こんにちは、しけたむです。
この記事では
- 「環境問題について分かってきたけど、3Rって何なん?」
- 「CASBEE?低炭素建築物認定制度?覚えられる訳ないわ。」
という皆様に向けて、
環境問題と住宅に関わる取り組みについて画像で解説します。
▼前回記事、環境問題と住宅の前編はこちらから▼
環境に配慮した取り組み
深刻化した環境問題を解決するために、日本でも様々な取り組みが推進されています。
環境に優しい提案が出来るよう、インテリアコーディネーターも住宅・インテリアに関わる次のような取り組みや製品について理解を深めておきましょう。
3R(スリーアール)
出典:Berkesenian
3R(スリーアール、さんアール)とは、以下の3つの語の頭文字をとった言葉で「廃棄物削減のためのキーワード」のことです。
- Reduce(リデュース):減らす
- Reuse(リユース):繰り返し使う
- Recycle(リサイクル):再資源化する
まず第1に「リデュース(ごみの発生抑制)」、第2に「リユース(再使用)」、 最後に「リサイクル(ごみの再生利用)」という優先順位で廃棄物の削減に努めるのがよいという考え方を示しています。
この3Rの優先順位は、循環型社会形成推進基本法(※)において導入されました。
※循環型社会形成推進基本法(じゅんかんがたしゃかいけいせいすいしんきほんほう)とは
2000年(平成12年)に導入された、日本におけるリサイクル社会(循環型社会)の形成を推進する基本的な枠組みとなる法律。
この基本法が整備されたことにより、廃棄物・リサイクル政策の基盤が確立された。
また、3Rに「Refuse(リフューズ)」を加えた「4R」、「Repair(リペア)」を加えた「5R」という考え方もあります。
- Refuse(リフューズ):製造・流通地点でごみの発生源を断つ
- Repair(リペア):壊れても直せるものは修理して使う
さらに、以下から2つを加えた「7R」という考え方まで登場しています。
(どの「R」を加えて7Rにするかは、考え方によってまちまちです。)
- Remix(リミックス):新たな創造のために既にある資源を再編集する
- Refine(リファイン):廃棄するときには分別する
- Rethink(リシンク):自分に本当に必要なものかどうか再度考える
- Rental(レンタル):個人として所有せずに借りて済ます
- Return(リターン):携帯電話など使用後は購入先に戻す
- Rebuy(リバイ):リサイクル品やリユース品を積極的に購入または利用する
廃棄物の削減では無く、「廃棄物の処理」に関する優先順位については、
- 発生抑制(リデュース)
- 再使用(リユース)
- 再生利用(マテリアルリサイクル)
- 熱回収(サーマルリサイクル)(※)
- 適正処分
という順で行うように循環型社会形成推進基本法で定められています。
※熱回収(サーマルリサイクル)とは
廃棄物を単に焼却処理せずに、焼却の際に発生する「熱エネルギー」を回収・利用すること。
日本などで用いられる概念で「エネルギー回収」とも呼ばれ、発電、周辺施設の暖房、温水供給などに利用されている。
出典:大阪広域環境施設組合
▲サーマルリサイクルの仕組み。回収されたごみを焼却し、蒸気タービンを回して発電する。蒸気は温水プールの温めに使用され、電気は事業者へ売電されることもある。
CASBEE(キャスビー)
CASBEE(キャスビー)とは、建築物を「環境性能」により評価して格付けする評価システムのことです。
日本語にすると「建築環境総合性能評価システム」となり、この英語表記である「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency」の頭文字からCASBEEと名付けられました。
建築物の省エネルギー性能、環境負荷の少ない建築材料を使用しているかというチェック項目はもちろん、室内の快適性や周囲の景観への配慮なども含め、建物の品質を総合的に評価するシステムとなっています。
CASBEEは、2001年4月に国土交通省住宅局の支援のもと産官学連携(※)での共同プロジェクトとして開発され、以降継続的に改良を重ねて現在に至ります。
※産官学連携(さんかんがくれんけい)とは
