3つの種類があります。
・『幾何学模様』・・・世界の秩序を支配する原理を表すもの。数学的なバランスがあり、可視的物質世界を超えて広がる無限のパターンを構成する。
・『植物モチーフの模様』・・・生命および生命を生み出す女性を表現。
・『カリグラフィー(アラビア書道)』・・・イスラム教の聖典コーランの内容をアラビア語で記したもの。
これらの模様は、それぞれ組み合わせて使用されることもありました。
出典:Pixabay
▲モスクに使用される幾何学的模様のアラベスク
出典:123RF
▲植物モチーフの模様を使用した華やかなアラベスク
出典:諸概念の迷宮
▲幾何学模様と植物モチーフの模様である花を組み合わせたアラベスク
出典:alaraby
▲アラビア語を模様として溶け込ませているカリグラフィー
アーチ
▲イランのイスファハンにあるモスク『シャイフ・ルトゥフッラー・モスク』(1619年)の尖頭アーチ
イスラム建築には様々な形状のアーチが用いられました。
アーチとは建造物の窓や入り口、門や橋などで見かける弓形に曲がった梁(はり)のことです。
イスラム建築での代表的なアーチには、
尖頭(せんとう)アーチ、馬蹄形(ばていけい)アーチ、多葉(多弁)アーチなどが多く用いられました。
出典:goo辞書
出典:Twitter
▲ピンク色のタイルが多用されていることから「ローズモスク」や「ピンクモスク」とも呼ばれるイランのシーラーズにある『ナスィーロル・モルク・モスク』の美しい尖頭アーチ
▲スペインにあるイスラム建築『アルハフェリア宮殿』の多葉(多弁)アーチ。丸く窪んだ部分を葉に見立てている。この多葉アーチは11の葉(窪み)があるので「11葉のアーチ」である。
出典:saraiのブログ
▲スペインのセビリアにある宮殿『アルカサル』の馬蹄形アーチ。ディズニー映画『白雪姫』のモデルとなった城として有名。
▼アーチについてはこちらの記事でも▼
代表的なイスラム建築
アルハンブラ宮殿
出典:トリドリ/アルハンブラ宮殿
▲アルハンブラ宮殿の中庭『アラヤネスのパティオ』
スペイン南部アンダルシア地方の都市グラナダにあるアルハンブラ宮殿は、スペインを代表する世界遺産のひとつです。
宮殿と呼ばれていますが数千人が居住する城塞都市でもあり、アルハンブラ宮殿の中には住宅、官庁、軍隊、厩舎、モスク、学校、浴場、墓地、庭園といった様々な施設を備えていました。
出典:Flickr
▲丘の上の城塞都市『アルハンブラ宮殿』の全景。まさに砦のような堅牢さを感じる。
アルハンブラ宮殿は、かつてイベリア半島を統治していたイスラム王朝最後の王国となったグラナダ王国が築いた宮殿ですが、9世期末の完成当時はアラブ人が農民の反乱軍からの防御壁として築いた砦が原型となっていて、その後時代とともに何度も増築・拡張工事が行われています。
建築の材料には、レンガ、木材、土などの脆いものが多く、彫刻を施した石材などは最低限しか使用されていません。
出典:Stockly United
▲天井に施された彫刻は「ムカルナス」と呼ばれる鍾乳洞(しょうにゅうどう)のような天井装飾。
また、アルハンブラ宮殿内に敷き詰められたタイルは、1枚1枚当時のタイル職人によって作られたもので、非常に精巧な作りでした。
出典:Tumblr
▲1枚1枚貼られたタイルとカリグラフィー(アラビア書道)が彫られた装飾
タージ・マハル
出典:インドイスラム建築史/タージ・マハル
タージ・マハルはインドのアーグラにある、シャー・ジャハーン帝国の妃『ムムターズ・マハル』の廟(びょう)(※)です。
(※死者を祀る建物のこと。)
出典:Amazon
▲当時の帝国の君主シャー・ジャハーン(左)とその妻ムムターズ・マハル
イスラム中から当時の一級の建築家と工芸家を呼び寄せ、1632年から20年以上かけて完成させました。
タージ・マハルは、南北560m、東西303mの敷地に建てられており、建物も庭園もすべて緻密な計算に基づく完璧な対称性を誇っています。
出典:Britannica
▲タージ・マハルの外壁は全て大理石が使用され、1,000頭以上もの像によって運ばれた
出典:PH
▲外壁の大理石は、異素材をはめ込んで模様を描き出す「象嵌(ぞうがん)」と呼ばれる技法で装飾されている。異素材には宝石や黒大理石が選ばれた。
出典:いい旅インド
▲象嵌で描かれたカリグラフィー
使用されている宝石の数は28種類にも及び、中国、エジプト、スリランカ、アラビア、ペルシャ、アフガニスタンなど各地からの選りすぐりが集められました。
1983年、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。
ナンタルカのまとめ
■イスラム建築の特徴
7世紀に(①)が開いたイスラム教を理念とするイスラム文化は、西アジア、北アフリカ、スペインなどで開花し、幾何学的模様や植物のツルや花をパターン化した装飾(②)がイスラム建築を彩った。またアーチも多様化し、頂部が尖ったかたちの(③)や馬の蹄をモチーフにした(④)などが生まれた。
■代表的なイスラム建築
代表的なイスラム建築には、9世期末に建てられたスペインを代表する世界遺産である(①)や、17世期に建てられたインドを代表する世界遺産である(②)がある。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
▼次回、ロマネスク文化のインテリアはこちら!▼