こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「模様?文様?紋様?違いについて知りたい。」
- 「古今東西のいろいろな模様について知りたい。」
という皆様に向けて、いろいろな装飾模様についてまとめて画像で解説します。
模様とは?
模様(もよう)とはものの表面に表された図、絵、形などのことで、自然に作られたものと、人工的に作られたものに大別されます。
自然に作られた模様には、砂紋(さもん)や地層、樹の年輪、亀の甲羅や蝶々の羽などがあります。
▲砂紋とは水や空気が砂に流れることによってできる、規則的な波状の起伏のこと。人工的なものでも砂紋と呼ぶことがあるが、多くは自然現象によって生じたものを指す。
人工的に作られた模様には、古代から用いられてきた円や多角形、直線などを部品として組み合わせた「幾何学(きかがく)模様」などがあり、装飾としての目的以外にも、魔除けなどの呪(まじな)いとしての意味をもたせたものや、警告や注意を意味するものなどがあります。
▲正三角形を上下に重ねた星形の六芒星(ろくぼうせい)は、邪悪なものを払う魔除けの模様として使われている。魔術的な魔法陣の基本形や、イスラエルの国旗としても有名。
▲ 黄色は人間の注意を引く特性を持ち、正反対の黒と組み合わせることで黄色をよりはっきりと認識させることができる。このような色の組み合わせは「色の視認性(視認度)」が高いと言える。
▼視認性についてはこちらで解説してます▼
また「模様」という言葉は、「文様(もんよう)」や「紋様(もんよう)」というように、書き方を区別されることがあります。
▲辞書においては同じ意味の言葉として記載されているが、一般的な使われ方には違いがある。
広い意味で一般的に使う場合は「模様」とし、特定の分野では慣用にあわせて以下のように「文様」と「紋様」を使い分けています。
■「模様」「文様」「紋様」の使い分け
- 模様(もよう):「文様」「紋様」を含む広い意味で一般的に使われる。困ったらこれを使っとけば間違いない。
- 文様(もんよう):人工的に作られた模様に使われる。美術・工芸における模様の様式を指す場合はこれ。(縄文土器、唐草文様、市松文、籠目文など)
- 紋様(もんよう):主に自然に作られた模様に使われる。(砂丘に描かれた「砂紋」や蝶の羽の紋様など。)特定の分野で慣用が固定している場合にも使われることがある。(家紋、着物の小紋、刺青の紋様など)
古代の装飾文様
人類の歴史では古代より、地域を問わずに土器や服飾、生活実用品から建築に至るまで様々なものに装飾として文様を施していて、最も古い時代には単純な線を組み合わせた幾何学文様が描かれました。
出典:日経Style
▲約10万年前の動物の骨片に刻まれた格子状の文様。2019年に発表された論文の内容からすると、文様は偶然の傷では無く規則的に彫られているとされ、文様を目立たせるために鉄を多く含むオーカーという黄土色の粘土が溝に塗り込まれている。
パピルスとロータス
やがて身の回りにいる動物や昆虫、植物がモチーフとして取り入れられるようになり、古代エジプトではワニやカバ、パピルスやロータスなどの装飾文様が多用されました。
▲古代エジプトのレリーフに刻まれたカバの親子と子供のカバを食べようと狙っているワニの装飾。
▲エジプト南部のアスワンにある『フィラエ神殿』を描いたスケッチ(1838年)。石柱の柱頭にはパピルスやロータスのつぼみ、天井にはハゲワシ、柱や壁にはヒエログリフ(エジプト文字)が彫られ、フレスコ画と呼ばれる絵画技法で鮮やかに装飾されていた。
▼フレスコ画はこちらで紹介しています▼
▲パピルスはカヤツリグサ科の大型の多年草で、エジプトでは紙の原料として利用していた
出典:CGTN
▲ロータスは睡蓮(スイレン)のこと。古代エジプトでは装飾に用いられたり、信仰の対象ともなっていた。
出典:THE MET
▲上エジプト東岸にある『カルナック神殿』のパピルスなどいくつかの植物をモチーフとした柱頭(紀元前380〜343年頃)
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パルメット
古代エジプトで生まれた伝統的なモチーフとして、葉が扇状に広がった植物文様の『パルメット』が有名で、現代でもクラシックな雰囲気のインテリアに用いられます。
▲パルメット文様とは、葉が扇状に広がった植物文様のこと。古代エジプトが起源とされていて、唐草模様の原型ともいえる重要なモチーフとなっている。
