こんにちは、しけたむです。
この記事では
- 「アール・デコの代表的な建築物について知りたい。」
- 「アール・ヌーヴォー様式との違いもはっきり理解したい。」
・・・と、お考えの皆様に向けて、
アール・デコの特徴や代表的建築物について、分かりやすく画像で解説します。
アール・デコとは?
出典:Vectorstock
▲アール・デコのデザインパターンは古代エジプトや中国の東洋美術、バウハウスなど古今東西から影響を受けている。
アール・デコは、19世期末にヨーロッパで流行した芸術運動であるアール・ヌーヴォー(ヌーボー)とは対照的に「簡潔さと合理性を目指したデザイン様式」で、円や多角形、放射線の連続した組み合わせなどの幾何学模様(きかがくもよう)や、シンメトリーでパターン化された模様が特徴です。
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一時衰退していたアール・ヌーボーなどの装飾的なスタイルがゼツェッションなどの影響を受けて工業デザインと結びついて復活したもので、1925年にパリで開催された『現代産業装飾芸術国際博覧会(いわゆる、パリ万国博覧会)』で花開きました。
▲パヴィリオンが立ち並ぶパリ万国博覧会の会場風景
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この博覧会は「アール・デコ博」という略称で呼ばれていたため、「アール・デコ(Art Déco)」という様式の名称で一般的に広まりました。
1925年開催の博覧会であったことから、アール・デコは「1925年様式」とも呼ばれます。
出典:Old japan
▲ちなみに日本もパリ万博に初出展し、日本家屋をパリで再現した。徳川慶喜の弟である徳川昭武(あきたけ)が見学のために訪れていて、幕府が出展した養蚕・漆器・工芸品・和紙に対し第一等であるグランプリが贈られた。
アール・デコの特徴
出典:Rogrinove
植物をモチーフとした流線のデザインで構成された「アール・ヌーボー」に対して、「アール・デコ」は、定規で引いたような直線(一点から発する放射線)、コンパスで描いたような円や円弧、それらの連続模様である波模様、稲妻模様、三角形などの多角形模様がモチーフとなる「幾何学模様(きかがくもよう)」に特徴があります。
出典:Widewalls
▲さまざまなアール・デコの幾何学的なパターン
アール・ヌーボーのインテリア例
出典:The habitat
出典:You pic
▲アール・ヌーボーのインテリアは流線的で植物をモチーフにしているものが多く、木の素材感を生かした有機的なデザインとなっているのが特徴的
アール・デコのインテリア例
出典:OLS
出典:Te esse
▲アール・デコのインテリアは直線を生かした幾何学模様がアクセントとなっていて、無機質で落ち着いた雰囲気のデザインが多い。
さらにアール・ヌーボー、アール・デコそれぞれの様式の特徴を現した文字の書体がいくつもデザインされ、当時流行した建築物、広告や書籍などの出版物に使用されました。
出典:DF
▲アール・ヌーボーで使用されていたイメージフォント。蛇の様な植物の様な流線型のデザイン。
出典:Identfont
▲アール・デコで使用されていたフォント。直線と円で構成された幾何学的なデザイン。
それぞれの様式が、とても対照的であることがお分かりになるかと思います。
アール・デコはもともとフランスで生まれたデザイン様式ですが、実はフランスではあまり大きな流行は見せず、大々的に花開いたのは独立から100年を経て超大国への道を歩み始めた新大陸、アメリカ合衆国においてであり、ニューヨークの超高層ビル「クライスラービル」や「エンパイアステートビル」にその特徴がよく現れています。
また、日本では旧朝香宮(あさかのみや)邸(現在の都立庭園美術館)などが有名ですので、のちほどご紹介いたします。
アール・デコの代表的建築
クライスラー・ビルディング
▲1930年の完成当時は世界一の高さを誇る建築物だったクライスラー・ビル(319メートル)
クライスラー・ビルディングはアメリカのニューヨーク市マンハッタンにある超高層ビルで、1928年に着工して1930年に完成しました。
当時、ニューヨーク市内では高さ世界一を狙う超高層ビルの建設競争の真っただ中で、クライスラー・ビルディングはウォール街にある『ウォールタワー』と世界一の高さを競いあい、猛烈な勢いで建設が進められていました。
クライスラー・ビルディングの当初の計画では「246メートル」の高さとなる予定でしたが、ウォールタワーが「260メートル」の高さで建築を進めていることが分かると、クライスラー・ビルディングは建設途中にも関わらずさらに高くなるよう急遽設計変更が行われ、「282メートル」という高さに変更されたのです。
そんな設計変更がお互いのビルで繰り返された結果、最終的には「319メートル」の高さでクライスラー・ビルディングが世界一の高さを誇るビルとなりました。
▲幾何学的なアール・デコの装飾が施された頂部。展望台があるが、現在は利用不可。
ビルの内外にはさまざまなアール・デコの装飾が施されていて、もともとは自動車メーカー『クライスラー』の本社ビル建設プロジェクトとして設計されたことから、各所の装飾は自動車をモチーフにしたものも見られます。
▲クライスラー・ビルのロビー。天井全体は壁画で覆われている。
▲シンメトリーで幾何学的な装飾が施されたエレベーター
クライスラー・ビルはアメリカ合衆国のシンボル的存在で、アール・デコ建築の古典的代表作とみなされています。
エンパイア・ステート・ビルディング
▲世界で最も壮大なアールデコ様式の摩天楼。地上102階建て、頂上までの高さ443メートル。
