こんにちは、しけたむです。
この記事では
- 「インテリアコーディネーターとして知っておくべきベッド関連の情報がほしい。」
- 「最近眠れないんだけど、人間の睡眠のメカニズムってどうなってんの?」
とお悩みの皆様に向けて、
睡眠のメカニズム、マットレスの構造やサイズについて画像でしっかり解説します。
睡眠のメカニズム
みなさんは毎日十分な睡眠が取れていますか?
生物にとって睡眠は必要不可欠で、睡眠欲は生理的欲求の一つです。
睡眠不足は心身にとって大きなストレスとなり、寝付けない、途中で目覚めるという不調が出現する不眠症(ふみんしょう)など、睡眠に関する様々な問題は睡眠障害(すいみんしょうがい)と総称されます。
人間は、暗くなるとメラトニンという脳内物質が分泌されて眠気を感じるようになります。
睡眠には、眠りが浅く脳が起きて夢を見ている状態のレム睡眠と、眠りが深く脳内の活動を休ませている状態のノンレム睡眠という2種類の睡眠パターンが交互に出現することで、身体と脳を休ませています。
出典:シオノギヘルスケア
▲睡眠から最初の90分で最も深い睡眠となり、その後は夢を見ている時間であるレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を約90分周期で繰り返しながら起床する。夢を見ている途中で目覚めることが多いのは、起床前にレム睡眠となっているため。
また、睡眠中に分泌されている大事な脳内物質として「成長ホルモン」があります。
子どもの成長に必要なものと思われがちですが大人になっても分泌されていて、疲労回復や肌の新陳代謝には欠かせないホルモンです。
成長ホルモンの分泌量は入眠後、最初のノンレム睡眠時に最大となり、時間帯では午後10時から午前2時に多く分泌されると言われています。
▲成長ホルモンは加齢とともに低下する。思春期前の値を100%とすると、成長ホルモンの分泌量は思春期後期で多くなり、200%と2倍くらいに増加する。 その後はどんどん少なくなり、30、40歳台では50%、60歳では30%くらいにまで減少する。
睡眠時の寝姿勢は身体を横たえて寝ることが一般的で、そのための部屋を寝室(しんしつ)、寝るために使用する布団や枕、シーツなどをを寝具(しんぐ)と呼び、古来からさまざまな寝具が使用されてきました。
適切な睡眠時の寝姿勢
出典:ビーナスベッド
薄くて硬ーい敷き布団と聞くと、何だか寝にくそうなイメージがありますよね。
逆にふかふかでやわらかいマットレスと聞くと、高級感があって安眠できそうなイメージです。
確かに、硬すぎる敷き布団に一晩寝ると身体が痛くなってしまうこともありますが、柔らか過ぎても人体の中で最も重い臀部(でんぶ:お尻)が下に沈んで腰椎(脊椎の下の方の骨)部分が浮き上がり、不自然な寝姿勢になってしまいます。
身体に負担をかけずに安眠しやすい姿勢とは、以下の図のような姿勢となります。
立っていると、背中と臀部を結んだ線と脊柱部分に40〜60mm程度の「あき」ができますが、このあきを寝た時に気持ちが良いと感じる20〜30mmに保つことが重要です。
出典:EPARK リラク&エステ
▲寝るときの姿勢は、ベッドが硬すぎても軟らかすぎても身体に負担をかけてしまう
すでに使っているベッドの寝心地が悪くて困っている、または身体に合ったマットレスを購入したけれど使っているうちに違和感が出てきたという場合は、「ベッドパッド」を使えば好みに合わせて寝心地を調節することができます。
出典:シーツ.jp
▲ベッドパッドはマットレスの上に敷き、その上からシーツをかける。寝心地の調整以外にもマットレスを汗や汚れから守る効果もある。
ベッドパッドには綿、麻、絹などさまざまな素材のものがあるので、季節に合ったベッドパッドに替えることで寝苦しさの解消も期待できます。
寝心地を改善したくなったら、まずはベッドパッドの購入や買い替えを検討すると良いでしょう。
寝やすいベッドの構造とは?
