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ゴシック様式の特徴や代表的建築、家具や装飾を画像で解説【中世の様式④】

ミラノ ドゥオモ

 

こんにちは、しけたむです!

この記事では

  • 「ゴシック系のインテリアやファッションに興味がある。」
  • 「シンプルに教会の荘厳な雰囲気が大好きです。」

という皆様へ向けて、

圧倒的な支配力を持ったキリスト教、その権威を象徴するかのようなゴシック様式について画像で解説します。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
ゴシックの語源は「野蛮なゴート人」という意味で、もともと古典建築を重じていたイタリア人たちが北フランスで生まれた新しい建築様式に対して、ディスりっぽい意味を込めて使った言葉なんですにゃあ〜

 

 

代表的なゴシック建築とその特徴

ミラノ ドゥオモ出典:Milano pocket

▲ミラノのドゥオーモは世界最大級のゴシック建築で全長158m、幅92m、高さ108mの威容を誇る。5世紀もの歳月をかけて多くの芸術家の手によって完成された。

 

12世紀後半、北フランスを中心に起こり、13−14世期に最も栄えた西ヨーロッパの建築・装飾様式をゴシック様式といいます。

 

この時代はキリスト教会が圧倒的な支配力を持っていた為、教会建築はその権威を象徴するように天に向かって高く伸び、家具や室内装飾もその威厳を表すかのように物々しい彫刻を施したものが多かったのです。

ゴシック 教会出典:Wikioo

▲17世期に描かれたゴシック様式で建てられた教会のインテリア想像図『Interior of a Gothic Church』(1610)

 

ナンタルカ
ナンタルカ
ゴシック建築の特徴を次の章で詳しく紹介する前に、まずは代表的なゴシック建築を見て、どんな雰囲気の建築なのかを知ってほしいですにゃ!

 

代表的なゴシック建築

 

ゴシック様式を代表する建築としては、パリのノートルダム大聖堂シャルトル大聖堂、イタリアのミラノ大聖堂(ドゥオモ)、ドイツのケルン大聖堂が有名です。

 

ノートルダム大聖堂

ノートルダム大聖堂出典:Villes

▲全長128m、幅48m、高さ91m、内部の天井高32.5mと、それまでにない壮大なスケールの大聖堂

 

パリにあるノートルダム大聖堂は「ノートルダム寺院」とも呼ばれ、ゴシック建築を代表するカトリック教会の大聖堂です。

1991年に『パリのセーヌ河岸』という名称で周辺の文化遺産とともにユネスコの世界遺産に登録されています。

ノートルダム 大聖堂出典:Wikimedia Commons 

▲全体の色合いから、白い貴婦人」とも称されているノートルダム大聖堂のファサード(正面)

 

ノートルダム大聖堂は1163年のフランス国王ルイ7世の時代に着工し、1250年に外観など主要部分が完成、1272年に竣工しました。

 

ノートルダム大聖堂の建設前は、ちょうどゴシック期に差し掛かろうとしていた時期でしたが、世はまだまだロマネスク様式が主流

そのため着工当初はロマネスク様式の設計デザインで進められた工事でしたが、建築途中でゴシック様式が主流となってくると、ファサードの一部などはロマネスク様式からゴシック様式へ無理やり設計変更されたようで、現在もその痕跡が残されています。

Cathédrale Notre-Dame de Paris出典:maidatezic.com

▲入り口から主祭壇に向かう中央通路(身廊)は、高さ32.5メートルという壮大なスケール

 

ノートルダム大聖堂

出典:Jean-claude Lafarge

▲ゴシック建築は彫刻やステンドグラスを駆使して、聖書や聖人伝のエピソードを表現している

 

「ノートルダム」という言葉はフランス語で「我らが貴婦人」、すなわち聖母マリア」を指す言葉なので、単純に「ノートルダム」という言葉を冠した教会は、実は世界中にいくつもあるんです。

代表的なゴシック建築のひとつであるフランス・シャルトルにある『シャルトル大聖堂』(後述)の本来の名称も『ノートルダム大聖堂』なのですが、パリのノートルダム大聖堂と区別するためにこのように呼び分けられています。

 

