どうも、しけたむです!
この記事では
- 「彫刻やタペストリー、ステンドグラスについてざっくり知りたい。」
- 「彫造と塑造の違いを説明できない・・・。」
とお悩みの皆様に向けて、インテリアアート最終編!
彫刻やタペストリー、ステンドグラスの歴史や特徴について画像で解説します。
工芸とは?
工芸(こうげい)とは、高度な熟練技術を駆使してつくられた美的効果を備えた物品、およびその製作の総称、または物品を製作する分野のことで、「応用美術」または「装飾美術」なんて呼ばれることもあります。
器など実用性のあるものから、彫刻やステンドグラスなど鑑賞して楽しむものまでさまざまですが、いずれも材料・技術・意匠などによって高い美的効果を備えているのが特徴です。
代表的な工芸の分野には、以下のようなものがあります。
- 漆(うるし):蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)など
- ガラス:吹きガラスやステンドグラスなど
- 陶芸(とうげい):磁器や陶器など
- 金工(きんこう):彫金や鍛金など
- 木竹(きたけ、ぼくちく):木工、竹細工、曲げ物など
- 糸:刺繍、レースなど
- 布:織物、タペストリーなど
- 紙:切り絵や折り紙など
- その他:彫刻や象嵌(ぞうがん)など
工芸は、もともと個人作家が手作業によりひとつひとつ製作する手工芸(しゅこうげい)、つまりハンドクラフトとして技術が培われてきましたが、産業革命による近代化によって機械での大量生産が可能になると、一定の規格のもとに生産される機械工芸(近代工芸)が価格の安さなどから主流となり、手工芸は大きく衰退してしまいました。
しかし、現在では手づくりならではの高度な技術と美術性が再評価され、伝統的な工芸の技術伝承・復興などの活動が行われています。
出典:東洋経済ONLINE
▲手工芸ならではの味わいは、機械工芸では完全再現することができない。
タペストリー
出典:BBC
▲14世紀に織られたフランスに現存する最古のタペストリー『The Apocalypse Tapestry』(1377–1382)終わりの見えない戦争の中での国家の窮乏と恐怖が描かれている。
タペストリーとは室内装飾のために壁に掛けて使われる織物の一種で、フランス語では「タピスリー」とも呼ばれます。
タペストリーは日本の綴織(つづれおり:平織の一種で、緯糸で経糸を包み込み、経糸を見えなくして緯糸だけで絵柄を表現する織り方)と同じ織り方で、絨毯(じゅうたん)を織るのと同じ要領で織られています。
出典:mikikihara
▲絵柄を表現するのは緯糸だけで、経糸は緯糸に覆われて見えなくなってしまう。
▼平織ってなんだっけ?てかたはこちらから▼
最盛期は中世末期のヨーロッパにまで遡り、フランスのゴブラン工場で製作されていたことからゴブラン織という名称でも有名です。
▲ルイ14世のために織られたゴブラン織。その緻密で精細な織り方は絵画と見紛うほど。 『Battle of Zama』(1688-1690) 6144mm×3644mm
出典:Le Parisian
▲17世紀から王立工場として王室向けにタペストリーなど織物を生産していたことで有名なフランスのゴブラン工場は現在も現役で稼働中。
▼ゴブラン織はこちらで紹介しています▼
出典:ラクスル
▲織物に直接プリントしたタペストリーは安く大量に作れるため広告宣伝用としても利用されている。
ちなみに繊維素材を織る、縫う、結ぶ、組むなどして立体的に表現したものをファイバーアートと呼び、立体的なタペストリー作品なども同じように呼ばれます。
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▲さまざまな繊維を立体的に織ったり縫ったり結んだりしたファイバーアート
ファイバーアートは「ファイバーワーク」とも呼ばれ、繊維以外にも皮革、金属、紙、木、獣毛なども組み合わせた立体的な表現が行われます。
そのため基本的に用途性は無く、現代美術のひとつとして捉えられることもあります。
出典:Dwell
▲テキスタイルアーティストのメーガン・シメックによる巨大なファイバーアート
ステンドグラス
ステンドグラスとは、色の着いたガラスを寄せ集めて絵柄を表現した作品のことです。
ガラスに金属酸化物を混入することでさまざまな色味を出すことが可能で、窓として設置した際、外部からの光によって輝くような美しさを演出できるのが特徴です。
キリスト教会の装飾として用いられているのを現代でも目にすることができるステンドグラスは、19世紀にモダニズム建築が全盛になると用いられることは少なくなりましたが、現代ではその美しさが見直され、住宅、公共建築、教会など様々な場所に用いられています。
