どうも、しけたむです。
この記事では
- 「ナポレオンが活躍した時代の家具に興味がある。」
- 「ビーダーマイヤー様式なんて言葉は初めて聞いたよ。」
という方々に向けて、
19世紀の様式、アンピール様式とビーダーマイヤー様式の特徴を分かりやすく画像でご紹介していきます。
アンピール様式(帝政様式)とは
出典:MUSEY
▲フランスの画家ドラクロワが1830年に描いた『民衆を導く自由(の女神)』
アンピール(エンパイア)様式は「帝政(ていせい)様式」とも呼ばれ、19世紀初頭のナポレオン1世の帝政期以降、フランスを中心にヨーロッパで流行した建築・家具・装飾などの様式です。
ネオクラシズム(新古典主義)の流れを汲みながら、「古代エジプト」のデザインを取り入れ、「アンピール(エンパイア)」という名前のとおり、帝国の威信を表現するような直線的で力強くシンメトリックなデザインに、豪華で重厚な装飾を加味した意匠が特徴的です。
出典:DAKIK HABER
▲アンピール様式は深紅のビロードや金色の装飾などで飾られ、ロココやバロックの豪華さと比べるとかなり力強く重厚感のある様式。
▲フランスにある『オテル・ボーハルナイ』は、18世紀に建設され19世紀にアンピール様式に改装された。よく見るとエジプトチックな装飾が特徴的なインテリア。
古代エジプトのデザインが注目されたのは、ナポレオンがエジプトへの戦争による遠征の際に、古代エジプトの考古学的遺産を発見したことによるもので、古代のデザイン様式が再び注目され、流行しました。
出典:日経ビジネス電子版
▲エジプトに遠征したナポレオンは、古代エジプトの栄光をフランス帝国の威信を誇示するために利用しようと考えた。当時、スフィンクスはまだ半分以上砂の下に埋まっていた『スフィンクスの前のナポレオン』(1867年)
▼ナポレオンによって発見されるまで世界に知られていなかった古代エジプト文明はこちらから▼
アンピール様式のインテリア
出典:Pancada
▲フランスのパリ西部にある『マルメゾン城』の一室。ナポレオン1世の元妻であるジョゼフィーヌが住んでいた。
アンピール様式の宮殿内は直線構成とシンメトリーでまとめられ、ナポレオンのイニシャルであるN文字が刺繍された家具や装飾が流行しました。
他に流行したモチーフとしては、
ライオン、スフィンクス、白鳥、月桂樹、女神、戦士、ロータス(蓮の花)
などのエジプトチックで、古代ギリシャや古代ローマで流行したモチーフも人気を博しました。
出典:Etons of Bath
▲N文字とスフィンクスがモチーフのチェア。アームレストがちょっと使いにくそう。
出典:Atelier Allot
▲白鳥がモチーフのチェア。金色ドットが素敵なアクセントに。
出典:catawiki
▲月桂樹と下部には蓮の花がデザインされたペアの壺。取手の生物はぱっと見では何か分からない。
また、古代ローマを手本とした重厚感のある家具にはマホガニーやローズウッドなどの堅木で赤茶色系の木材が使用されました。
出典:Galerie Atena
▲トロフィー、月桂樹の冠、白鳥で構成された装飾と、各コーナーには帝政様式の典型的モチーフであるワシが飾られている。脚にはライオンのカブリオールレッグという豪華絢爛さ。
▲どんな場所においても大きな存在感を放つ帝政様式ベッド。インテリアコーディネートで使用するにはやや難易度高め。
アンピール様式のインテリアでは深紅のビロード(ベルベットのような織物)や金色の装飾などが好まれ、室内装飾で用いられたモチーフは家具にも使用されました。
▲『マルメゾン城』のジョゼフィーヌの寝室。紅いベルベットのファブリックが印象的。
またナポレオンは、伝統工芸を支援していたため、ゴブラン織やリヨンの絹織物などの再生にも貢献しました。
出典:Gazette Drouot
▲帝政時代のゴブリン織『The Great Weaponry of the French Empire』(1808ー1811頃)
▼ゴブラン織はこちらの記事で紹介しています▼
エトワール凱旋門
パリのシャルル・ド・ゴール広場(旧称エトワール広場)中央に位置するエトワール凱旋門(がいせんもん)は、アンピール様式の代表的な建築物です。
ナポレオン1世が戦勝記念として建設を命じたもので、1836年に完成しました。
エトワール凱旋門を建設する際には古代ローマの凱旋門が参考にされ、古典様式を規範としたデザインとなっています。
▲大きなアーチが印象的な凱旋門は、新古典主義の代表的建築のひとつ。