またパリのノートルダム大聖堂は、記憶にも新しい2019年4月15日夜(現地時間)に大規模火災が発生し、尖塔などが焼失してしまいました。

2024年の再公開を目指して、再建工事中です。

ノートルダム大聖堂 火事出典:Wired

▲フランスメディアの発表では、改修工事による火災の可能性があると報じられている。保管されていた文化財・美術品の一部は、消防士により運び出されるなどして焼失を免れた。

 

シャルトル大聖堂

シャルトル大聖堂出典:Smartbox Group

 

シャルトル大聖堂は、フランスのシャルトルにある「最も美しいゴシック建築のひとつ」とも言われるカトリック教会の大聖堂です。

このシャルトル大聖堂という呼び方は、あくまでもシャルトルという街にある大聖堂という意味で、正式名称は『ノートルダム大聖堂』になります。

 

しかし同名の教会がパリにもすでに存在しているため、フランスでノートルダム大聖堂と言えば、パリにある「ノートルダム大聖堂」を指しシャルトルのノートルダム大聖堂は「シャルトル大聖堂と区別して呼ばれています。

Cathédrale Notre- Dame de Chartres出典:Chateau de la Barre

▲36mもの高さを誇るシャルトル大聖堂の身廊には荘厳な円柱群が立ち並ぶ

 

シャルトル大聖堂 アプス 祭壇出典:VIA LUCIS

▲シャルトル大聖堂のアピス。アピスとは半円形や多角形に窪んだ部分のことで祭壇などが置かれる。

 

シャルトルという場所は古い記録によると4世紀頃にはすでにキリスト教の重要な中心地であり、最も古いシャルトル大聖堂の存在記録は8世紀にまで遡(さかのぼ)ります。

 

ロマネスク様式で建てられていた当時のシャルトル大聖堂は11世紀に火災により西側ファサードの一部を残し焼失してしまいますが、当時のイングランド、フランス、デンマークの王や貴族による資金提供により、12世紀にロマネスク様式がまだ残る初期ゴシック様式で再建され、現在に至ります。

シャルトル大聖堂 ファサード 西出典:Wikimedia Commons

▲シャルトル大聖堂西側ファサード。左右の塔のデザインが異なることに注目。向かって右側の尖塔が12世紀に建造されたもの、左側の塔が16世紀に後期ゴシック様式で建造されたもの。

 

シャルトル大聖堂のステンドグラス窓は「シャルトルブルー」と讃えられる非常に鮮やかな青い色が特に有名で、聖母マリアとその子を描写したものや、アダムとイブの物語を描いた失楽園、ノアの箱舟などが表現されています。

シャルトルブルー ステンドグラス出典:World Heritage EnCyclopedia

▲シャルトルブルーステンドグラスで最も有名な『青い聖母』。イエスキリストを膝に抱えた聖母マリアが描かれた12世紀の作品。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
シャルトル大聖堂は、1979年にユネスコの世界遺産の文化遺産に登録されているんですにゃあ〜

 

ミラノ大聖堂(ドゥオモ)

ミラノ ドゥオモ出典:Milano pocket

 

ミラノ大聖堂は「ミラノのドゥオモ(ドゥオーモ)」とも呼ばれ、イタリアで最大規模のゴシック教会堂として当時のミラノ国王の発案により1386年に起工し、400年以上経った1813年にようやく完成されました。

 

大聖堂の工事にはイタリア人のみならず、周辺国やアルプス以北の国々からも多くの建築家が参加し、設計計画について「ああでもない、こうでもない」と諸外国からの建築家との間に執拗(しつよう)な論争が繰り返されながら進められたそうです。

ドゥオモ ミラノ出典:Duomo milano

▲ミラノ大聖堂には135本の尖塔があり、ひとつひとつに聖人の像が立っている。中央にある主尖塔には金のマリア像が輝いていて、過去にはこのマリア像より高い位置に建物を建ててはいけないとされていた。平面形状は東西に細長いラテン十字形(じゅうじけい)となったバシリカ式のプランが採用されている。

 

▼ラテン十字?バシリカ式?という方はこちらから▼

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建築期間が長かった為、建設中に何度も設計変更が行われたミラノ大聖堂。