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▲シュロ(棕櫚)とは、ヤシ目ヤシ科シュロ属の樹木の総称で、5種以上が属している。シュロという名は、狭義には同属であるワシュロの別名であり、広義には他の様々なヤシ科植物すべてを指す語でもある。
アカンサス
古代ギリシャで生まれた装飾文様では『アカンサス』が有名です。
アカンサスとは地中海産のアカンサス・スピノザ種の植物のことで、日本では「ハアザミ」と呼ばれ、葉っぱを表す装飾文様の中で最も一般的なものです。
出典:BUCCELLATI
▲アカンサスは大型の常緑多年草で地中海沿岸原産のギリシャの国花。アザミに似た形の葉を持ち、古来から建築物や内装などの装飾のモチーフとして頻繁に使用される。
アカンサスの装飾は、古代ギリシャ時代からコリント式オーダーの柱頭をはじめ様々な部分の装飾として用いられていました。
古代ローマ人に征服された後もビザンチン、ロマネスク、初期ゴシックの時代まで使われ続け、ルネサンス期に再興するとその後はクラシックな装飾の定番として現代まで使われ続けています。
▲コリント式オーダーの柱頭に使用されているアカンサスの葉の装飾。『ゼウス神殿』(アテネ)
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トリスケルとケルティック・ノット
ケルト文化(※)では、『トリスケル(またはトリスケリオン)』と呼ばれる渦巻文様や、『ケルティック・ノット』と呼ばれる組紐(くみひも)文様が発達し、これらは後のキリスト教会堂の装飾にも大きな影響を与えました。
※ケルト文化とは
インド・ヨーロッパ諸族の一派で、紀元前5世紀から前1世紀にヨーロッパ中部および西部で活躍したケルト民族による文化のこと。
ケルト人は、紀元前1世紀にローマのガイウス・ユリウス・カエサルらによって征服されると、被支配層としてローマ文化に従い、中世にはゲルマン系の民族(フランク人)に吸収されフランス人に変質した。
▲トリスケルは渦巻き(スパイラル)が3つ集まったもので、ケルト人のシンボルとして用いられた。日本では「三脚巴紋(さんきゃくともえもん)」と呼ばれる。
出典:SYMBOLSAGE
▲組紐文とは名前の通り紐を結んだデザインの文様で、ケルトの組紐文は「ケルティック・ノット」と呼ばれる。さまざまな派生型があり、キリスト教建築ではもちろん、似たような文様は世界中で使用されている。
▲石の十字架に彫られたケルティック・ノット
花喰鳥、連珠文、樹下双獣文
また、イラン高原・メソポタミア(イラク・シリア北東・トルコ南東)あたりの地域を支配していたササン朝ペルシアで用いられていたいくつもの文様は、シルクロードを経てアジアへ伝播し、『花喰鳥(はなくいどり)』、『連珠文(れんじゅもん)』、『樹下双獣文(じゅかそうじゅうもん)』などの装飾文様へ発展しました。
出典:THE MET
▲ササン朝ペルシアで用いられていたキジの一種であるホロホロチョウをモチーフにした装飾。アジアへ伝わったこの鳥の装飾は「花喰鳥(はなくいどり)」という名称で現在に伝えられている。『Wall panel with a guinea fowl』(西暦6世紀ごろ)
出典:THE MET
▲丸い玉のようなもの(真珠)で円を作った文様は、アジアへは「連珠文(れんじゅもん)」として伝わっている。『Wall panel with wings and a Pahlavi device encircled by pearls』(西暦6世紀ごろ)
▲中央の樹木の下に獅子や羊などの動物が対照的に配置された文様である「樹下双獣文(じゅかそうじゅうもん)」。 樹木は力強い生命力を象徴し、動物はそれを守護する意味合いがある。『Relief plaque with confronted ibexes』(西暦6世紀ごろ)
これらササン朝ペルシアで生まれた装飾文様は日本へは奈良時代に伝わり、現在も正倉院の宝物庫に納められています。
このような西域のペルシアからの影響を受けた文様を総称して「正倉院文様(しょうそういんもんよう)」と呼び、現在でも日本の伝統的な文様として用いられています。
出典:家庭画報
▲正倉院に納められている『花喰鳥』の織物。正倉院にはペルシャから中国までの花喰鳥が見られ、鳥にはオウムや鳳凰(ほうおう)、鶴などが描かれた。
出典:家庭画報
▲正倉院に納められている『連珠文』と『樹下双獣文』をミックスしたような織物。これらの文様は現代でも着物や帯などに使用されている。