出典:World Heritage EnCyclopedia
▲フランスのシャルトル大聖堂にあるステンドグラス。その美しいブルーのガラスから「シャルトルブルー」と呼ばれ、中央にはキリストを膝に抱えた聖母マリアが描かれる。『青い聖母』(12世紀頃)
▲岐阜駅構内に設置されている長良川鵜飼(ながらがわうかい)をイメージしたステンドグラス
過去を遡ると、404年に再建されたイスタンブールの聖ソフィア寺院(アヤソフィア、ハギア・ソフィア)では着色されていない板ガラスが窓に用いられていて、500年頃に同地区に建てられた寺院には、ステンドグラスがあった跡だけが残されています。
▼聖ソフィア寺院はこちらで紹介してます▼
破片の形で残る最も古いステンドグラスは、764年にドイツで創建されたロルシュ修道院のもので、キリストが描かれていました。
▲ロルシュ修道院に現存するキリストが描かれたステンドグラスの破片。(9世紀頃)
▲ロルシュ修道院のステンドグラス復元想像図
その後ステンドグラスはフランスで目覚ましい発展が見られ、12世紀後半から栄えたゴシック様式の教会堂は美しい彩色の施されたステンドグラスで彩られました。
▲パリのシャルトル大聖堂にある円形のステンドグラス「バラ窓」
▼バラ窓ってなんだっけ?て方はこちらから▼
日本へは明治以降に近代建築とともにステンドグラスの技法が伝えられ、明治時代後半から国内でも製造されるようになりました。
▲1933年に完成した旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館)のステンドグラス照明
▼旧朝香宮邸はこちらで紹介しています▼
彫刻
平面的な芸術表現である「絵画」に対して、立体的な芸術表現をを総称したものが「彫刻(ちょうこく)」です。
彫刻は石や木など硬い材料を彫って作る彫造(ちょうぞう)と、粘土やロウなどの柔らかい素材を芯となる棒(心棒:しんぼう)に肉付けしながら形作る塑造(そぞう)という技法に大別され、彫造で彫られた像を彫像(ちょうぞう)、塑造で造られた像を塑像(そぞう)といいます。
また、これら彫像と塑像はまとめて彫塑(ちょうそ)と呼ばれます。
▲7世紀後半につくられた奈良県當麻寺金堂本尊の弥勒仏坐像は日本最古の塑像とされている。塑像の作例は奈良時代に集中していて、平安時代以降は彫像が主流となる。
石や骨から彫られた彫刻は、木材から彫られた彫刻と比べて硬く燃えないことから古代の作品が多く現存しています。
ドイツ南西部の洞穴からは、知られているなかでは最古のヒト型の像が発見されでおり、その年代は今から3万6000年前、マンモスの牙製で女性をモチーフにした像であると考えられています。
出典:WIRED
▲マンモスの牙を彫って作られた女性像は高さ3cm、上端に紐を通す穴があいており、ペンダントにしていたと思われる。
人類の歴史と共に彫刻は彫られ続け、ある地域では宗教の信仰対象となり、またある時代では政治家や権力者の威光を表現するための道具ともなりました。
伝統的な西洋式の彫刻が彫られ始めたのは古代ギリシア時代のことで、偉大な彫刻家の手により傑作が数多く誕生しています。
▲古代ギリシアを代表する彫刻家ミュロンによる作品『円盤投げ』(紀元前5世紀ごろ)
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キリスト教が公認された4世紀以降には偶像崇拝が禁じられたため、彫刻は装飾的な植物や動物などのレリーフに限られました。
10世紀に石で粗末な教会が建てられ始めたロマネスク期に入り、さらに12世紀にゴシック期に移ると彫刻はキリスト教の教えを伝えるため、教会の柱や壁面に刻まれるようになります。
出典:Britannica
▲フランスのシャルトル大聖堂の入り口に彫られたキリストや使徒、奇怪な動物群
▲シャルトル大聖堂の内部。中世ゴシック期の彫刻は、キリスト教信仰の苦悩と受難を表現した。
▼ロマネスクはこちらで詳しく紹介しています▼
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15世紀にイタリアで起こったルネサンス期には、聖書からではなく神話を題材とした彫刻が国内の随所で彫られ始めました。
なかでも天才と謳われた芸術家ミケランジェロによる『ダビデ』像はルネサンス期屈指の傑作として有名です。
▲ミケランジェロが1501年に製作をはじめて約3年の月日をかけて完成させた彫刻で、高さは517cm。ダビデが巨人ゴリアテとの戦いに臨み、岩石を投げつけようと狙いを定めている場面を表現している。