ルネサンス期には、天才建築家レオナルド・ダ・ヴィンチもミラノ大聖堂の設計案を出し、同じくルネサンス期のもう1人の天才建築家ドナト・ブラマンテがこの設計案をまとめる役を担いましたが、残念ながらこの案は採用にはなりませんでした。

 

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ミラノ大聖堂の工事は何度も中断して時間だけが流れ、主要部分の建造物が完成したのは起工から約2世紀後の1572年

ただ西側のファサードだけは未完成のままでしたが、当時ミラノ公国を支配していたフランス皇帝ナポレオン1世の命令によって、1813年にようやく完成されました。

ミラノ大聖堂 ドゥオモ出典:Milanoguida

▲豪華な装飾が施された柱とアピス。ステンドグラスは19世紀に交換された。

 

ミラノ大聖堂が最終的な完成に至るまで、なんと約5世紀近くもの年月が掛けられました。

当初ゴシック建築として建設が進められましたが、数え切れないほど多くの建築家が携わったことゴシック期からルネサンス期など様々な時代をまたいだことなどから「デザインの組合せが繁雑だ」とか、「統一感が欠如している」などの指摘もあります。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
最終的にはフランスの資金を使って、ミラノ大聖堂を完成させたんですにゃ。ナポレオン1世のおかげですにゃあ〜

 

ケルン大聖堂

ケルン大聖堂出典:Wikimedia Commons /Velvet

 

ケルン大聖堂はドイツのケルンにある北ヨーロッパ最大のゴシック様式の大聖堂で、正式名称はザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂

現存の大聖堂は3代目で、初代が完成したのは4世紀のこと。

 

当時の聖堂は十字型ではなく正方形の建物で、ヨーロッパで最も古い聖堂として知られていました。

ケルン大聖堂 全体 上空

出典:Wikimedia Commons

▲現在のケルン大聖堂には十字形のバシリカ式のプランが採用されている。主要な構造技術はドイツ人建築家がフランスのゴシック建築に学んだもの。

 

2代目のケルン大聖堂は818年に完成し、ケルンの発展に貢献しましたが、1248年に火災で焼失

その年にすぐさま3代目の建設が始まると、主要な部分は1322年に完成するも正面のファサードの塔がひとつしかない状態が続きました。

その後は財政難などで断続的に工事が行われ、現在と同じデザインになったのは1880年のことでした。

 

ケルン大聖堂は、度重なる工事の中断を原因とする建築上の欠点・問題がたびたび指摘されていて、「ドイツの建築家は、まだフランス・ゴシックの建築家に及ばなかった」などの厳しい意見も国内外からあったようです。

ケルン大聖堂 身廊 アプス出典:flicker

▲ケルン大聖堂内部の身廊は全長146m、幅61m、高さ43.6m。第二次世界大戦時の英米軍の爆撃により一部破壊されたが、現在は復元されている。

 

ケルン大聖堂 ファサード出典:Reddit

▲天空に向かってそびえたつ双塔は高さ157m。アメリカのワシントン記念塔が完成する前は世界一高い建造物だった。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
ケルン大聖堂は、1996年にユネスコの世界遺産の文化遺産に登録されていますにゃ!

 

ゴシック建築の特徴

 

ゴシック建築は12世紀後半に北フランスで生まれ、13−14世紀に最盛期を迎え、16世紀初頭まで続いたロマネスク建築の潜在的な可能性を極限まで追究して創造された建築様式です。

 

ゴシック建築はロマネスク建築での課題だった

「天井を高くできない」

「大きな窓を作れない」

などという問題を様々な建築手法により見事にクリアしました。

 

フライングバットレス(飛び梁)

フライングバットレス ノートルダム大聖堂出典:Pinterest

▲パリのノートルダム大聖堂のフライングバットレス

 

ゴシック様式の建築はキリスト教会の威厳を象徴するかの如く、とにかく高く高く造られ、また「バラ窓」と呼ばれる巨大な丸いステンドグラスが教会の最も奥に配置されました。

・・・すると、建物全体としての構造バランスが悪くなり、部分的に不安定な箇所が出てくる問題が発生。

そのため、この不安定な建築物を外側からフライングバットレス(飛び梁)で支える必要があったのです。

 

下の写真で説明すると、手前の彫刻が施された柱がありますが、この柱の部分をバットレスと呼び、そこから斜めに伸びて壁を支えている部分をフライングバットレスと呼んでいます