▼「正倉院ってどこかで聞いたな」って方はコチラ▼
アラベスク
▲イランの都市イスファハーンにあるシェイク・ロトファラー・モスクのドームに描かれた巨大な唐草模様のアラベスク(17世紀)
ササン朝ペルシアで生まれたいくつもの文様はイスラム文化圏の形成に受け継がれ、イスラム圏では『アラベスク』の文様がめざましく発達しました。
アラベスクは、モスク(イスラム教の礼拝堂)の壁面装飾などに見られるイスラム美術の一様式で、幾何学的文様や植物のツルや花をパターン化した装飾です。
西洋のキリスト教の教会にはイエス・キリストをはじめ多くの人物が描かれていますが、イスラムでは偶像崇拝が禁止されていたため特定の人物などは描かれずに幾何学文様が発展し、美しいアラベスクがイスラム建築を彩りました。
出典:Flickr
▲モスクを装飾する幾何学模様と花の模様が組み合わせれたアラベスク
アラベスクの文様は、大きく分けて3つの種類があります。
■アラベスク文様の種類
- 幾何学文様:世界の秩序を支配する原理を表すもの。数学的なバランスがあり、可視的物質世界を超えて広がる無限のパターンを構成する。
- 植物モチーフの文様:生命および生命を生み出す女性を表現。
- カリグラフィー(アラビア書道):イスラム教の聖典コーランの内容をアラビア語で記したもの。
これらの文様は、それぞれ組み合わせて使用されることもありました。
出典:Pixabay
▲モスクに使用される幾何学的文様のアラベスク
出典:123RF
▲植物モチーフの文様を使用した華やかなアラベスク
出典:諸概念の迷宮
▲幾何学文様と植物モチーフの模様である花を組み合わせたアラベスク
出典:alaraby
▲アラビア語を模様として溶け込ませているカリグラフィー
▼アラベスクが使われたイスラム建築はこちらから▼
埴輪の幾何学文様
日本では、古墳時代の埴輪から現代にも見られるようなさまざまな文様が発見されています。
BSプレミアム〈美の壺〉で『鬼滅の刃』でも注目された市松模様を取り上げてた。何と埴輪にも市松模様が描かれていてビックリ❗それぞれ意味があるらしく興味深かった😊 #鬼滅の刃 pic.twitter.com/krlTAbBWgP
— くすの木 (@lGtD2wZvrLtp9OH) November 28, 2020
▲市松模様が刻まれた群馬県太田市飯塚町出土の『埴輪武装男子立像』(国立博物館所蔵)
【続・埴輪美豆良(29】 #みづら祭
【三角文様の盛装男性埴輪 福島県いわき市神谷作101号墳出土】
ひとめ見たら忘れられない華やかなお方。しかし冠はこれまた不思議な形状。 pic.twitter.com/BB330ReCBI— 逆名🌈🕊️ (@sakana6634) February 9, 2014
▲赤い三角形を規則的に並べた模様を身に着けた埴輪『天冠埴輪』(神谷作古墳出土)
日本の装飾文様
麻の葉(あさのは)
麻の葉(あさのは)とは、大麻の葉をあしらった図柄で「麻柄」ともいう、日本の伝統的な文様で、正六角形の中に葉っぱに見立てた幾何学模様が連続したデザインとなっています。
平安時代には仏像が着ている装束の図柄に使われ、江戸時代には女性の間で着物の図柄として麻の葉を取り入れることが流行しました。
出典:きものカンタービレ
▲現存する最古の麻の葉模様は、鎌倉時代を代表する仏師である快慶(かいけい)が手がけた十大弟子像の一つ『優波離尊者像』の装束に施された装飾ではないか…といわれている。
▲江戸時代中期の女形の歌舞伎役者「岩井半四郎」が身につけているのは麻柄の帯。この浮世絵を描いたのは勝川春章(1782-1788年頃)。
▼浮世絵って何だっけ?て方はこちらから!▼
麻の葉は、現代でも家紋や神紋、伝統工芸、ほか一般に様々な場面で図柄として使われている人気の文様です。
出典:星の街仙台
▲透かし彫りで用いられる麻の葉文様
まんじつなぎ
まんじつなぎとは、卍(まんじ)の字を連続してあしらった日本の伝統的な文様です。
明時代の中国から伝わったものであるといわれ、日本では安土・桃山時代ころから染織品の模様に多く用いられています。
似たような文様に、卍つなぎを菱(ひし)状にゆがめて連続させた「紗綾形(さやがた)」があり、着物や唐紙、さらには神社建築の装飾としても広く用いられています。
▲くずした卍(まんじ)を連続させた紗綾形は、江戸時代に海外から輸入された絹織物の地紋(じもん:布地全体に織り出した織模様のこと)に用いられていた。
籠目(かごめ)