適切な寝姿勢を保つことができるベッドのマットレスの構造として、3層構造を持つものがあります。
これには下図のように、身体に接する軟らかい部分(ウレタンフォーム、化繊綿など)であるソフト層、姿勢を保つための硬い部分(フェルト、パームロックなど)である支持層、衝撃を吸収する層(ポケットコイルなど)であるクッション層という「軟・硬・軟」という要素が組み込まれているのが一般的です。
出典:フランスベッド
▲マットレスはメーカーによって5層だったり、7層だったりと様々な製品が開発されている
このマットレスの3層構造の呼び方は、ベッドメーカーによって変わることがあります。
ソフト層は表地に薄いわたを入れて重ねた状態でキルティング状に縫ってあることから「キルト層」とも、支持層は硬め柔らかめのクッションを積層して身体を支持してることから「クッション層」とも、クッション層は金属製のスプリングが使われていることから「スプリング層」とも呼ばれます。
ベッドに使用されている材質
ウレタンフォーム
出典:SIEVE
椅子やソファー、クッションの中材としても使われている素材で、ウレタンは「ポリウレタン樹脂」、フォームは「気泡や泡」の意味となり、正式名称は「ポリウレタンフォーム」です。
ポリウレタンフォームはプラスチックの発泡体ということになりますが、気泡の形状ににより連続気泡(れんぞくきほう)と独立気泡(どくりつきほう)に分けられます。
出典:富士ゴム産業株式会社
連続気泡は中の気泡がそれぞれ連続してつながっているため汗や湿気などの水分や空気を通しやすいという特徴があり、マットレスやソファなどの家具に使用されるほか、保水力も高いため洗浄用のスポンジとしても使われています。
長い時間使用するとウレタンのフォームのクッション性が弱まり、元の形状に戻らなくなる(へたる)という難点があります。
連続気泡の構造を持ったウレタンフォームは気泡の密度により硬さをコントロールすることが可能で、気泡の密度の低いものは「軟質ウレタンフォーム」などと呼ばれクッション性が高くなり、気泡の密度の高いものは「硬質ウレタンフォーム」などと呼ばれ身体を支える支持層としての役割を持ちます。
これらの密度の異なるウレタンフォームを積層させることによって、座り心地や寝心地を良くしたり、ウレタンフォームのへたりを少なくしたりするなどの効果を生み出しているのです。
出典:nishikawa
▲寝具メーカー「西川」の敷き布団の構造。密度の異なるウレタンフォームをバランスよく積層することによって、適切な寝姿勢も軟らかな寝心地もキープできる。
出典:富士ゴム産業株式会社
独立気泡はそれぞれの気泡のつながりがないためふわふわとした軟かさは無く一定の強度があることから運搬用の緩衝材として使用されたり、水分や空気を通しにくいという特徴から水にも浮くため、水泳用の補助用具としても使用されています。
出典:ホームプロ
▲住宅の床下に施工されている独立気泡の断熱材。耐熱性が無いため、壁や天井には使用されない。
化繊綿(かせんわた)、綿(めん)・木綿(もめん)
出典:イドカバネット
化繊綿(かせんわた)とは、そのままですが化学繊維を使用した綿のことで、この化学繊維というのは一般的に「ポリエステル綿(わた)」のことを指しています。
ポリエステル綿は、化学繊維である「ポリエステル」をわた状に加工したもので、弾力性が高くて布団の中綿としてもよく使われるものですが、吸湿性や放湿性が悪いので寝具に用いる場合には自然素材である綿(めん)・木綿(もめん)を混ぜて使うのが一般的です。
▲ワタという植物の種子から取れる繊維を「綿・木綿」といい、英語ではコットンという。綿・木綿は保温性と吸湿性が高く、さらに洗濯して日干しすると水分が蒸発してふっくら感と暖かさや吸湿性が回復する。
なお、綿・木綿を使用した寝具は使い古してぺしゃんこになっても打ち直し(※)することができますが、ポリエステル綿は打ち直しができず静電気が起こりやすいなどのデメリットがあります。
しかし化学繊維であることから耐久性が高い、虫害を受けにくい、価格が安いというメリットがあります。
※打ち直しとは
長年使用して硬くなった布団や敷き布団の繊維を機械で解きほぐして、ゴミや塵、カビなどを取り除き弾力を回復させること。
羽毛(ダウン、フェザー、スモールフェザー)
出典:SIEVE