エンパイア・ステート・ビルディングはアメリカ合衆国のニューヨーク市マンハッタンにそびえ立つ超高層ビルです。
クライスラー・ビルディングから「世界一高いビル」の称号を奪うために1929年に着工、1931年に竣工するという急ピッチで建設が行われ、結果として「443メートル」という高さで当時世界高いビルの称号を手に入れました。
ちなみにエンパイア・ステートという名称は日本語で「帝国州」で、ニューヨーク州のことを意味しています。
▲特徴的なシンメトリーデザインの頂部。86階には屋外展望台がある。
エンパイア・ステート・ビルディングは世界一の高さを誇るビルでしたが、1972年にワールドトレードセンターが完成し、42年間守ってきた世界一を譲り渡しました。
その後、2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件によりワールドトレードセンターの崩壊による相手方の消滅という悲劇的な理由により、エンパイア・ステート・ビルディングが再び「ニューヨークで最も高いビル」となります。
2013年には、ワールドトレードセンター跡地に建てられた『1(ワン)ワールドトレードセンター』がアンテナを含めた最長部の高さが「541.3メートル」とエンパイアステートビルディングを上回り、ニューヨークで最も高いビルの座は再び入れ替わりました。
出典:AECOM
▲ニューヨークで最も高いビル『ワン・ワールド・トレード・センター』は、アメリカ独立の年にちなみ1,776フィート(約541m)となっている。ちなみに世界一高いビルは、アラブ首長国連邦のドバイの『ブルジュ・ハリファ』で約828m。
エンパイア・ステート・ビルディングの建設から100年近くが経つと、照明からガラス製品、大理石の内装に至るまで、このビルの主要な設計要素が劣化し始め、損失の危機に直面しました。
近年、修復作業が進み損傷した大理石やガラスは撤去され、新たな部材へ交換されました。
こうした取り組みのおかげで、今日のエンパイア・ステート・ビルディングは当時のままの美しい姿を保っています。
出典:Ohlhausen Dubois Architects
▲修復作業が進み、新たな大理石へと交換されたエンパイア・ステート・ビルのロビー
旧朝香宮邸(きゅうあさかのみやてい)
出典:Wikipedia
▲内装設計をフランス人のアンリ・ラパンが担当した『旧朝香宮邸』は、鉄筋コンクリート造で1933年に完成。外観はモダンでシンプルだが、内部はガラスのレリーフや照明器具、壁画、彫刻などがアール・デコ様式で装飾され見どころが多い。
旧朝香宮邸(きゅうあさかのみやてい)とは、昭和天皇の皇后様の叔父である鳩彦王(やすひこおう)が1922年からのフランス留学からの帰国後、1947年の皇室離脱まで暮らしたアール・デコ様式の邸宅で、1929年頃から建築準備に取り掛かり1933年に完成しました。
1922年、軍事研究のためフランスに留学された鳩彦王でしたが、パリでの自動車事故により、看病のために渡欧した鳩彦王の妃である允子内親王(のぶこないしんのう)とともに1925年までフランスで療養しながら長期滞在することとなりました。
出典:gooブログ
▲1923年鳩彦王は先に渡欧していた北白川宮夫妻に誘われドライブに出かけた。お付きの運転手から北白川宮成久王に運転が代わり、アカシアの並木道で車を追い抜こうとした際に路傍にあったアカシアの大木に激突した。車は時速100kmを超える猛スピードが出ていたという。
そうした中、夫妻は1925年のパリ万国装飾美術博覧会(通称アール・デコ博)を見学し、アール・デコの作品に接して大きな感銘を受けたのでした。
このことが帰国後に夫妻が『アール・デコの館』と称される旧朝香宮邸を建てるきっかけとなったという訳です。
▲旧朝香宮邸正面玄関。正面のガラス扉はルネ・ラリックによる作品。床は大理石のモザイク貼り。
出典:Savvy Tokyo
▲旧朝香宮邸の大食堂。天井の照明はフランスのガラス工芸家ルネ・ラリックによる作品『パイナップルとザクロ』
出典:Savvy Tokyo
▲大広間の壁材にはウォルナットを使用。内装設計はフランス人デザイナーアンリ・ラパンが担当。
旧朝香宮邸では、壁面のデザイン、照明器具、扉を装飾するエッチング・ガラス、ラジエーターのグリルなど、至るところにアール・デコのデザインが見られます。
現在は美術館として使われていますが内部の改装はわずかで、当時のアール・デコ様式を正確に留める貴重な歴史的建造物として国の重要文化財に指定されています。
ナンタルカのまとめ
■アール・デコ
アール・デコは、19世期末にヨーロッパで流行した芸術運動である(①)とは対照的に、簡潔さと合理性を目指したデザイン様式で、シンメトリーで(②)な線とパターン化された模様が特徴である。衰退していた(①)などの装飾的なスタイルがゼツェッションなどの影響を受け、工業デザインと結びついて復活したもので、1925年にパリで開催された『現代産業装飾芸術国際博覧会(いわゆる、パリ万国博覧会)』で花開き、(③)様式とも呼ばれた。
■アール・デコの代表的な建築
アール・デコの代表的な建築物には、アメリカのニューヨーク市マンハッタンにある高さ319メートルの超高層ビルで、1928年に着工して1930年に完成した(①)や、翌年、同じマンハッタンで443メートルと言う高さで完成した(②)があり、どちらもニューヨークの摩天楼のシンボルとなっている。
■日本のアール・デコ
日本での代表的なアール・デコの建築物は、昭和天皇の皇后様の叔父である鳩彦王が1922年からのフランス留学からの帰国後、1947年の皇室離脱まで暮らした(①)があり、国の重要文化財に指定されている。
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