▼ルネサンスはこちらで詳しく紹介しています▼
バロック期になると人物の動きがダイナミックになり、外側へ手を伸ばしたり今にも動き出しそうな躍動感を持つ作品が溢れます。
バロック期の天才彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニは、人物を噴水や建築物、照明などと融合させた作品を生みだし、見るものを大いに驚かせました。
▲ジャン・ロレンツォ・ベルニーニによる『アポロンとダフネ』(1622-1625)
出典:しけたむ
▲ローマ・ナヴォーナ広場にある『四大河の噴水』もベルニーニの代表作品。4つの大河はナイル川、ガンジス川、ドナウ川、ラプラタ川を擬人化し、表現している。
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19世紀に入ると彫刻のモチーフは精神世界、日常、神話など多岐に渡り、この時代を代表する彫刻家が『考える人』で有名なオーギュスト・ロダンです。
ロダンの彫刻は緻密でとにかくリアルだったことから、そのあまりのリアルさのために「実際の人間から型を取ったんじゃね?」という疑いをかけられてしまい、怒ったロダンが2年後に人間よりもかなり大き目のサイズの彫刻を彫って人々を驚かせた、というエピソードがあるほどです。
▲ロダンの代表作のひとつ『地獄の門』。この門の上に見えるのが『考える人』で、のちに単体作品として製作された。この門を覗き込む人物がロダン本人という説があり、門の中の地獄には妻、妻との子、当時の不倫相手が描かれている。
20世紀以降になると、今までの伝統に捉われない斬新で前衛的な芸術運動「モダニズム」が起こります。
モダニズムの彫刻はさらに多様化し、たとえば20世紀を代表する芸術家のひとりであるパブロ・ピカソは異素材を組み合わせて1つの彫刻を作り出したはじめての人物で、芸術界に革命を起こしました。
この異素材を組み合わせる技法は、絵画の分野ではコラージュと呼ばれます。
出典:Artsy
▲金属のスプーンとブロンズでつくられたピカソの彫刻作品『Glass of Absinthe』(1914年)
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また20世紀を代表するルーマニア出身の彫刻家コンスタンティン・ブランクーシは、抽象的な彫刻である抽象彫刻(ちゅうしょうちょうこく)の分野を確立し、「目に見える対象をそのまま表現することをしない」という芸術作品を残しました。
▲20世紀の抽象彫刻に多大な影響を与えたブランクーシは「装飾的・説明的な部分を極力削ぎ落とす」というシンプルな形と色だけで表現する芸術「ミニマル・アート」の先駆者のひとりでもある。
▼ミニマルなインテリアはこちらで紹介しています▼
▲ブランクーシの影響を受け独自のスタイルの女性像を制作したガストン・ラシェーズの彫刻『Floating Figure』(1927年)
▲ブランクーシの影響を受けたイギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアによる抽象彫刻『大きな横たわる像』(1984年:元の小型彫像は1938年)
モダニズム彫刻では伝統的な彫刻技法から離れ、異素材を寄せ集めたり、抽象的な表現に重きを置いた作品がつくられました。
1950年代以降は、さらに従来の彫刻概念をはみだす兆候が目立ち、金属などの廃品を集めて固めたり、彫刻が展示される空間(街中や美術館など)が持つ特性(広さ、高さ、地域性)との調和を図ったり、彫刻の美しさではなく概念や思想が優先される作品が現れました。
▲自動車のスクラップを寄せ集め「ジャンクアート」と呼ばれる廃棄物彫刻で注目を集めたジョン・チェンバレンの作品『S』(1959年)
▲特定の室内や屋外に彫刻やオブジェを設置して、場所や空間全体を作品として体験させる「インスタレーションアート」の芸術家ルイーズ・ブルジョワの作品『Maman』(1999年)
▲シンプルな形状に光を反射する金属や光を吸収する塗料などを用いて、見るものの視覚に訴えかける彫刻をつくる現代彫刻家アニッシュ・カプーアの作品『世界がひっくり返る(Turning the World Upside Down)』(2010年)
お疲れ様でした。
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次回もお楽しみに!
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