フライングバットレス▲ノートルダム大聖堂のバットレス(柱部分)とフライングバットレス(斜めに伸びて壁を支えている部分)

 

フライングバットレス出典:Wikimedia Commons

▲ノートルダム大聖堂のフライングバットレス立面図

 

当時のゴシック様式の建築物は巨大な上に、大きな窓がいくつも付けられていたので、このような工夫により建物の構造を安定させていたのです。

後にこのフライングバットレスは建物の構造を支える為だけのものではなく、ゴシック様式を代表する装飾デザインとして確立し、意匠として用いられることもありました。

フライングバットレス ミラノ大聖堂(ドゥオモ)出典:Wikimedia commons

▲ミラノ大聖堂(ドゥオモ)の細かな彫刻が施されたフライングバットレス

 

ナンタルカ
ナンタルカ
ゴシック様式は、教会建築限定の建築様式だったんですにゃ。住宅建築などにゴシック様式が取り入れられるのは、18世期以降のことになりますにゃあ〜

 

尖頭アーチ(ポインテッドアーチ)

尖頭アーチ ポインテッドアーチ出典:閑人の絵日記/横浜指路教会

 

尖頭アーチ(ポインテッドアーチ)とは、アーチの頂部が丸くなく尖っているアーチのことです。

ロマネスクのように丸いアーチだと真ん中に重さがが集中しますが、尖塔アーチは重さを左右に分散する役割を担います。

尖頭アーチ出典:旅をする記

 

普通のアーチだと上から荷重がかかると「推力(柱を横に押し倒そうとする力)」が増すので倒壊の危険性がありますが、尖頭アーチではこの推力が弱くなり、上からの荷重をそのまま柱の真下に受け流すことで、ロマネスク様式に比べてはるかに巨大な教会の建造を可能にしました。

尖頭アーチ ノートルダム大聖堂出典:Wikimedia Commons

▲ノートルダム大聖堂の正面ファサードに使用されている大きな尖頭アーチ

 

ナンタルカ
ナンタルカ
尖頭アーチさえ頑丈に造れば大きな開口部を作ることができるにゃ。ただのデザインだけというわけではないのですにゃあ〜

 

尖頭リブ・ヴォールト

リブ・ヴォールト出典:アートの定理 

▲肋骨という意味を持つ「リブ」が尖頭アーチに架けられた尖頭リブ・ヴォールト天井『ソールズベリー大聖堂』(イギリス)

 

ゴシック建築の大聖堂に入り天井を見上げると、尖頭アーチのヴォールトに立体的に交差した突起物が見られます。

この突起物は「リブ(肋骨)」と呼ばれるもので、リブの付いている天井のことを「リブ・ヴォールト」といいます。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
ヴォールトとは「アーチを並行に押し出したかまぼこ型(トンネル型)の形状」のことにゃ。ヴォールトを利用した建築構造は古代ローマ帝国で発展して、ゴシック期にはキリスト教会に使用されたんですにゃあ!

 

このリブ・ヴォールトは装飾やデザインではなく、れっきとした建築物を支えるための建築技法で、アーチを交差させてリブを取り付けることにより不安定な天井を安定させて崩れにくくし、崩れても修繕がしやすく、天井の施工が容易になる、というのが利点です。

このようなリブ・ヴォールトはロマネスク建築でも使用されていましたが、ゴシック建築ではさらなる進化を見せます。

 

▼ロマネスク建築のヴォールトはこちらでおさらい!▼

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ゴシック建築では「尖頭アーチ」の発明により、「尖頭リブ・ヴォールト」が生まれました。

尖頭リブ・ヴォールトとは「尖頭アーチにリブが付けられたヴォールト」のことです。

ヴォールト ロマネスク 天井出典:ミカオ建築館

▲ロマネスクとゴシックはともにリブ・ヴォールトがあるが、「アーチの形状」が異なる

 

尖頭リブ・ヴォールトは「尖頭アーチ」と「リブ・ヴォールト」のそれぞれの長所を生かしたヴォールトで、屋根や天井などの上部からの荷重をリブが繋がっている4つの柱に受け流すことで、大空間高い天井大きな開口部を可能としました。

