こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「庭のエレメントについてちょっと詳しくなりたい。」
- 「手水鉢、蹲踞、鹿威し、、、読めない。」
という皆様に向けて、さまざまな庭のエレメントについて画像で解説します。
庭の形式
庭(にわ)とは、住宅などの建築物の敷地内にある家屋の周りの空き地のことです。
木や草花を植えたり、石や池などを配したり、見て楽しむ空間として利用される一方、都内や住宅地などでは物置などを置いて収納スペースとして活用されるケースも多いです。
▲庭が広ければ木を植えたり、花壇やカーポートを設置することができる。
また建築物などで周囲を囲まれた屋根のない庭のことを中庭(なかにわ)といい、英語では「court(コート)」 または「courtyard(コートヤード)」と呼ばれます。
出典:Pavers and Concrete Construction
▲中庭は建物に囲まれているため、外部からの視線を気にすることなく利用できる。
さらに、中庭を小さくしたような小さな和風の中庭のことを「坪庭(つぼにわ)」といい、近年では和風でなくても1坪(畳2枚分くらい)ほどの小さな中庭のことをこのように呼ぶこともあります。
出典:スマイルログ
▲明治42年に建築された京都の伝統的な町屋『無名舎』の坪庭
そして本格的で規模の大きな庭のことは「庭園(ていえん)」と呼び、大規模な中庭などもこのように呼ばれることが多いです。
庭園には見て歩いて愉しむために、樹木を植えたり、池・噴水・花壇などを作ったりするなど人工的に整備が行われています。
代表的な庭園には以下のようなものがあります。
日本式庭園:樹木、石、池などで自然の情景を人工的に再現した庭園。
フランス式庭園:幾何学的に樹木や池を配置した庭園。
イギリス式庭園:日本式庭園と同様に、自然の景観美を再現した庭園。
日本式庭園
日本式庭園とは日本の伝統的な庭園であり、「日本庭園(にほんていえん)」または洋風庭園と区別するために「和風庭園(わふうていえん)」とも呼ばれます。
日本式庭園は池を中心として構成され、土地の起伏を生かして人工的な山である築山(つきやま)などが作られます。
出典:探検庭園
▲日本式庭園において、流れや音で繊細さや大胆さを表現できる「水」は重要な構成要素の一つである。左手には大きな築山が見える。『智積院(ちしゃくいん)』(京都市東山区)
水と共に「石」も日本式庭園においては重要な構成要素の一つであり、庭に配される石のことを庭石(にわいし)といいます。
庭石の中でも庭内の主要な場所、あるいは最も重量感を必要とする場所に設置される、表現力豊かな観賞用の庭石のことを特に景石(けいせき)と呼びます。
出典:植彌
▲景石は天然の岩石を用いて庭の景観を考えながら配置され、山・滝・流れなどを模して自然風景を庭に再現している。『南禅寺(なんぜんじ)』(京都市左京区)
このように、日本式庭園では水と石、草木を配して四季折々に鑑賞できる景色を造形するのが一般的です。
景色を造形する際に、山や川といった自然の景観を庭園内の限られた空間に小型化して移したり、富士山や琵琶湖、厳島や天龍寺など日本各地の名勝の風景を庭園に移して表現することを縮景(しゅっけい・しゅくけい)といいます。
出典:Wikimedia commons
▲右奥の築山は富士山を、手前の湖は琵琶湖を縮景で表現したもの。『水前寺成趣園(すいぜんじじょうじゅえん)』(熊本県熊本市)
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フランス式庭園
出典:Docca
▲シンメトリーになっている『ヴェルサイユ宮殿』の前に広がるフランス式庭園。
フランス式庭園とは西洋風の庭園の様式のひとつで、左右対称(シンメトリー)の庭園配置と、幾何学的な池、植栽などのデザインが特徴です。
代表的な庭園に、フランス国王ルイ14世(1638−1715)の命により作庭されたヴェルサイユ宮殿の庭園があります。
▲ヴェルサイユ宮殿の前に広がるオランジュリー庭園。円形の噴水を中心に左右対称の配置と幾何学的なデザインで構成されている。
