どうも、しけたむです!
この記事では
- 「コーポラティブハウスとコレクティブハウス?違いなんて分かりませんよ。」
- 「フロンテージセーブとフロンテージワイドってなに?」
とお考えの皆様に向けて、集合住宅に関わる用語について画像で解説します。
▼前回記事【住宅の計画①】はこちらから!▼
集合住宅の設計手法
フロンテージセービング
集合住宅において、間口(まぐち)が狭い住戸を「フロンテージセーブ型(フロンテージセービング)」、間口が広い住戸を「フロンテージワイド型」と呼びます。
間口の狭い住戸:フロンテージセーブ型(フロンテージセービング)
間口の広い住戸:フロンテージワイド型
集合住宅における間口とは「住戸のバルコニー側の横の長さのこと」を指していて、英語では「Frontage(フロンテージ)」と言います。
出典:アルファジャーナル
▲一般的によく見かける「フロンテージセーブ型」の間取り。この場合、間口は6.2mとなる。
出典:アルファジャーナル
▲広くて気持ちの良い「フロンテージワイド型」の集合住宅。間口は7〜8m以上。
間口の狭いフロンテージセーブ型のメリットは、縦型の間取りとなっているので外から覗かれにくくプライバシーを確保しやすいこと、デメリットはバルコニー側以外の部屋が薄暗くなってしまうことと風通しが悪いことが挙げられます。
出典:TAIKOH
▲フロンテージセーブ型は各住戸の間口を狭くすることで、1つの建物に多くの世帯を入居させることができる。間口が狭い故に、奥はどうしても薄暗くなりがち。
間口が広いフロンテージワイド型のメリットは、各部屋に明るさを届けやすい、風通しが良く換気もしやすいということが挙げられますが、近くの建物から覗かれやすい、真夏日などはカーテンを閉めないと暑くなりすぎるというデメリットもあるので注意が必要です。
また、間口の広いバルコニーを持つフロンテージワイド型の住戸は、一般的にはフロンテージセーブ型の住戸に比べて面積が広くなるため、1戸あたりの価格は高額になります。
出典:三菱地所レジデンス
▲フロンテージワイド型の住戸は間口が広くなるため、一般的には住戸の面積も広くなる。1つの建物に多くの住戸を設ける場合にはタワーマンションのような大型の建築物となる。
その点、フロンテージセーブ型は各住戸の間口を狭くすることで同条件の住戸を数多く取れるという経済的なプランなので、集合住宅の主流は圧倒的にフロンテージセーブ型です。
コアプラン
コア(Core)とは「芯、中心部分」を意味する英語で、建築物では「階段やエレベーター、トイレなどの主要な設備を集めた部分のこと」を指します。
住宅ではキッチン、浴室、トイレなどの水回り設備を集めたコアを特に「水回りコア」といいます。
コアプランとは「1カ所にまとめたコアを独立させて配置することで、その他の空間の設計の自由度を高めるような平面計画のこと」です。
出典:奥沢文庫
▲マンション住戸のコアプランによる改装計画の例。中央に水回りコアを配置することにより、空間が縦に抜ける気持ちの良い空間に。また、黄色い部分に収納や寝室空間を新たに設けることができた。
上記のマンションの住戸のように、中央にコアを配置するコアプランを「センターコア」といいます。
コアプランはコアの配置される位置により、以下のような4種に大別されます。
出典:たてものフロンティア
▲コアプランは、大きく分けて4つに大別される。ちなみに灰色の部分がコア。
「分散コア」は「ダブルコア」とも呼ばれ、大型のオフィスビルなどに用いられるコアプランです。上の図のように両端に分散しているコアプランは「両端コア」と呼ばれる場合もあります。
コアを「分散」して配置することで明るさや外気を取り入れやすくしていて、階段も分散している場合は災害時の避難経路も確保しやすいというメリットがありますが、コアが分散しているのでコアからコアへの移動が長く、メンテナンスなどを行う際はオフィススペースを通過しなくてはなりません。
出典:日経XTECH
▲一般的な「分散コア」は大型のオフィスビルなどに用いられる。コア部分に光や外気を取り入れやすく、また災害に際しての避難経路も確保しやすい反面、メンテナンスのための動線が事務室部分を通る必要がある。
「分離コア」もオフィスビルなどに用いられ、コアを廊下などを挟んで別の部屋へ「分離」してしまうコアプランです。
コア以外の空間の独立性を高めることができますが、動線が1カ所に集中しやすいためコア内の避難経路を分かりやすくしておく必要があります。
オスカーニーマイヤーのジードルンク。この建築は一層がカワイイ柱でピロティになっていて、エレベーターコアは本体から分離して三角形平面とこれまたカワイイ。それをブリッジで繋いでいる。めちゃくちゃ良い建築だった。ニーマイヤーの建築には常に喜びと快楽とユーモアが満ち満ちている。 pic.twitter.com/JDYjtYvirk