ノートルダム大聖堂 ヴォールト出典:Picsels

▲上部からの荷重を受け流すことにより、柱の間にステンドグラスや大きな扉をつけることができる『ノートルダム大聖堂』(フランス)

 

ケルン大聖堂 ヴォールト出典:Pxfuel

▲尖頭リブ・ヴォールトを用いることにより、柱さえあれば荷重を支える壁を設ける必要が無く、大きな開口部を実現した『ケルン大聖堂』(ドイツ)

 

ナンタルカ
ナンタルカ
教会を高く大きく建てるために、当時の建築家たちが考えた建築技法というわけですにゃ!

 

バラ窓(Rose Window)

バラ窓 Rose window出典:mypace 

▲シャルトル大聖堂の北側バラ窓はイエスキリストの誕生を予言した旧約聖書の人物たちと聖母マリアが主たるテーマとなっている

 

バラ窓(Rose Window)は、ステンドグラスで作られた円形の窓のことです。

 

薔薇という名前のとおり、花びらが開いたかのように中央から放射状にマリオン(ムリオン)トレーサリー(トレサリー )が伸びたデザインとなっています。

マリオン「ガラスの外側でガラスを支えているフレームの部分」で、「方立(ほうだて)とも言われます。

トレーサリー「ガラスの内側にある装飾」のことではざま飾りとも呼ばれ、格子状のもの複雑で幾何学的なものなどがあります。

ノートルダム大聖堂 バラ窓出典:Enthusiastical

▲ノートルダム大聖堂の北側にあるバラ窓には聖人たちの様々なエピソードが表現されている

 

ナンタルカ
ナンタルカ
シャルトル大聖堂で見られる美しいブルーのステンドグラスやバラ窓は「シャルトルブルー」と呼ばれ、ひと目見ようと観光客でごった返しているんですにゃあー

 

フランボワイヤン(フランボワイアン)

フランボワイヤン出典:Wikiwand /フランボワイヤン

 

フランボワイヤン(フランボワイアン)は、炎のように複雑に絡みあったトレーサリーのことです。

 

トレーサリー(トレサリー)は、頂部が尖頭アーチ形をした窓の上部や、バラ窓にはめ込まれた装飾ではざま飾りとも呼ばれます。

フランボワイヤン フランボワイアン出典:Rogue Embryo /Mairie de Saint-Séverin

▲石の彫刻で製作されたフランボワイヤンのトレサリー

 

このトレーサリーは、初期は格子状や幾何学的なシンプルなデザインでしたが、次第にデザインが複雑になり、フランボワイヤンのような炎のように激しい装飾が生まれました。

 

ゴシック期の家具装飾

ギルドの制度

ギルド 徒弟制度出典:Medievalbritain

▲大工や家具の職人となってギルドに参加するためには見習いとして親方に師事し、数学、木工、道具の知識を含む技術を学ぶ必要があった。最高の技術を持った職人は王や貴族に雇われることもあった。

 

この時代の中世ヨーロッパでは、ギルドの制度が定着しました。

 

ギルドとは、生活のさまざまな面で相互に助け合うために商工業者の間で結成された各種の職業別組合のことで、商工業者には家具職人や塗装職人のほかに、服屋や靴屋、漁師やパン屋などがいました。

このギルドと呼ばれる職業別組合には、徒弟制度(とていせいど)の頂点に立つ「マスター(親方)」しか入ることは出来ませんでした。

 

徒弟制度とは、「マスター(親方)」を頂点としてその下に見習いである「職人徒弟」という身分秩序を構成し、親方の家に住み込みで働きながら技術を学び、職人となって働いたのちに試験に合格すると親方となって独立することができるという技術訓練制度です。

 

この制度を導入すると、中世ヨーロッパの職人の技術力はどんどん発達し、ゴシック期の家具は「西洋のクラシック家具の原型」とも言われるほどの優れた作品が生まれました。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
技術の熟練を重んじる職人の伝統は、このギルドの制度によってヨーロッパの社会に今日も残っているんですにゃあー

 

リネンホールド(リネンフォールド)

リネンホールド 出典:PEARLWORKS

 

ゴシック期には、家具やインテリアの装飾模様としてリネンホールド(リネンフォールド)が流行しました。

 