▲1789年のヴェルサイユ宮殿と庭園の計画図。右下にヴェルサイユ宮殿があり、左側に左右対称の庭園が広がっているのが分かる。
▲フランスの造園家アンドレ・ル・ノートルがてがけたヴォー=ル=ヴィコント城のフランス式庭園
▼ヴェルサイユ宮殿はこちらで紹介しています▼
イギリス式庭園
▲1000ヘクタールを超える広大なイギリス式庭園『ストウヘッド庭園』(イングランド)
イギリス式庭園とは西洋風の庭園の様式の一つで、自然の景観美を追求した、広大な池となだらかな起伏から構成される自然風景式庭園(landscape garden)のことです。
イギリス式庭園は17世紀から18世紀のイギリスで発達した庭園様式です。
フランス式庭園が左右対称の庭園配置や幾何学的なデザインを特徴とするのに対して、イギリス式庭園ではそれらの要素を排除して、自然のままの池や植栽、いわばイギリスの自然の様子や農村地帯の景観をそのまま庭園としているのが特徴といえます。
出典:World Atlas
▲広大な池と自然のままの木々が美しいイギリス式庭園『Prior Park Landscape Gardens』
イギリスで発達したこの「風景式庭園」は、その後フランスやドイツなどヨーロッパで流行すると、「イングリッシュ・ガーデン」と呼ばれました。
日本でもイングリッシュ・ガーデンは人気がありますが、本場のイギリス式庭園と比べると、格段に規模が小さく池が無い場合も多いです。
出典:@Press
▲数多くの賞を受賞したイギリス出身のガーデンデザイナー、マーク・チャップマン氏のデザインによる美しい庭園『白馬コルチナ・イングリッシュガーデン』(長野県)
庭園の代表的なエレメント
庭園の池、石、草木や築山などは、庭園を構成する重要な要素(エレメント)のひとつです。
和風庭園の景石や石灯籠、洋風庭園の噴水や彫刻など、庭園の景観を構成する上でアクセサリー的に用いられるものを添景物(てんけいぶつ)といいます。
和風庭園の代表的なエレメント
露地(ろじ)
出典:enaga
▲露地(ろじ)とは「茶庭(ちゃてい)」とも呼ばれる茶室に付随する庭園のこと。手前には蹲踞(つくばい)、右には飛び石が見える。
露地(ろじ)とは茶室に付随する庭園のことです。
露路には待ち合わせの場所として使用する待合(まちあい)や、露地を渡り歩く足場とするために飛び飛びに配置された飛び石(とびいし)などが通路に配置されます。
▲待合(まちあい)は茶会で客が待ち合わせ、身支度を整えるための施設。「寄付(よりつき)・袴付(はかまつけ)・一宿(ひとやどり)・腰掛待合(こしかけまちあい)」などとも呼ばれた。
また露路に置かれる代表的な添景物として、茶室に入る前に手を清めるための水を蓄える器である手水鉢(ちょうずばち)や、その周りにいくつかの石(役石・やくいし)を置いて趣を加えた蹲・蹲踞(つくばい)などがあります。
出典:スマイルフェイス
▲蹲(つくばい)とは、手水鉢で手を洗うとき「つくばう(しゃがむ)」ことからその名がある。もともと茶道の習わしで、客人が這いつくばるように身を低くして手を清めたのが始まりとされる。『龍安寺:知足の蹲踞』
また手水鉢に水を導く樋(とい)を筧(かけい・かけひ)といい、一般的に竹がよく用いられます。
▲本来は亭主が手水鉢に手作業で水を満たすものであり、本格的な茶室の庭園などでは筧を使用しないことが多い。
和風庭園に見られる特徴的な添景物に、ししおどし(鹿威し)があります。
ししおどしとは、もともとは田畑を荒らす鳥獣を威嚇し追い払うために設けられた農具だったのですが、のちにその音色を風流として楽しむようになり、日本式庭園の装飾として用いられるようになりました。
▲竹筒に水が満杯になるとその重みで竹筒が頭を下げ、水がこぼれて空になり軽くなる。すると軽くなった竹筒が元に戻る際に支持台(石など)を勢いよく叩いて音響が生じる。
露路の添景物には、ほかにも便所である雪隠(せっちん)、暗い時に明かりを灯すための石灯籠(いしどうろう)などがあります。
出典:造形礼讃
▲灯りの火が消えないように籠(かご)をした石灯籠。光源には油やロウソクが用いられた。
垣根・塀
和風住宅の垣根や塀は、庭との調和を図りながら設置されます。
垣根(かきね)とは、敷地や庭などの区画として設けられる囲いのことで、竹を編んだり組んだりした竹垣(たけがき)や、木を植えた生垣(いけがき)など、多様な種類があります。
