どうも、しけたむです。
この記事では
- 「在宅ワークで使うために高機能オフィスチェアでも買いたいな。」
- 「ポストモダンの全盛期ってハデハデな家具しかなかったの?」
という皆様に向けて、
高機能オフィスチェア「アーロンチェア」や、20世紀後半に活躍したデザイナーを画像で解説します。
ポストモダン前後で活躍した家具デザイナー
ドン・チャドウィック(&ビル・スタンフ)
▲VDT (Visual Display Terminals)作業用椅子の傑作『アーロンチェア』をデザインしたドン・チャドウィック(左)とハーマンミラー社のビル・スタンフ(右)
ドン・チャドウィック(1936年 -)とは、オフィスチェアを専門とするアメリカの工業デザイナーです。
1936年にカリフォルニア州ロサンゼルスに生まれ、祖父が家具職人であった為家具作りに興味を持ち、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でデザインを学びました。
卒業後は、郊外型大規模ショッピングセンターの生みの親として有名なオーストリア出身の建築家「ビクター・グルーエン」のもとで働き、1964年、28歳で個人事務所を設立します。
▲今では当たり前の郊外型大型ショッピングセンターは、ビクター・グルーエンによって世界ではじめて設計された。アメリカ・ミネソタ州の『サウスデール・ショッピングセンター』(1956年)
ビクター・グルーエンの元を去って独立したドン・チャドウィックは、展示会などへの出展活動を行なっている中で、1972年にハーマンミラー社と接触し、1974年に『モジュラーシーティング』を発表します。
出典:HermanMillar
▲『モジュラーシーティング』は5種類の大きさの決まった椅子を並べ替えることによって様々な使い方を可能にしたオフィスチェア。掃除が簡単で電気コンセント穴も用意されていて置く場所に困らない。
モジュラーシーティングは、モジュラーシステムならではの利点が詰まっていて、5種類の椅子のかたちから多様なバリエーションを作ることができるチェアです。
1974年にデザインされましたが、その後現代に合う座面の高さと電気を供給する機能を追加し、現在でも最も多用途に使える不朽のラウンジファニチャーのひとつとなっています。
モジュラーシーティングの発表から10年後、1984年にはハーマンミラー社のデザイナーであり人間工学の研究家「ビル・スタンフ」と共同でワークチェア『エクアチェア 』が発表されました。
▲キングオブオフィスチェア『アーロンチェア』の前身となった『エクアチェア』はドン・チャドウィックとビル・スタンフの協力により誕生した。(上の写真は『エクア2チェア』)
アーロンチェア
出典:HermanMiller
アーロンチェアとはドン・チャドウィックとビル・スタンフがタッグを組んでデザインされ、ハーマンミラー社から1994年に発表されたオフィスチェアです。
世界で初めてシートにメッシュが採用されていて、それにより通気性が高く、体重分散により腰にかかる負担を極限まで軽減しています。
出典:HermanMiller
▲ワークチェアの研究開発をしている際に老人ホームを訪問したチャドウィックは、長時間寝ている姿勢をとり続けることによる「床ずれ」で悩む入居者を目の当たりにした。メッシュ素材を採用することにより、長い時間座っていても接触しつづけた身体を痛める問題を軽減することに成功した。
また、座る人ひとりひとりの体型や使うシーンに合わせて高さや角度などが細かく調整できるという高機能性がアーロンチェアの特徴で、シートの高さはもちろん、リクライニングの硬さ、角度、範囲、アームの高さや角度など、細かな調節が可能です。
出典:名作家具とデザインの話
▲アーロンチェアは進化を続け、2001年に骨盤部位を支える機能を搭載した「アーロンチェアクラシック」が、2016年には「アーロンチェアリマスタード」と呼ばれる一からパーツを設計し直した完全新作が発売された。
ビル・スタンフとドン・チャドウィックが開発したアーロンチェアは、その後急速にオフィス家具業界に普及し、またシートに使用されている「ペリクル」と名付けられた独自の通気性のあるメッシュ素材のおかげで、人間工学と素材革新の両方で先駆的な存在であることが証明されました。
出典:Kagg
▲ドン・チャドウィックとアーロンチェア。使う場所に合わせて色も選べる。
アーロンチェアはすぐに高機能ワークチェアのニュースタンダードになり、ニューヨーク近代美術館 (MoMA) に常設展示されています。