— 五十嵐淳 (@igarashijun) January 13, 2020
▲ブラジルの建築家オスカー・ニーマイヤーがドイツのベルリンに建てたジードルング(集合住宅という意味)はエレベーターコアが分離されたコアプランとなっている。
インランド・スチール・ビルディング。
模範解答のようなプラン(分離コア+アウトコラム+整形プレート)に、総ステンレスの強烈な外装が纏っている。
何が驚きって竣工1950年代。当時のSOMのフロントランナーっぷりを思い知らされたオフィス。 pic.twitter.com/l5yoa0gKUq
— かざまけん Ken Kzm (@kezama) April 7, 2020
▲アメリカ・シカゴに建てられた『インランド・スチール・ビルディング』(1957年)は、コアが別棟として分離している。
「片寄せコア」は「偏心(へんしん)コア」とも呼ばれる、片側にコアを寄せたコアプランで、住宅だけでなく店舗やオフィスにも用いられます。
空間全体の見通しがよく外部や上下階への移動も簡単でコミュニケーションもとりやすくなりますが、出入口が1カ所となるため2方向の避難が困難であるのと、高層ビルになると片側に建物の重心が偏るので、それを防ぐ構造計画が必要になります。
出典:スタログ
▲「片寄せコア(偏心コア)」は片側に重心(コア)が偏っている為、超高層ビルには向いていない。また避難経路も1カ所となるため、大規模な建物には使われない。
スケルトン・インフィル住宅(SI住宅)
出典:エスアイ200
スケルトン・インフィル住宅とは、建物の柱や梁、床などの構造躯体である「スケルトン」と、住戸内の内装や設備などの「インフィル」を分離した工法で造られた住宅です。
分譲マンション(※)などの集合住宅に多く採用され、「Skeleton Infill」の頭文字をとって「SI(エスアイ)住宅」と略されることもあります。
※分譲(ぶんじょう)マンションとは
マンションには大きく分けて「賃貸マンション」と「分譲マンション」がある。
賃貸マンションは、一般的にオーナーが所有しているマンションの住戸を1戸ごとに「貸すだけ」のマンション。
分譲マンションは、1戸ごとに「販売されている」マンションである。
1棟のマンション内で「40階以上は分譲、下の階は全て賃貸」というように、混合していることもある。
本来、鉄筋コンクリート造でつくられた建築物の構造躯体(スケルトン)の耐用年数は、床材や壁材、造り付け家具などの内装やキッチンなどの設備(インフィル)と比べて著しく長いものです。
しかしながら、旧来の日本の住宅ではスケルトンとインフィルを分けて考えることをしない場合が多く、「インフィルの耐用年数=スケルトンの耐用年数」というように内装や設備が老朽化したら建物を建て替えていたので、日本の建築の寿命は海外の建築と比べて短いものとなっていました。
スケルトンインフィルの基本概念は「スケルトンはそのままに、インフィルを何度でも容易に入れ替えられる建造物」というもので、近年では集合住宅を販売する際に「スケルトンの状態で販売され、居住者が購入した後に自由にインフィル部分をデザインし、内装工事完了後に入居する」という供給方式が増えてきました。
入居後の長い人生においてライフスタイルや家族構成の変化があったとしても間取りの変更が可能ですし、設備が古くなっても最新機種への交換もカンタン、子や孫の代へ引き継ぐことだって理論的には可能です。
出典:東進住建
▲内装工事をオーダーメイドで行うため初期費用は通常より掛かるが、古くなっても建物を壊さずにインフィルのみ交換すれば良いので、トータルで考えれば決して高額とはいえない。
建て替えによって建築物を取り壊す際には産業廃棄物が大量に発生し、ショベルカーなどの重機(じゅうき)を動かすためにも多くのエネルギーを消費します。
廃材の一部はリサイクルされますが、全部がリサイクル可能というわけではありませんので、地球環境に悪影響を与えてしまいます。
住宅を新築する際にも建築資材を大量に使用するため、限りある地球の資源がどんどん減っていってしまうのです。
これに対してスケルトンインフィル住宅なら建物自体は取り壊さずそのまま使用できるため、重機で使用するエネルギーも発生する廃材も最小限にとどめられるでしょう。
そのためスケルトンインフィル構造の住宅に住むだけで、地球環境保全に貢献できます。
出典:東進住建
▲スケルトンインフィル住宅は、環境問題改善に大きく貢献できるとされている。
▼地球温暖化とゴミ問題についてはこちらから▼
コーポラティブハウス
出典:アーキネット
▲グッドデザイン賞を受賞した東京都目黒区のコーポラティブハウス『緑ヶ丘コートハウス 』(2015)
