どうも、しけたむです!
この記事では
- 「独立住宅と集合住宅の違い、説明しろって言われてもよく分からん。」
- 「住宅設計のプランに関する用語について一から確認したい。」
とお考えの皆様に向けて、
独立住宅と集合住宅、コートハウスやピロティ、ユニバーサルスペースなどの用語について画像で解説します。
住宅の形態
独立住宅と集合住宅
出典:ARUHIマガジン
住宅は、その集合の形態により「独立住宅」と「集合住宅」に分けられます。
独立住宅とは1戸がそれぞれの敷地に独立して建てられた住宅で、いわゆる「戸建て(こだて)」と呼ばれる住宅のことです。
地面に接地していることによる安心感や、一般的には土地も建物も同じ所有者であるため、建物が老朽化した際の増改築や建替えが容易です。
また古くなった建物の資産価値が無くなっても土地の資産価値まで下がるということにはならず、一定の資産価値を保ち続けることができます。
しかし、庭面積や隣の家との間隔が十分にあればプライバシーや良好な日照、通風を確保できますが、敷地面積が狭小な場合にはむしろ周辺環境が劣悪になることがあるので注意が必要です。
出典:SUVAKO
▲狭小地に建つ独立住宅。特に1階が暗くなりがちなので、設計による改善が必要になる。
集合住宅とはマンションやアパートなどのように1棟の建物内に複数の住戸(じゅうこ:集合住宅の1戸1戸のこと)が区画され、各区画がそれぞれ独立した住宅のことです。
集合住宅は、各住戸部分にあたる「専有部分(せんゆうぶぶん)」と、集合住宅の住人が共同で使用するエントランス、エレベーター、共用廊下などの「共有(共用)部分」に分けられます。
出典:フォーサイト
マンションとアパートの違いについてですが、実は明確に定められた定義はありません。
不動産会社や設計会社が建築物の構造や階層を指標として、それぞれで判断しています。
多くの企業が採用する、最も一般的な特徴は以下のようなものです。
アパート:木造や軽量鉄骨造で建てられた2〜3階建ての賃貸住宅
マンション:鉄筋コンクリート造などの耐火構造で建てられた3階建て以上の集合住宅
住宅は「独立住宅」、「集合住宅」、どちらの形態でもさまざまな設計プランによって、より良い生活ができるような配慮が必要となります。
代表的な住宅設計のプランに関する用語を覚えましょう。
住宅設計のプランに関する用語
オープンプラン
▲オープンプランは配置する家具や住人の使い方により、空間に自由な機能を持たせることができる。
オープンプランとは、住宅内部を固定した壁などで区切らないワンルームのような空間にして、必要に応じて間仕切りを利用することにより多目的に使えるようにした設計法です。
空間に連続性を持たせるため、小さなスペースでも広々とした印象になるのが大きな特徴で、敷地面積の少ない住宅建築などに利用されています。
▲限られたスペースでもオープンプランとすることで、広々とした空間を演出することができる。
オープンプランは住宅だけでなく、オフィスのワークスペースにも取り入れられています。
オープンなオフィス空間とすることで従業員同士のチームワークを促進し、コミュニケーションを強化する効果があると考えられていて、海外ではもちろん、日本国内でも多くの企業が導入しています。
出典:IKEA
▲オープンプランのオフィスにはプライバシーの問題や集中力が持続しづらいなど、ネガティブな意見もある。また、コロナ禍により個室を尊重する「クローズプラン」を奨励する企業も出てきている。
ユニバーサルスペース
出典:domus
▲ミース・ファン・デル・ローエが設計した『ファンズワース邸』(1951年)
オープンプランと似ている用語に「ユニバーサル(ユニヴァーサル)スペース」があります。
ユニバーサルスペースとは、モダニズム建築の理念の一つとして室内空間を特定の用途に限定せずに自由に使えるようにしたもので、モダニズム建築家「ミース・ファン・デル・ローエ」の建築空間を指して使われた語です。
▼ミース・ファン・デル・ローエって誰だっけ?ならこちらから▼
ミース・ファン・デル・ローエはアメリカ・シカゴ郊外の『ファンズワース邸』において、ユニバーサルスペースを採用しています。
出典:domus
▲『ファンズワース邸』の内部には柱が無いため、室内は広々とした空間となっている。
ユニバーサルスペースは垂直方向に建つ「柱」と、柱をつないで水平方向にかけられる「梁(はり)」で長方形を構成した『ラーメン構造(※)』によるシンプルで均質的な空間で、そのまま「均質空間(きんしつくうかん)」と訳して表現されることがあります。