▲京都・法金剛院にあるウバメガシの生垣。建仁寺垣、金閣寺垣、竜安寺垣など寺によって固有の垣根の名称が用いられたものや、大津垣、沼津垣など地名が用いられた垣根もある。
建仁寺垣(けんにんじがき)
京都市東山区にある臨済宗の寺院である『建仁寺』に代表される、割竹を隙間無く立てた垣根のことで、片面と両面のものがあります。
出典:長岡銘竹株式会社
▲京都・建仁寺の竹垣として有名な『建仁寺垣』。半分に割った竹を隙間なく敷き詰めて縄で留めている。古くなると竹の色が緑から茶に変化し、新しい竹に交換される。
四つ目垣(よつめがき)
竹などを四ツ目の格子状に組んで縄で縛って固定した垣根のことです。
▲竹を麻紐などで縦横に結んで固定しただけのシンプルな四つ目垣。
桂垣(かつらがき)
京都市西京区にある皇室関連施設『桂離宮』の門の両側にある垣根を名前の由来とする垣根のことで、竹枝を丸太や竹、割竹などで組み、縄で束ねています。
出典:長岡銘竹株式会社
▲桂垣は桂離宮の門の両側にある竹垣が名前の由来で「離宮垣(りきゅうがき)」とも呼ばれる。横向きに細かく並べられた竹枝と、30cmほどの間隔で1本ずつ竹が上に突き出しているのが特徴。
築地(ついじ)
泥土をつき固めて作った土塀の上に瓦屋根を付けた塀のことです。
古来より公家の邸宅や寺院などに用いられてきた塀で、規模の大きな築地は「大垣(おおがき)」とも呼ばれます。
▲横線のように見えるのは定規筋(じょうぎすじ)という寺院の格式の高さを表すもので、5本線が最高格式となる。
西洋庭園の代表的なエレメント
パティオ
▲スペインのアンダルシア地方に見られるパティオ
パティオ(スペイン語: patio)は、食事や娯楽を楽しむためのスペイン式の屋外庭園のことで、スペイン語で「中庭」や「裏庭」を意味します。
住居に隣接して設けられ、タイルや石を敷くのが一般的です。
広くて大きなパティオでは、池や噴水などが見られることもあります。
出典:トリドリ/アルハンブラ宮殿
▲スペインを代表する世界遺産『アルハンブラ宮殿』のパティオ
トレリス
トレリス(格子垣・こうしがき)は、西洋式庭園で使用される格子状のフェンスのことで、主にツルやツタなどを意図的に絡ませて、植物の造形美を楽しみます。
歴史的には苗床などで植物の成長において誘引に使う単なるフェンスだったものが、鑑賞して楽しむ庭園のエレメントへと派生しました。
出典:Gardenary
▲トレリスのデザインはさまざま。トンネル状のトレリス。
トピアリー
▲タイのアユタヤにあるゾウの形をしたトピアリー
トピアリー(装飾的刈り込み)とは、樹木を装飾的に刈り込んで動物や人工物などを形作った西洋庭園における造形物のことです。
庭園技法としてはイギリス式庭園でよく見られ、鳥や動物、立体的な幾何学模様など、その種類はさまざまです。
▲イギリス式庭園の幾何学的なデザインに刈り込まれたトピアリー
ガゼボ
▲シンガポールの植物園の庭園にあるガゼボ
ガゼボ(gazebo)とは、イギリス式庭園などによく見られる屋根付きの休憩所のことです。
一般的に西洋庭園は広大な面積があるため、雨宿りや日陰で休む場を必要としてガゼボが利用されていましたが、現代では庭園の景観を構成する装飾物としても利用されています。
ガゼボは屋根と柱があるだけで外の空間に開けている造りになっていて、八角形のものが多くなっています。
出典:FLICKR
▲アメリカ・チャールストンにある庭園のガゼボ(1907年)
ラティス
ラティスとは木製の格子状に組まれたフェンスの事で、ウッドデッキなどに取付けられる事が多いです。
もともとは洋風建築で使用されていましたが、現代では日本でも目隠しのできるフェンスとして広く使用されています。
出典:WILL
▲敷地の狭い日本ではベランダ、バルコニーなどの目隠しとしてラティスがよく利用される。ラティスにはプランターやバスケットかけてガーデニングを楽しむこともできる。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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