コーポラティブハウスとは、集合住宅への入居希望者が集まって組合を結成し、その組合が事業主となって土地取得から設計者や建設業者の手配まで、建設行為の全てを行う集合住宅のことであり「コーポラティブ住宅」や「コープ住宅」とも呼ばれます。
ゼロから住まいづくりをするコーポラティブハウスは、組合員たちの協議により好みの建築家を選んで依頼できるため、組合員たちそれぞれの好みや希望を反映した間取りやデザインを実現することができるのが最大のメリットです。
出典:TOKOSIE
▲東京都小金井市にあるコーポラティブハウス『coniwa』
出典:ROOMIE
▲自由な間取りと内装はコーポラティブハウスの大きな特長のひとつ。(東京都文京区:N邸)
また価格面にもコーポラティブハウスならではの特色があり、分譲マンションの場合は販売会社の広告宣伝費や営業経費などが販売価格に上乗せされていますが、コーポラティブハウスではそのような上乗せが無く、原価だけでいえば分譲マンションの1割から2割ほど安く建てることができる場合が多いです。
さらにさらに、住まいづくりを進める過程で居住者相互の理解とコミュニケーションが促されて入居後の良好な近隣関係が築かれやすく、お互いが顔見知りという関係は安心感にもつながり、下見に来た泥棒などの不審者をいち早く察知できるため防犯上にも有効とされています。
出典:COPLUS
▲全ての入居者が顔見知りとなるコーポラティブハウスは安心感も大きい。
デメリットとしては、組合員たちの意見を盛り込んだ建築物となるので事業運営において組合の会合に参加したり、内装設計の打ち合わせを繰り返したりと、完成までに相当の時間と手間がかかることを覚悟しなければなりません。
「低予算」と「自由設計」というメリットばかりではなく、「実際につくる過程を楽しめるかどうか」という視点も、コーポラティブハウスを選ぶ上では大切になってくると言えます。
出典:ひまわりライフ
▲組合員たちの選んだ設計士からプランの説明を受ける。基本的に住まいへのこだわりの強い人々が集まっているので、何度もプランの打ち合わせを行いながら理想の住宅へ近づけていく。
また、密なふれあいやコミュニケーションを売りとしているコーポラティブハウスにおいて、万が一にでも居住者同士のトラブルが発生してしまったら大変です。
そもそも人間関係自体にメリットを感じない方は、その点を考慮する必要があるといえるでしょう。
コレクティブハウス
出典:WMRTokyo
コレクティブハウス(Collective House)とは共同住宅の形式の一つで、それぞれの世帯の住戸スペースではプライベートな生活を確保しつつ、共有スペースにおいては入居者同士が日常的に交流を図り、生活の一部を共有するものです。
共有スペースには、台所や食事室、洗濯室、子供の遊び場スペースなどがあり、高齢者や単身者はもちろん、子供をかかえる共働き夫婦などさまざまな世帯がそれぞれ自分たちの出せる労力や資力を持寄ることで個人の家事負担をうまく軽減し合い、豊かな人間関係と共同社会を築こうとしています。
出典:コレクティブハウジング社
▲東京都町田市にある『コレクティブハウス本町田』の間取り。各住戸とは別に、共有のキッチン、バス、洗濯室や多目的スペースが用意されている。
出典:スエヒロガリ
▲京都府のコレクティブハウス『coco camo(ココカモ)』は、玄関を出ると多目的に使える共用テラスがあり、エントランスホールも憩いの場となっている。
もともとは1925年から1935年に、スウェーデンの建築家「スヴェン・マルケリウス」によって計画された居住プロジェクトがコレクティブハウスの先駆けであり、後に仲間や親しい人々が共同で生活を行うライフスタイルとして、スウェーデン、デンマーク、オランダなどを中心に広まりました。
▲スウェーデンにある世界初のコレクティブハウス『ジョン・エリクソンガータン6』(1935年)
▲『ジョン・エリクソンガータン6』の共有スペースには台所や食事室、子供の遊び場スペースまで完備された先進的な集合住宅だった。
好き嫌いがはっきりと別れそうなコレクティブハウスですが、大きなメリットは「世代ごとの悩みを解消できる」ということです。
子育て世代であれば育児の悩みを相談できたり、子供を共有スペースで安全に遊ばせることができますし、高齢者世代であれば孤独感の解消や、体調が悪い時に頼ることが出来るなど、困ったときはお互い助け合うことが出来るため、暮らしの中で抱える悩みを感じにくくなります。
また全員が顔見知りであるため、泥棒目的の不審者がやってきても入居者でないことはすぐに分かりますし、誰かしらが居てくれればセキュリティ上の安心感もあります。