出典:casa
▲床スラブと屋根スラブは外周の8本の柱(H形鋼)によって支えられている。ちなみに「スラブ」とは「板状のもの」を意味する言葉で、コンクリートで出来たスラブを「コンクリートスラブ」、床のスラブを「床スラブ」、天井(屋根)のスラブを「天井(屋根)スラブ」という。
※ラーメン構造とは
柱と梁が交わる部分(接合部)を固く留め、変形を抑えた構造形式のこと。
この柱と梁が交わる部分を強く接合することを「剛接合(ごうせつごう)」という。
一般に柱が等間隔に並ぶ単純な構造で、窓を自由な位置に大きく取りやすく間取りの自由度が高い。
また設備機器の配置や点検も容易で、補修や改装も比較的行いやすいというメリットも。
ビル建築で最も一般的に採用されていて、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などがある。
ちなみにラーメンという言葉は、「枠組み」という意味のドイツ語「Rahmen」からきているので、麺とは関係が無い。
出典:エニシコーポレーション
▲壁式構造は西洋建築で古来より用いられてきた石やレンガを積み上げる構造「組積造(そせきぞう)」の一種。ご覧の通り建物全体が重くなる為、大きな開口部を取ることは出来ない。
ミース・ファン・デル・ローエの考案したユニバーサルスペースの理念は、彼が「事務所の組織に従って分けられた明るくて広い空間によって、最大の効果を得る」と言うように、その平均性・均質性から世界中に伝播し、現在のオフィスビルのオープンプランのモデルとなりました。
吹き抜け
出典:MUKUSTYLE
吹き抜けとは、複数階にまたがる連続した開放空間を指します。
一般的にイメージしやすい例は、1階部分の天井・2階部分の床を設けずに上下の階がつながっている空間ですが、これが3階建ての建物ならば、2階部分の天井・3階部分の床を設けずに上下の階が繋がっている空間も「吹き抜け」と呼びます。
住宅ではリビングや玄関、階段などで吹き抜けが用いられていて、マンションなどではエントランスホールでも見かけることができます。
出典:重量木骨の家
▲大きな窓のある玄関の吹き抜け。暗くなりがちな空間は、吹き抜けと窓を用いることで明るさを届けることができる。
▲吹き抜けのあるマンションエントランス『ガーデンテラス仙川』(2019年)
吹抜けにすることによって空間が縦に広がり、明るく開放感を演出することが可能になる一方、2階部分の床面積は狭くなります。
また、暖かい空気が上部に流れることで冬場の暖まりが遅くなったり、空間が大きくなることで冷暖房効率が悪くなることや、料理などのニオイ、音などが上階に伝わりやすくなるというデメリットがあります。
コートハウス
出典:田園都市建築家の会
コートハウスとは、建物や塀で囲まれた「中庭(コート、パティオ)」をもつ建物や住宅のことです。
都心部などの住宅密集地では庭に向かって大きな窓をとると、隣家や道路から室内が丸見えになってしまうという問題があります。
そこに建物や塀で囲むように中庭を設けることにより、外の空間から完全に(または部分的に)遮蔽され、プライベートな空間を確保しながら採光や通風を確保することができます。
出典:株式会社KADeL
出典:Sumika
コートハウスのかたちには、コの字型やL字型、あるいはロの字型などがあります。
出典:林建築設計室
コの字型
出典:日建設計
コの字型は、建物の3つの面が中庭に面したコートハウスです。
一般的に家全体に光が入りやすく風通しも良いですが、建物の立地によっては光が入りにくくなったり、風の影響を受けやすくもなるので設計には注意が必要です。
またコの字型の建物には角(かど)が多く、外壁の面積も広く複雑な外観となるので、建築費用が高くなる傾向があります。
L字型
出典:amrowebdesigner.com
L字型は、建物の2つの面が中庭に面したコートハウスです。
コの字型や口の字型よりも中庭を広く、外部へ開放させた形で作ることができるというのが特徴です。
外部に開放的な分、プライバシーを重視したい場合は外部から中庭が見えないようにする工夫が必要になります。
またコの字型やロの字型に比べると中庭に面していない部屋が増えるので、そのような部屋が暗くならないような配慮を行う必要があります。
ロの字型
出典:cozy house