羽毛(うもう)とは、水鳥(すいちょう、みずとり:水辺に生息する鳥の総称)の胸のあたりから採れる毛のことで「ダウン」と呼ばれます。
ダウンは水鳥を寒さから守る肌着のような役割を果たしていて、ふわふわとした形状で空気をたっぷり含み、感触が良く保温性が高いという特性があります。
水鳥の翼部分の羽根は「フェザー」と呼ばれ、ダウンが水鳥にとって肌着の役割を果たしているのに対してフェザーは上着の役割を果たしていて、通気性がよく弾力や復元性があることが特性として挙げられます。
また、フェザーの中でもサイズの小さいもの(6.5cm以下)は「スモールフェザー」と呼ばれ、羽根の芯となる部分が細いため、繊細な柔らかさと高い復元力を兼ね備えています。
これらの羽毛や羽根は、布団やマットレス、ベッドパッドなどの寝具やソファーなどのクッション材として様々な家具やインテリアアイテムに使用されています。
羊毛(ウール)
羊毛(ウール)はベッドパッドにも使用されることが多く、ウレタンフォームやポリエステル綿などの化繊綿と比べると高価ですが、保温性、吸湿性・放湿性、弾力性に優れた理想的な素材です。
よくウールは冬の素材のイメージを持たれがちですがそんなことは無く、吸湿性・放湿性が高いので夏場の使用でも問題ありません。
またウォッシャブル加工がされているウールであれば、洗うことができるのも嬉しいポイント。
しかし動物性の素材になるので、長期間の保管になると虫食いにあう可能性があるので注意が必要です。
パームロック
出典:Walmart
パームロックとは、ヤシ(パーム)の実の非常に頑丈な繊維を圧縮してゴムで固めた(ロックした)もので、身体を支える支持層としてマットレスに、また適度なクッション性を持ったマットとしても使用されています。
特徴として、ヤシの実繊維も固めているゴムもすべて自然素材を使用して作られているため、身体にも環境にもやさしい天然素材であることが挙げられます。
また通気性に優れ、吸湿性・放湿性を持つことから夏は涼しくて蒸れることが無く、保温性にも優れているので冬は暖かいというなんとも万能な素材です。
出典:BED STYLE
▲パームロックは「パームパッド」とも呼ばれ、上図のマットレスのようにスプリングを包むようにして入れられることが多い。ちなみに「パッド」とは「詰め物」の意味。
マットレスのスプリングの種類
出典:みんから
ベッドマットレスのクッション層(スプリング層)は、コイルが使用されているものが一般的です。
コイルとは、針金などひも状の金属を、螺旋(らせん)状や渦巻(うずまき)状に巻いて「ばね(スプリング)状」にしたもののことで「コイルスプリング」とも呼ばれます。
マットレスに使用されるコイルの種類や数量によって、寝心地が大きく変わることは言うまでもありません。
最も一般的に使用されている「ポケットコイル」と「ボンネルコイル」を覚えましょう。
ポケットコイル
出典:ベッドおすすめランキング
ポケットコイルは、コイルスプリングをひとつひとつ不織布の小さな袋に入れてマットレス全体に敷き詰めたコイル構造となっています。
コイルスプリングが1つずつ独立して身体を「点」で支えるので、身体の凹凸にフィットして体圧が一箇所に集中するのを防ぐのが特徴です。
出典:ベッドおすすめランキング
▲ポケットコイルを敷きつめたマットレスを「ポケットコイルマットレス」という。身体を「点」で支えるため、体圧分散性が高いことが特徴。
コイルが独立しているためマットレス全体に振動が伝わりづらく、二人で寝るのにおすすめですが、一方、コイルが独立しているが故に部分的な耐久性は弱いので、マットレスの上で飛び跳ねるなどはNGです。
ボンネルコイル
出典:ベッドおすすめランキング
ボンネルコイルは、スプリング同士を鉄線で連結している構造をしています。
身体を「面」で支えるのでしっかりとした寝心地が特徴で、比較的耐久性が高いことがメリットです。
しかしポケットコイルよりも体圧分散性は低くなるので、人によっては寝ている間に背中や腰などに負担がかかり、起きたときに疲れや痛みを感じることもあります。
また、ボンネルコイルはぎしぎしとしたバネ感が強く感じられ、隣に寝ている人へ振動が伝わりやすいこともデメリットです。
欧米ではボンネルコイルがまだまだ主流で人気があると言われていますが、日本人はポケットコイルの静かな寝心地を好む傾向があります。