リネンホールドとはリネン生地を畳んだような模様の装飾のことで、ゴシック期のチェスト(箱型の収納家具)、ハイバックチェアなどのやや大きめの家具やインテリアに彫られているのを目にすることができます。

リネンホールド リネンフォールド出典:Pinterest

 

ゴシック ハイバックチェア 出典:invaluable

▲リネンホールドの装飾が施されたゴシック期のハイバックチェア(フランス、15世紀頃)

 

ゴシック期の一般住宅

ハーフティンバー

ハーフティンバー 半木骨蔵出典:UNIQUE RETREATS

 

ハーフティンバーは、北ヨーロッパで広まった一般住宅の木造建築の技法のひとつで「半木骨造(はんもっこつぞう)」とも呼ばれます。

 

柱や梁など、住宅の軸組みとなる部分を外観に現して、その間を煉瓦(れんが)で充てんしたり、白い漆喰を塗って仕上げた技法です。

ハーフティンバー 構造出典:Pinterest 

▲木の柱の間を煉瓦で充填したハーフティンバーの住宅

 

ハーフティンバーは15世紀後半から19世紀初頭にかけて、特に北フランス、ドイツ、イギリスなどの木材が調達し易い地域で多く建築されました。

ハーフティンバー出典:UNIQUE RETREATS

▲フランス北東部のアルザス地方にある小さな集落『リクヴィール』のハーフティンバーの街並み。1階部分は湿気から守るために木を使用していない。

 

ハーフティンバーの名称の由来については2つ説があり、煉瓦や漆喰の壁と木造の部分が半々となるためとも、半分に割られた木を外部に見せているためとも言われています。

 

ナンタルカ
ナンタルカ
フランスのアルザス地方にある『コルマール』という街は、ハーフティンバー様式で作られた色とりどりの建築が並ぶ観光地だにゃ!SNS映えする可愛い街並みは圧巻だにゃ!旅行ができるようになったらぜひ行ってみて欲しいにゃー

 

コルマール ハーフティンバー出典:DOCCA

▲フランスのアルザス地方にある『コルマール』のハーフティンバーの街並み。この街は『美女と野獣』や『ハウルの動く城』の舞台になった街として知られている。

 

 

ナンタルカのまとめ

ナンタルカのまとめ

 

ナンタルカ
ナンタルカ
今回の記事で絶対におさえておきたいポイントですにゃ!

 

まとめ小テスト

 

■ゴシック様式のエレメント

(1)ゴシック様式の建築では、パリの(①)とシャルトル大聖堂、イタリアのミラノ大聖堂、ドイツの(②)などが代表的である。教会は権威を象徴するかの様に高く造られ、採光と荘厳な装飾のために巨大な円形のステンドグラスである(③)などを設けたため、構造的に不安定になった。そのため(④)で支えるという特殊な構造を持っている。

回答を見る

①ノートルダム大聖堂 ②ケルン大聖堂 ③バラ窓 ④フライングバットレス

 

(2)ゴシック様式の建築では、アーチの頂部が尖っている(①)が多用され、上からの荷重左右に分散する役割を担っていた。また(①)の形をした窓の上部などにはめ込まれた装飾を(②)といい、はざま飾りとも呼ばれる。炎の様に複雑に絡み合った(②)のことは(③)と呼ばれる。

回答を見る
①尖頭アーチ(ポインテッドアーチ) ②トレーサリー(トレサリー) ③フランボワイヤン

 

ゴシック期の家具装飾

ゴシック期にはリネン生地を畳んだような模様の装飾である(①)が流行し、チェスト、ハイバックチェアなどの大きめの家具やインテリアの装飾として用いられた。

回答を見る
①リネンホールド(リネンフォールド)

 

ゴシック期の一般住宅

ゴシック期に北ヨーロッパで広まったのは、一般住宅の木造建築の技法のひとつで半木骨造とも呼ばれる(①)である。柱や梁、筋交いや間柱などの軸組みとなる部分を外観に現し、その間を煉瓦で充てんしたり,白い漆喰塗りに仕上げている。

回答を見る
①ハーフティンバー(構造)

 

お疲れ様でした。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡くださいね。

 

ナンタルカ
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