新技術の研究開発や新事業の創出を図ることを目的として、民間企業の「産」、政府・地方公共団体の「官」、大学などの教育機関・研究機関の「学」が連携、協力すること。
「産学官連携」ともいう。
地球環境や周辺環境にいかに配慮しているか、ランニングコストに無駄がないか、居住者にとって快適かなどの性能を客観的に評価・表示するためにCASBEEは使われていて、総合評価は「Sランク☆☆☆☆☆(素晴らしい)」、続いて「Aランク☆☆☆☆(大変良い)」、「B+ランク☆☆☆(良い)」、「B-ランク☆☆(やや劣る)」、「Cランク☆(劣る)」の5段階での格付けとなっています。
出典:新電元工業株式会社
▲「Sランク」の評価認証
「Aランク」以上の建築物が、持続可能性に配慮して設計された建築である「サステナブル建築」として優良とみなされ、「Sランク」以上となるにはサステナビリティを特に意識し、環境工学的な工夫を凝らした設計を行うことが必要です。
CASBEE により「Sランク」と評価された建築物には、以下のようなものがあります。
- 日本国際博覧会 長久手日本館 (愛・地球博パビリオン)
- 日本国際博覧会 瀬戸日本館 (愛・地球博パビリオン)
- ゲートシティ大崎 (東京都品川区)
- みなとみらい21地区・40街区プロジェクト
- 竹中工務店東京本店
- リバー平野ガーデンズ(大阪市平野区)
- 銀座三井ビルディング
- ららぽーと柏の葉 (千葉県柏市)
- 日本橋三井タワー
- 広島銀行新本店ビル
- 三菱倉庫本店(東京都中央区)
出典:BUILT
▲CASBEEで「Sランク」を取得した『竹中工務店東京本店』(2004)
低炭素建築物認定制度
出典:CLATCH
低炭素建築物認定制度(ていたんそけんちくぶつにんていせいど)とは、市街化区域内(※)において、低炭素化に関する基準に適合する『低炭素住宅』を認定する制度のことです。
※市街化区域(しがいかくいき)とは
山林や田畑のある区域では無く、すでに市街地を形成している区域と、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のこと。
自治体による道路、公園、下水道などの都市施設の整備も重点的に実施される。
低炭素住宅とは「二酸化炭素の排出を抑えるための対策が取られた環境にやさしい住宅」のことです。
市街化区域では社会経済活動などに伴って多くの二酸化炭素が排出されていて、低炭素化に向けた取り組みをいち早く進めることが重要な課題となっています。
そのため、都市における低炭素化を促進し、持続可能な社会の実現を目指すことを目的とした「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」(※)が2012年12月に施行されました。
※都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)とは
東日本大震災をきっかけとするエネルギー需給の変化や、近年のエネルギー利用、地球温暖化問題に関する意識の高まりを受けて、特に多くの二酸化炭素が排出される地域である「都市」における低炭素化を促進するために制定された法律のこと。
この「エコまち法」に基づき新たにスタートした制度が「低炭素建築物認定制度」です。
所管行政庁(都道府県、市、または区)から低炭素住宅と認定されることで、所得税が軽減されるなどの優遇措置が受けられるというメリットがあります。
ロングライフ製品(ロングライフデザイン)
出典:グッドデザイン
環境貢献の取り組みとして、耐久性に優れ、メンテナンスやリペアー(修繕)をすることにより長期間使用できるようにした製品をロングライフ製品といいます。
高い品質基準で製造することにより長期間の使用を可能にし、消耗品や修理の必要性が想定される箇所には部品や部材交換で対応できるようにしておくことで製品の廃棄量を減少させ、温室効果ガス発生の抑制が期待できます。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞
グッドデザイン賞については聞いたことがある人も多いかと思いますが、その中に「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」と呼ばれる賞があるのはあまり知られていません。