建物が中庭をぐるりと囲むように作られているのが、ロの字型のコートハウスです。
中庭が完全に建物に囲まれているため、外部から完全に視線を遮断することができ、プライバシーがしっかり守られるというメリットがあります。
また中庭の四方すべてが居住スペースと接しているため、明るさを各部屋に届けやすく気持ちの良い空間となり、夏は窓を開けっぱなしにしておくこともできます。
しかし、中庭の四方を囲むことで建物が大きくなりがちなので、ある程度の敷地面積が必要になるのと、窓が多くなるので建築コストがかさみ、熱効率も悪くなりがちです。
断熱性の高い窓ガラスやサッシを利用するなどの対策が必要になります。
ピロティ
出典:Homify
ピロティとは、2階以上の建物において2階を1階の柱で持ち上げて、1階部分を開放して外部空間とした建築形式のことです。
地上階部分に壁がないことで強度的に不利がありますが、立地面積が限られる物件では地上階部分をピロティとして、駐車場などに利用することができます。
また、大学等の公共施設においては掲示板や自動販売機などが設置されているスペースがピロティになっていることも多く、校舎を迂回せずにピロティを直進して別の校舎へ向かうことが出来ます。
出典:清水建設
▲『日本女子大学目白キャンパス』(2021年)のピロティ
ピロティは、1926年にル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレによって提唱された『新しい建築の五つの要点(近代建築の五原則)』の一つとして取り上げられました。
ル・コルビュジエの代表作『サヴォア邸』(1931年)では、この5つの要点が高い完成度で実現されています。
出典:Flicker
▲近代建築の五原則「ピロティ・屋上庭園・自由な平面・自由な立面・連続水平窓」が全て盛り込まれた『サヴォア邸』(1931年)
▼『サヴォア邸』はこちらで紹介しています▼
暮らし方に関する用語
マルチハビテーション
出典:空と海 石垣島
マルチハビテーションとは「複数の住居(multi habitation)」という意味の言葉で、独立住宅、集合住宅に関わらず、1世帯で都市部と別荘地などに住み分けるライフスタイルのことです。
平日は職場のある首都圏に住み、週末は喧騒を離れて田舎でのんびり過ごすというような暮らし方を指す言葉で、都市部に2つの住居を持って住み分けるという場合は該当しません。
マルチハビテーションは、総務省が推奨する地方の過疎化対策の一環で、都市部の人が郊外の田舎で二重生活を行なうことにより過疎地の週末人口を増やし、経済の活性化を図るという目的があります。
ナンタルカのまとめ
■住宅の形態
住宅はその集合の形態により2つに分けられる。(①)は1戸がそれぞれの敷地に建てられた住宅で、いわゆる「戸建て」と呼ばれる住宅のこと。(②)はマンションやアパートなどのように1棟の建物内に複数の住戸が区画され、各区画がそれぞれ独立した住宅のことである。
■住宅設計のプランに関する用語
(1)住宅内部を固定した壁などで区切らないワンルームのような空間にして、必要に応じて間仕切りを利用することにより多目的に使えるようにした設計法を(①)という。同様の用語でミース・ファン・デル・ローエが提唱した、床および天井と、最小限の柱と壁で構成される、どのような用途にも対応できる空間を(②)という。
(2)複数階にまたがる連続した開放空間を(①)という。これにより空間が縦に広がり、明るく開放感を演出することが可能になるが、2階部分の床面積は狭くなる。また建物や塀で囲まれた中庭をもつ建物や住宅のことを(②)といい、そのかたちにはロの字型やコの字型、あるいはL字型などがある。
(3)2階以上の建物において2階を1階の柱で持ち上げて、1階部分を開放して外部空間とした建築形式のことを(①)という。地上階部分に壁がないことで強度的に不利があるが、立地面積が限られる物件では地上階部分を(②)などに利用することができる。
■暮らし方に関する用語
独立住宅、集合住宅に関わらず、1世帯で都市部と別荘地などに住み分けるライフスタイルのことを(①)という。(①)は総務省が推奨する地方の(②)対策の一環で、都市部の人が郊外の田舎で二重生活を行なうことにより過疎地の週末人口を増やし、経済の活性化を図る目的がある。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
▼次回、集合住宅の設計手法と種類はこちらから▼