どうも、しけたむです!
この記事では
- 「ポスターと写真の歴史についてざっくり知りたい。」
- 「オリジナルプリントってなに?」
とお悩みの皆様に向けて、
ポスターと写真の歴史や特徴について画像で解説します。
ポスターとは?
ポスターとは、広告および広報のために大型紙に印刷された公共・商業宣伝物のことで、屋内外を問わず壁面や柱などに掲示されます。
多くの人々の視覚に訴えるために絵画やイラストレーション、写真や文字などを使って目をひくようにデザインされていて、日本において宣伝用のビラを張り出す行為は、すでに江戸時代から行われていました。
▲1860年に描かれた、浅草の猿芝居を告知する引き札(ひきふだ)。引き札とは人目につくところに貼った絵入りの広告、すわなち今日のビラやポスターのことで、主に浮世絵師によって描かれた。
ポスターのサイズはさまざまですが、主に以下太字表記のサイズが一般的に「ポスター」と呼ばれて製作されている傾向があります。
- A0:縦 841×横 1189
- A1:縦 594×横 841
- A2:縦 420×横 594
- A3:縦 297×横 420
- A4:縦 210×横 297
- B0:縦 1030×横 1456
- B1:縦 728×横 1030
- B2:縦 515×横 728
- B3:縦 364×横 515
- B4:縦 257×横 364
- 菊全:縦 980×横 680
(単位:mm)
ポスターの歴史
ポスターの歴史はチラシやビラなど手書きのものまで含めれば、歴史的には古代国家の民衆に対する告示にまでさかのぼることができます。
現代のように大量印刷を行うポスターへの発展のきっかけとなったのは、18世紀の石版を使用した石版画(リトグラフ)の発明によるものでした。
▼石版画(リトグラフ)は前回の記事にて紹介しています▼
石版画の誕生と発展により大量印刷・印刷時間の短縮・印刷費の低減などが成し遂げられ、ポスターが世界中で広まったのです。
▲石版画(リトグラフ)によって描かれたポスター『Affiche pour la création de Vert-Vert』(1869)Jacques Offenbach
1870年ごろになると、メッセージ性を持ったポスターにデザイン性を明確に意識したポスターが「ポスターの父」と呼ばれるジュール・シェレによって描かれ、フランス・パリの街頭を飾りました。
▲ジュール・シェレ(1836 – 1932)はフランスの画家・イラストレーターで、アール・ヌーヴォーの先駆者の一人。陽気で優雅な女性が多く登場するシェレのポスターデザインはパリで人気を博し、その後メッセージ性とデザイン性が共存したポスターが多く登場するきっかけを作った。
▲『ムーラン・ルージュの舞踏会』(1889) ジュール・シェレ
▼アール・ヌーヴォーって何だっけ?て方はこちらから▼
1890年代に入ると、アール・ヌーヴォーを代表する画家アルフォンス・ミュシャや、トゥルーズ=ロートレック、ピエール・ボナールらが台頭し、それぞれ独自の表現技術を華麗に展開することでポスターの芸術性をますます高めました。
▼アルフォンス・ミュシャはこちらで紹介しています▼
▲フランスの画家トゥルーズ=ロートレック(1864 – 1901)は大胆な構図と力強い描写によって優れた作品を多数残した。『Divan japonais』(1892)
▲ピエール・ボナール(1867 – 1947)は前衛的な芸術家集団「ナビ派」に分類される画家で、版画やポスターにも優れた作品を残した。『FRANCE – CHAMPAGNE』(1891)
その後世界が次第に戦争の道を突き進むと、1914年に第1次世界大戦が勃発。
するとポスターは戦時宣伝用として盛んに利用され、特にアメリカ合衆国での徴兵を呼びかける「I WANT YOU(あなたが必要だ)」のポスターは、現在では最も多くの人々が目にしたポスターのひとつとして有名です。
▲このポスターが世に出たのは1916年6月、アメリカが第一次世界大戦に参戦したときである。まっすぐに指差した男が印象的なポスターを見て、多くの男たちが軍隊に志願するきっかけとなった。
1930年代以降、版と紙が直接触れないオフセット印刷の改良により高品質なポスターがさらに安く大量に印刷出来るようになり、また写真を使用したポスターが刷られるようになると映画などの宣伝広告業の発展と相まって、ポスター全盛時代に至ります。
▲写真を使用した多色刷りのポスター『The Grapes of Wrath』(1940)
さらに1950~60年代になると、芸術の分野ではポップアート、音楽の分野ではポップス、ジャズ、ロックミュージックなどの流行により色とりどりのポスターが印刷され、一種の美術的価値を持つものもありました。
出典:Flickr
▲1960年代に製作された音楽アーティストたちのカラフルなポスター
現代では、旧来からのポスターに変わる新たな広告媒体として大型モニターに無線で静止画データーを送って映し出す「デジタルポスター」が駅の構内や街中で運用されています。
紙媒体のポスターと比較して時間帯や曜日などによって自由に表示の変更が可能で、紙やインクを使用して印刷を行わないことや、貼ったり剥がしたりする手間がかからない点で非常に優れていて、広く普及しています。
出典:再都市化
▲駅構内で用いられているデジタルポスター。ネットワーク対応となっており、デジタル通信で表示内容をいつでも変更可能。
写真とは?