▲食堂に集まれば様々な世代から貴重な話を聞くことが出来たり、悩みの相談や孤独感の解消などメリットは多い。日本初のコレクティブハウス『コレクティブハウスかんかん森』(東京都荒川区)では週2〜3回ほど当番制による食事会が行われている。
デメリットは「家事などの役割分担が必要になる」ことです。
コレクティブハウスには複数世帯で共有するスペースがあるので、掃除や片付けはもちろん、炊事などの作業にも役割分担が求められることがあります。
また「人間関係のトラブル」が起こる可能性があるのもデメリットの一つです。
さまざまな人間が集まって生活していることもあり、感情のもつれや生き方の違いから人間関係が気まずくなるということもあり得ますので、入居には覚悟と入念な下調べが必要といえるかもしれません。
集合住宅の種類
出典:カウル
集合住宅には「アパート」や「マンション」が含まれますが、これらには明確な定義による分類がされているわけではありません。
集合住宅の分類を行う際は「共同住宅」と「長屋(連続住宅)」に分類されます。
共同住宅と長屋(連続住宅)
出典:リンクハウス
共同住宅(きょうどうじゅうたく)とは「独立した複数の住戸が、1棟の建物内に集まっている住宅」のことで、マンションやアパートは共同住宅に該当します。
また集合住宅全体に占める「共同住宅」の割合が「長屋(連続住宅)」と比べて圧倒的に多いので、共同住宅を指して「集合住宅」と呼ばれることもあります。
出典:ガベージニュース
▲もともと日本の住宅は一戸建てと長屋が中心であったが高度経済成長期から共同住宅が増え始め、21世期はますますその傾向が顕著になっている。(『総務省統計局:平成30年土地統計調査』)
長屋(ながや)とは「数戸の家が地面に接し、横に連なって建っている形式のもの」を指していて、長屋はさらに「テラスハウス」と「タウンハウス」に分けることができます。
出典:フォト蔵
▲長屋(ながや)とは日本の伝統的な集合住宅の一形態で、江戸や京阪の都市部では木造平屋建ての長屋が多く作られた。
テラスハウスとタウンハウス
出典:イクラ不動産
テラスハウスとは「土地(敷地)の所有権が住戸ごとに分かれている長屋」のことで、タウンハウスは「土地の所有権をマンションなどのように各住戸で共有している長屋」のことです。
テラスハウス:土地(敷地)の所有権が住戸ごとに分かれている長屋
タウンハウス:土地の所有権を各住戸で共有している長屋
タウンハウスはマンションと同様に管理組合が設けられ、共有スペースの維持管理、および管理運営が行われます。
一戸建ての利点と集合住宅の利点を兼ね備えているのが長屋(連続住宅)ですが、壁を隣家と共有していることから、騒音が響きやすいというデメリットがあります。
出典:カウル
▲テラスハウスは「建物がお隣りとつながっている一戸建て」のことで、1戸建てに住んでいるのと感覚はさほど変わらない。建築基準法では「長屋」に分類される。
出典:サンヴェルシア大平
▲福岡県北九州市にあるタウンハウス『サンヴェルシア大平』。タウンハウスとテラスハウスの違いは土地の権利の問題なので、建物をぱっと見でどちらか分かりにくい場合が多い。
ナンタルカのまとめ
■集合住宅の設計手法
(1)各住戸の間口を狭くすることで、同条件の住戸を数多く取れる経済的なプランを(①)という。反対に間口を広くした住戸は(②)といい、採光や通風に優れるがプライバシーの問題や暑くなりすぎるという問題もある。
(2)1カ所にまとめたコアを独立させて配置することで、その他の空間の設計の自由度を高めるような平面計画のことを(①)という。浴室やキッチンなどの水回り設備を集中させたコアを(②)といい、(②)を住宅の中央に配置したものを(③)という。
(3)建物の柱や梁、床などの構造躯体である(①)と、住戸内の内装や設備などの(②)を分離した工法で造られた住宅を(③)という。分譲マンションなどの集合住宅に多く採用されていて、頭文字をとって(④)と略されることがある。
(4)入居希望者が組合を結成し、共同出資により建てられる集合住宅を(①)といい、間取りなどに出資者の意見を盛り込むことが出来る。また居住者の各住戸とは別に、キッチンや洗濯室、子供の遊び場などで居住者同士が交流し、支え合う共同空間を備えた住宅を(②)という。
■集合住宅の種類
集合住宅を集合形式により分類すると、独立した複数の住戸が1棟の建物内に集まっている住宅である(①)と、数戸の家が地面に接し横に連なって建っている形式の(②)がある。(②)は、土地の所有権が住戸ごとに分かれている長屋である(③)と、土地の所有権をマンションと同じように各住戸で共有している長屋である(④)に分けられる。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
▼次回、住宅の計画③はこちらから▼