▼フランスが参考にした古代ローマの凱旋門はこちら▼
ビーダーマイヤー様式
出典:NEST CASA
ビーダーマイヤー様式(Biedermeier)とは、19世紀前半のドイツやオーストリアを中心に
「もっと身近で日常的なものに目を向けよう!」
という考えから生まれた、一般市民向けの実用的な家具、絵画、文化のスタイルです。
ビーダーマイヤー様式の家具の特徴は、アンピール様式で使用されていたマホガニー材などの高級材は使用せず、手ごろな価格の地元で入手可能な材料を使用して作られていることです。
アッシュ材(タモ材)などの安価な木材に染色して、「マホガニー材などの高価な木材の風合いに似せる」という工夫をおこなっていました。
出典:STYLISH
▲ドイツで製作されたビーダーマイヤー様式のソファ(1820〜1830年)
出典:STYLISH
▲オーストリアのウィーンで製作されたビーダーマイヤー様式のライティングデスク(1825年)
出典:1stDIBS
▲オーストリアで製作されたウォルナットを使用したアームチェア(19世紀頃)
家具製作に木工機械が利用されることにより大量生産が可能になり、デザインには現代と同じような実用性に優れたモダンな造形が見られるようになりました。
ビーダーマイヤーの語源は、ドイツの当時の小説に登場する架空の教員
『ビーダーマイヤー』というキャラクターに由来すると言われています。
小説中のビーダーマイヤーは、家庭の団欒や身の回りの食器や家具などに関心を向け、簡素で素材が心地よいものを好みました。
そこから転じて、当時の建築や工芸を『ビーダーマイヤー様式』と呼ぶようになったと言われています。
ビーダーマイヤー様式というのは日本ではあまり注目されていませんが、後に誕生するドイツの国立美術学校『バウハウス』にも大きな影響を与えたとも考えられています。
▼バウハウスについてはこちらの記事で詳しく解説▼
ビーダーマイヤー様式は貴族ではなく市民のためのものなので、過度な装飾を省いた機能的でシンプルなデザインです。
中流階級の人々が、親しい人と心地良い時間を過ごす空間としてのインテリアと言えます。
出典:Hisour
▲ベルリンのビーダーマイヤー様式の部屋の絵。敷き込まれたカーペット、機能的な家具、古典的な彫刻が描かれている。レオポルト・ツィールケ(1825年頃)
▲ウィーンの画家『ニコラス・モロー』による、ビーダーマイヤー様式の家具が描かれた油絵(1830年)
出典:History of Art
▲ドイツの画家『ゲオルク・フリードリッヒ・カースティング』によるビーターマイヤー様式の部屋が描かれた油絵(1840年頃)
ナンタルカのまとめ
■アンピール様式とは
アンピール(エンパイア)様式は(①)とも呼ばれ、19世紀初頭の(②)の帝政期以降、フランスを中心にヨーロッパで流行した建築・家具・装飾などの様式である。ネオクラシズム(新古典主義)の流れを汲みながら、考古学的遺産が発見された(③)のデザインを取り入れ、帝国の威信を表現するような直線的で力強くシンメトリックなデザインに、豪華で重厚な装飾を加味した意匠が特徴的。
■アンピール様式のインテリア
アンピール様式の宮殿内は直線構成とシンメトリーでまとめられ、(①)の文字が刺繍された家具や装飾が流行し、エジプトチックで古代ギリシャや古代ローマで流行したモチーフも人気を博した。重厚感のある家具には(②)やローズウッドなどの堅木で赤茶色系の木材が使用された。また、ナポレオンは伝統工芸を支援していたため、(③)やリヨンの絹織物などの再生にも貢献した。
■アンピール様式の建築
パリのシャルル・ド・ゴール広場中央に位置する(①)はアンピール様式の代表的な建築物で、ナポレオン1世が戦勝記念として1836年に完成した。古代ローマの凱旋門が参考にされ、古典様式を規範としたデザインとなっている。
■ビーダーマイヤー様式とは
ビーダーマイヤー様式とは、19世紀前半のドイツやオーストリアで生まれた一般市民向けの実用的な家具、絵画、文化のスタイルで、家具製作に木工機械が利用されることにより(①)が可能になり、デザインには現代と同じような実用性に優れたモダンな造形が見られるようになった。後の(①)にも大きな影響を与えた。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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▼次回後編、イギリスのインテリア様式はこちら!▼