この賞では「10年以上継続的に提供され、広く支持されている製品やサービスで、今後も継続して提供されると想定できるもの」を対象に、長年人々に愛されている優れたデザインを表彰しています。
実は1980年からある賞なのですが、近年人々のロングライフデザインという価値観の高まりとともに、改めて注目されています。
また「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」は一般のユーザーから推薦を募集しているのが特徴で、人々の日々の暮らしの中での意見がより反映される仕組みとなっています。
出典:公募ガイド
▲ロンライフデザインはこれまで長く愛されてきて、これからも時代を超えたスタンダードとして在り続けるデザインが表彰される。そのため誰もが見たことがあるような製品ばかり。
ロングライフデザインの10カ条
出典:三井化学
▲ナガオカ ケンメイ(本名:長岡 賢明〈ながおかまさあき〉、1965年2月15日 – )は、北海道出身のロングライフデザイン活動家。D&DEPARTMENT PROJECT代表取締役会長で京都造形芸術大学教授と武蔵野美術大学客員教授も務める。大のプラスチック製品好き。
ロングライフデザイン活動家のナガオカケンメイは、ロングライフデザインをコンセプトとした店舗「D&DEPARTMENT(ディアンドデパートメント)」(※)を主催しています。
※D&DEPARTMENT(ディアンドデパートメント)とは
その土地に暮らす人々と共に作る、ロングライフをテーマとした家具や雑貨を販売する店舗。
カフェやギャラリーを併設し、勉強会やワークショップの企画開催、地域の観光情報の発信などを通して、その土地の個性や「らしさ」を見直す活動を行っている。
北海道、富山、埼玉、東京、京都、三重、鹿児島、沖縄、韓国、中国に店舗あり。(21年12月現在)
出典:HOUSTO
▲D&DEPARTMENTで取扱うアイテムは、全店共通で扱う定番の「日本と世界のロングライフデザイン商品」と、それぞれの地域が独自に発掘する「地域のロングライフデザイン商品」で構成される。地方へは全国視点の刺激と情報を与え、逆に地方からは発掘された珍しい商品を全国へ発信することで、新たな交流を生み出そうとしている。
ナガオカケンメイ は D&DEPARTMENT のプロジェクトの中で、
「ロングライフデザインは形状や意匠だけのことだけではなく、モノを作る・売るなどのデザインを取り巻く環境が揃ってこそ生まれるものだ」
という考えを持ち、「ロングライフデザインの10ヶ条」を掲げています。
[ ロングライフデザインの10か条 ]
- 修理 …… 修理をして使い続けられる体制や方法があること。
- 価格 …… 適正な価格であること。
- 販売 …… 売り場に作り手の思いを伝える強い意志と誠意があること。
- 作る …… 作り手に「ものづくり」への愛があること。
- 機能 …… 使いやすいこと。機能的であること。
- 安全 …… 危険な要素がないこと。安全であること。
- 計画生産 …… 計画された生産数であること。予測が出来ていること。
- 使い手 …… トレンドや最新機能に依存しないこと。
- 環境 …… いつの時代の環境にも配慮があること。
- デザイン …… 美しいデザインであること。
建築物省エネ法
建築物省エネ法とは、正式名称を「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」といい、建築物の省エネルギー性能の向上を図るために2015年(平成27年)7月に交付され、2017年(平成29年)4月から義務付けられた法律です。
建築主は、一定規模以上の建築物の新築・増改築をしようとする場合、その用途や規模などに応じて省エネ基準に適合しているかどうかを、所轄の行政庁(ぎょうせいちょう:建築確認や違反建築物に対する是正命令などを行う行政機関)に判定(適合性判定)してもらう、もしくは届出が必要となります。
規制措置の対象となる建築物
建築物省エネ法の規制措置の対象となるのは、一定規模以上の建築物の新築・増改築が対象となります。
建築物省エネ法の評価基準とは
建築物省エネ法の評価には下記の2つの基準が用いられます。
- 建築物の窓や外壁などの外皮性能を評価する基準(断熱性や気密性が高いほど評価が高い)