ロン・アラッド
ロン・アラッド(1951年 – )はイスラエルの芸術家であり、デザイナーです。
イスラエルのテルアビブでユダヤ人の家族に生まれたロン・アラッドは、20歳からエルサレムのベザレル芸術デザインアカデミーで学び、23歳からロンドンの建築学校「AAスクール」で学びました。
出典:calcarist
▲テルアビブで16歳のロン・アラッドと母親のエスターペレツ・アラッドと。芸術に興味を持ったのは母親の職業が画家であったため。(1967年頃)
30歳になったロン・アラッドは自身のデザインスタジオ「One Off」を設立し、その2年後の1983年には自動車メーカー「ローバー」のシートと鉄パイプで作られた椅子「ROVER CHAIR (ローバーチェア)」によって華々しいデビューを飾りました。
出典:Artsy
▲廃車のシートを再利用してデザインされた「ローバーチェア」(1983年)はロン・アラッドが初めてデザインした椅子。ニューヨーク近代美術館(MoMA)にも展示されている。
1989年には、デザイン・建築設計事務所「Ron Arad Associates,Ltd.」を設立して、自身のデザイン事務所である「One Off」を統合、スイスの家具メーカー「Vitra(ヴィトラ)」、イタリアの家具メーカー「Moroso (モローゾ)」など世界の一流家具メーカーへのデザイン提供を本格化させました。
▲1991年に「MOROSO (モローゾ)」から発表した『ビッグイージー』は、ステンレススチールを溶接して作りあげた椅子でモダン家具デザインのアイコン的作品。現在では素材はポリウレタン樹脂に変更されて屋外でも使用が可能になった。
近年の国際家具展示会「ミラノ・サローネ」では特に注目を浴びていて、1997年に出展した「Tom Vac (トム・ヴァック)」は大きな注目を集め、ロン・アラッドの傑作として有名です。
トム・ヴァック
出典:daZeen
トム・ヴァックはイタリアの建築雑誌「ドムス」の依頼を受けて制作し、1997年にミラノ・サローネで発表した座面と背もたれが一体型のスタッキングチェアです。
ミラノ・サローネではじめてお披露目となったトム・ヴァックは、椅子として見せるというよりも、「ドムス」掲載用の芸術作品として、ミラノの広場にこのトム・ヴァックを67脚積み重ねてトーテムポールのようにして展示されていました。
出典:daZeen
▲ミラノの広場で67脚積み上げられてライトアップされた「トム・ヴァック」(1997年)
当時はアルミニウム製でバキューム製法による一体成形で作られていました。
波打った表面形状はシェル構造をさらに強くするためのものです。
出典:daZeen
▲量産化が難しく、わずか500脚のみしか作られなかった。現在は「Vitra」社にて生産されている。
その後、アルミニウムで出来ていたチェアをポリプロピレン樹脂に素材を変更した上でサイズを少しだけ小さく調整してVitraから発表された事によって、これまで「ビッグ・イージー」のような金属を使った芸術家という印象から、インダストリアルデザイナーとしての地位を確立しました。
出典:daZeen
▲ポリプロピレン樹脂で作られたトム・ヴァックは、最大5脚までのスタッキングが可能。
▼ポリプロピレンてどんな樹脂?て方はこちらから▼
ナンタルカのまとめ
■ドン・チャドウィックとビル・スタンフ
ドン・チャドウィックはオフィスチェアを専門とするアメリカの工業デザイナーで、1972年にハーマンミラーと接触すると、1974年に5種類の椅子を並べ替えることにより多様なバリエーションを作ることができる(①)、1994年にはビル・スタンフとタッグを組んで開発した(②)などの歴史に名を刻むオフィス家具をハーマンミラーから発表した。
■ロン・アラッド
ロン・アラッドはイスラエルの芸術家・デザイナーで、1989年に自身の事務所を設立すると「Vitra」や「Moroso」などの世界の一流家具メーカーへデザイン提供をした。代表作には、1997年にミラノ・サローネで発表した座面と背もたれが一体型のスタッキングチェア(①)があり、当初アルミニウム素材だったが、(②)に変更してVitraから販売された。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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では、次回もお楽しみに。
▼次回、新章突入!人間工学はこちらから▼