写真とは、光学的な映像や、放射線、粒子線の痕跡(こんせき)を目に見える画像として固定する技術の総称で、またそれによって得られた画像のことを指します。
その原理は、カメラの外にある物体や風景の像を、レンズを通してカメラ本体という暗い箱の中にあるフィルムの上に焼き付ける、というシンプルなものです。
出典:光と色と
▲カメラは物体からやってきた光をレンズで集光し、フィルム上に逆さまの像をつくる。このとき、「絞り」によってカメラに入る光の量を調整することができる。
写真の歴史
光を平面に投影するという写真の原理は、16世紀ごろに立体の風景を平面に投影するためのデッサンの補助具として、すでに利用されていました。
▲写真の原理を利用したデッサンとは、部屋と同じくらいの大きな箱を用意し、外の光景の光が小さな穴を通って穴と反対側の壁に逆さまに像が映り、画家がこの暗い箱の中に入って壁に紙を貼って像を描き写すというものだった。この箱は「カメラ・オブスクラ」と呼ばれた。
カメラ・オブスクラの平面に投影した映像を画像として定着させる写真技術の発明は、まずフランス人発明家のニセフォール・ニエプスによって1820年代に実現されました。
▲1822年にニエプスによって撮影された『用意された食卓』
しかしニエプスの写真技術は8−20時間とあまりにも長く撮影時間がかかるため(露出時間が長い)、建物や静物など動かないものしか写すことができず実用的なものではありませんでした。
ニセプスの死後、彼の息子と共に写真技術の研究をニセプスから引き継いだのがルイ・ジャック・マンデ・ダゲールです。
出典:Britannica
▲フランスの画家であり写真家のダゲールは写真技術の発明者として有名だが、ニエプスの息子はダゲールの成果は全て父の成果を受け継いだだけだと主張している。
彼は1839年、世界で初めて実用的な写真技術『ダゲレオタイプ』を発明し、露光時間を10−20分、最終的には1−2分にまで抑えることに成功しています。
▲1840年、ドイツのバイエルンで撮影された集合写真。ダゲレオタイプの発明により撮影時間が短くなったため、人物の撮影も可能になった。この撮影技術は江戸時代後期の日本にも持ち込まれた。(ちなみに前列左の女性は音楽家モーツァルトの妻コンスタンツェと言われている)
このダゲレオタイプが発明された時代は産業革命真っ只中で、肖像画を描いて欲しいというお金持ちがたくさんいました。
しかし油彩画や銅版画で1枚1枚製作していたのでは需要に対する供給がまったく追いつかなくなっていたため、撮影時間の短い写真の需要はますます増加し、それが写真技術のさらなる発展にもつながったのです。
▲ダゲレオタイプカメラを使用した写真スタジオでの撮影風景(1893年ごろ)
しかし当時はフィルムが大きかったので写真機本体も大きく、一般の人が持って歩いて写真を撮る、ということはできませんでした。
この事情を一変させたのがドイツによる小型カメラの開発で、35mm幅という小さなフィルムを使うことによってカメラ本体を小さくすることに成功しました。
1925年にドイツのメーカーから発売された小型カメラ『ライカ』は、持ち運び可能なこと、フィルム交換のしやすさなどから大ヒットとなり、報道写真やスナップ写真が世界中で撮られるようになったのです。
出典:デジカメWatch
▲1923年に開発されたライカの試作期は、2018年のオーストリアのカメラオークションでカメラとして世界最高額となる240万ユーロ(およそ3億1,500万円)で落札された。
1980年代には写真画像を電気信号として記録するカメラが登場し、1990年代にはデジタルカメラとして急速に普及、21世紀に入ると携帯電話にカメラが搭載され、SNSの広がりと共に「写真を撮る」という行為が極めて日常的な行為となりました。
オリジナルプリント
オリジナルプリントとは、写真家がみずから現像してサインを入れたプリントのことで希少価値が高いものとされています。
ただし近年では写真家と現像する人がばらばらのこともあるので、その場合は写真家が自分の写真だと認めてサインを入れたものであればオリジナルプリントに含まれます。
▲作品にはサインと同時に「エディションナンバー」が入れられることもある。エディションとは限定部数のことで、上の場合は50枚しか現像しない作品の4枚目という意味。限定部数が少ないほど作品の価値は高くなる。
欧米では1970年代から版画同様の美術品としてオリジナルプリントの人気が高まり、日本でも1980年代から美術館による収集が進められ、コレクションの対象としてオークションなどへの出品も盛んになりました。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
▼次回、インテリアアート最終章「工芸」はこちらから▼