- 設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準(設備機器はエネルギー消費量が低いもの、太陽光発電などはエネルギー削減量が高いほど評価が高い)
■住宅の外皮性能と一次エネルギー消費量のイメージ
出典:DAIKIN
■非住宅の外皮性能と一次エネルギー消費量のイメージ
出典:DAIKIN
▲ペリメーターゾーンとは、建物(オフィス)の窓際や壁際などの日光や外気に温度が影響されやすいエリアのこと。日射や外気温により空調の付加が大きく、温度が変わりやすい。
建設リサイクル法
出典:BUILD
建設リサイクル法は、正式名を「建設工事に係る資材の再資源化などに関する法律」といい、建設工事によって廃棄される産業廃棄物(コンクリート、アスファルト、木材など)の適正な分別や再資源化による削減を促進するために2000年(平成12年)5月に制定されました。
建設リサイクル法では、特定建設資材(コンクリート、アスファルト、木材など)を用いた一定規模以上の建設工事を行う場合、「工事の受注者など」に対して分別解体と再資源化を行うことを義務付けました。
対象となる建設工事の基準は以下のように定められています。
- 建築物の解体工事は「床面積の合計が80㎡以上」
- 建築物の新築または増築の工事は「床面積の合計が500㎡以上」
- 建築物の修繕・模様替え等の工事は「請負代金が1億円以上」
- 建築物以外の工作物の解体または新築工事は「請負代金が500万円以上」
出典:TEMS
▲建設リサイクル法については解体工事が行われる場合は少ない面積でも対象になり、リフォーム工事でも金額によっては対象となることを覚えておこう。
対象となる建設工事を実施する際は、工事着手7日前までに工事発注者から都道府県知事に対して分別解体などの計画を届け出ること、対象建設工事の請負契約をする際は解体工事や再資源化に必要な費用を明記すること、など手続きに関することが細かく義務付けられるようになりました。
建設リサイクル法が制定された背景と不法投棄の現状
建設リサイクル法の制定前までは不法投棄の件数も量も上昇傾向で社会問題となっており、産業廃棄物の適正な分別と廃棄、再資源化による減量を促進が急務とされていました。
法律が制定されると適切な処理方法が確立され、不法投棄の罰則化や廃棄業者や自治体の管理の強化により不法投棄の件数も量も減少につながりました。
▲平成10年にピークだった国内の不法投棄件数は建設リサイクル法の制定により減少へとつながった。
ピーク時と比べれば不法投棄の件数も量も減ったものの、適正な処理やリサイクルがされずに不法投棄される廃棄物は未だ0にはならず、さらに不法投棄件数の7割以上を建設系廃棄物が占めているのが現状です。
ナンタルカのまとめ
■環境に配慮した取り組み
(1)「循環型社会形成推進基本法」で導入された、循環型社会実現のためのキーワードである(①)は、ゴミの発生を減らす(②)、ゴミの再使用を意味する(③)、資源としてゴミを再利用する(④)という3つの行動のことである。
(2)建築物を環境性能により評価し格付けするシステムである(①)は、国土交通省の支援の下、産官学連携による共同プロジェクトとして行われている。「Aランク」以上の建築物が、持続可能性に配慮して設計された建築である(②)として優良とみなされ、「Sランク」以上となるにはサステナビリティを特に意識し、環境工学的な工夫を凝らした設計を行うことが必要となる。
(3)市街化区域において、低炭素化に関する基準に適合する(①)を認定する制度のことを(②)という。(②)は都市における低炭素化を促進し、持続可能な社会の実現を目指すことを目的とした「都市の低炭素化の促進に関する法律」、通称(③)に基づいてスタートした制度である。
(4)耐久性に優れ、修繕などにより長期間使用できる製品を(①)という。高い品質基準で製造することにより長期間の使用を可能にし、消耗品や修理の必要性が想定される箇所には部品や部材交換で対応できるようにしておくことで製品の廃棄量を減少させ、温室効果ガス発生の抑制が期待される。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
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