▲動いた際の振動が、隣の人へ伝わりやすいのがボンネルコイルのデメリット
ベッドの各種寸法
ベッドの寸法は、マットレスの寸法を基準としています。
マットレスの寸法と種類はマットレスメーカーにより多種多様ですが、安眠するためには肩幅の2〜2.5倍程度が必要ということを覚えておきましょう。
長さ方向では身長+40cm程度あることが望ましいとされています。(身長高い人は市販のマットレスサイズの長さ寸法に限界があるのでなかなか難しいですが・・・)
出典:BED STYLE
▲代表的なマットレスサイズの種類。幅の寸法は80〜280cm前後と多様だが、長さ寸法は200cm前後のものが一般的。
マットレスのサイズには上図のようにシングル、ダブル、クイーンなど様々な種類がありますが、国や地域、メーカーによって名称もサイズも異なるので、「シングルサイズ=幅100cm」という訳ではありません。
アメリカ圏、イギリス圏では長さの単位にセンチメートルではなくインチを使用しているので、当然マットレスの規格寸法も日本とは異なってきます。
出典:Sleep Junkey
▲アメリカの寝具メーカーのマットレスサイズ一覧表。サイズはインチ表記となっていて、1インチは約2.54cm。名称、サイズ、バリエーション共に日本とは大きく異なっている。
またマットレスを置くベッドの寸法は、マットレスの寸法よりも幅、長さともに数cm以上大きいので、寝室の寸法計画を進める際にはマットレスのサイズでは無く「ベッドの寸法」で計画するようにします。
出典:AVOCADO
▲ベッドはマットレスがずれて落ちてしまわないように、少し大きな寸法になっているのが一般的。
ベッドに関する規格寸法
出典:ベルメゾンネット
ベッドの規格寸法については「住宅用普通ベッド」という名称でJIS(日本産業規格)によって定められていて、シングル、ダブルという名称は無く、14号(140cm×195cm)、15号(152cm×195cm)というように「号」が用いられています。
また「木製ベビーベッド」という項目では、格子の間隔85mm以内、マットレスの標準寸法は700mm×1200mm、使用する木材、塗料、接着剤などはホルムアルデヒドの放散量の等級がF☆☆☆☆とすること、という規定が。
「二段ベッド」の項目では上部のベッドの床板の高さは1200mm以下とすること、などが定められています。
▼JIS(日本産業規格)についてはこちらから▼
▼F☆☆☆☆って何なん?てからはこちらから▼
ナンタルカのまとめ
■睡眠のメカニズム
人は暗くなると(①)という脳内物質が分泌され眠気を感じるようになる。睡眠には身体を休ませて脳は夢を見ている浅い睡眠である(②)と脳の活動を休ませる深い睡眠である(③)という2種類の睡眠パターンが交互に出現することで身体と脳を休ませている。
■適切な睡眠時の寝姿勢
人が正しい姿勢で立っていると、背中と臀部を結んだ線と脊柱部分に(①)mm程度のあきができるが、このあきを(②)mm程度とするのが身体に負担をかけない適切な寝姿勢である。
■寝やすいベッドの構造とは
(1)適切な寝姿勢を保つことができるマットレスの構造として、ソフト層、支持層、クッション層などの役割が分けられた(①)を持つものが一般的である。寝具に使用される材質として、プラスチックの発泡体である(②)や、代表的な化繊綿である(③)などがある。また寝具で多用される羽毛とは(④)のことで、羽根は(⑤)、(⑤)の中でサイズの小さいものを(⑥)と呼ぶ。
(2)マットレスのクッション層には(①)が使用されているものが一般的である。(①)をひとつひとつ不織布の小さな袋に入れてマットレス全体に敷き詰めて身体を点で支えるコイル構造となっている(②)や、スプリング同士を鉄線で連結して身体を面で支えるコイル構造となっている(③)などが一般的である。
■ベッドの各種寸法
安眠するために必要なマットレスの幅は肩幅の(①)倍程度が必要である。マットレスを置くベッドの寸法はマットレスの寸法よりも幅、長さともに数cm大きいので、寝室の寸法計画を進める際にはマットレスのサイズでは無くベッドの寸法で計画する必要がある。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
▼次回、浴室設備の計画はこちらから▼