出典:有限会社いわみ
▲最も代表的な籠目である「六つ目網み」は、網目が六芒星(ろくぼうせい)の形となることから魔除の効果があると言われている。
籠目(かごめ)とは、竹や籐などで編んだ籠の網目、または網目が連続した文様のことです。
籠目の編み方の種類には、六芒星の形となる最も基本的な「六つ目編み」以外にも、用途に応じて様々なパターンがあります。
出典:Weblio
▲籠目とは籠の網目のこと。六つ目編みが代表的だが、さまざまな編み方があることを覚えておこう。
七宝(しっぽう)
七宝(しっぽう)とは、同じ大きさの円の円周を4分の1ずつ重ねた連続文様で、円形が永遠に連鎖し繋がる文様には「円満」「調和」「ご縁」などの願いが込められていると言われています。
七宝は「金」「銀」「水晶」「珊瑚(さんご)」「瑠璃(るり)」「瑪瑙(めのう)」「しゃこ」という7つの宝を指す仏教用語でもあり、人と人との縁(えん)や繋がりは、七宝と同等の価値があることを示しています。
出典:八光堂
▲伝統工芸品の最高級ガラス細工『江戸切子(えどきりこ)』の代表的な装飾文様のひとつとして七宝を見ることができる。
市松(いちまつ)
市松(いちまつ)とは格子模様の一種で、明暗2色の正方形(または長方形)を交互に配した文様のことです。
先にもご紹介したように、市松は古墳時代から埴輪の服装に用いられているほか法隆寺や正倉院の染織品にも見られるなど、幾何学模様のもっともシンプルなものとして古代より一般的な模様として受け継がれてきました。
もともとは「石畳(いしだたみ)」や「霰(あられ)」などという名称で呼ばれていたのですが、江戸時代の歌舞伎役者「佐野川市松」という人物が白色と紺色の正方形を交互に配した着物を着ていたことから着物の柄として流行すると、「市松」という名称で定着しました。
出典:浮世絵検索
▲江戸時代の歌舞伎役者「佐野川市松」の浮世絵。女形(女役の役者)として一世風靡した。
松川菱(まつかわびし)
松皮菱(まつかわびし)とは、菱形(ひしがた)の図形の上下に小さな菱形を重ねたような文様のことです。
「松皮菱」という名称は、その形状が松の木の皮を剥がした様子に似ていることが由来で、日本では広く知られているものの世界的に見ると珍しい日本特有の模様です。
奈良時代から衣服の模様などに用いられるようになり、16世紀中頃から17世紀の近世初期に本格的な人気が出ました。
「菱形」をモチーフとした模様は実はほかにも色々あり、上下に小さい菱形を重ねた文様だけを「松皮菱」と呼び、その他の文様にはそれぞれ固有の名称があります。
出典:家紋のいろは
▲菱形の種類は膨大で、それぞれに固有の名称がつけられている。
鱗文(うろこもん)、鱗形(うろこがた)
鱗文(うろこもん)とは、三角形を上下左右に連続してつないだ文様のことで、「鱗形(うろこがた)」とも呼ばれます。
先にご紹介したように鱗文の歴史は古く、埴輪や古墳の壁面に朱や青の彩色を加えてすでに使用されていて、そのため鱗文は原始信仰のシンボルとしてみられることもあります。
奈良時代から鎌倉時代にかけてはわずかに庶民の衣服の模様として絵巻に散見するだけですが、室町時代に入ると中国(明)から舶来した絹織物のなかにこの文様を使ったものがあったため、武家の羽織りものや能装束として人気に火がつきました。
出典:ritsumei
▲鱗に見える文様であることから、蛇体を表す女役の衣装の模様としても用いられた。「清姫日高川に蛇躰と成る図」(芳年)
青海波(せいがいは)
青海波(せいがいは)とは、日本の古典音楽のひとつである雅楽(ががく)の演目『青海波』の衣装に用いられる文様で、半円形を三重に重ね、波のように反復させたものです。
出典:精選版 日本国語大辞典 精選版 日本国語大辞典について
▲雅楽の楽曲である「青海波」は、数ある舞楽中最も優美華麗な曲とされ、「清海波」、または「静海波」とも表記されることがある。
青海波の起源については諸説ありますが、模様自体は古代ペルシャで生まれ、シルクロードを通って中国を経由して飛鳥時代に日本に伝わったという説が有力で、青海波に似た模様が、エジプトやトルコ、中国にも見られます。
出典:Amazon
▲中東には青海波に似た文様がいくつも残っている。『Fish scale pattern』
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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