こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「木製家具の塗装にはどんな分類があるの?」
- 「テキストの文字だとイメージできないから画像で見せてほしい。」
という皆様に向けて、
木製家具の塗装の分類と基本工程について画像で解説します。
木製家具の表面仕上げ
普段私たちの身の回りにある家具を改めてよく見てみると、実に様々な木製家具があることに気がつきます。
それらにはたいてい表面に塗料(とりょう)による塗装(とそう)が施されていて
「木を切って何も塗らずにそのまま使ってます。」
という家具は意外にも少なく、何かしらの塗料が用いられているのが一般的です。
木製家具の表面に塗装を行うことは、表面の保護(傷や汚れから守る)という役割以外にも、美しさを長く保つ美観の保持(割れや反りをおこさせない)や、家具デザインの意匠(見た目を変化させる)のために適宜最適な塗料を選び、塗布されています。
◾️木製家具に塗装を行う意味
- 傷や汚れから守る(表面の保護)
- 割れや反りを発生させない(美観の保持)
- 色を付けたり濃くしたり、見た目を変化させる(家具デザインの意匠)
木材への塗装の種類には、木材に浸透する塗装(オイル塗装、ステイン、ソープフィニッシュなど)と、木材に浸透せず塗膜をつくる塗装である透明(クリヤー)塗装、と不透明(エナメル)塗装があります。
木の表面に塗膜を作る塗装は、木の表面を塗料によって完全に覆われるため傷や汚れに強い(塗膜でガードする)というメリットがある反面、木が本来持っている特有の手触りを味わえなくなるというデメリットもあり、さらに不透明塗装(エナメル塗装)を用いると木目が隠されてしまうので、美しい木目を楽しみたいという場合は避ける必要があります。
木材への塗装の種類
◾️木材に浸透する塗装
- オイル塗装(オイルフィニッシュ)
- ステイン
- ソープフィニッシュ など
◾️木材に浸透せず塗膜をつくる塗装
- 透明(クリヤー)塗装
- 不透明(エナメル)塗装
しかしオイル塗装をはじめとした木に浸透する塗料は、木の手触りをそのまま感じることが出来ますし、木目なども塗料によって隠されてしまうことはありません。
出典:大阪マルキン家具
▲表面に塗膜を作る透明(クリヤー)塗装であるウレタン塗装は、塗料が浸透するオイル塗装と比べると塗料による光沢があるのがわかる。塗料の厚みや塗り方によって光沢の強い「艶(つや)あり」と光沢の弱い「艶(つや)消し」などを調整することができる。
▼オイル塗装やウレタン塗装は次回記事でご紹介!▼
木製家具塗装の手順は?
木材塗装の一般的な手順は、以下のようになります。
①素地(そじ)調整
②目止(めど)め(着色目止め)
③下塗り
④中塗り
⑤補色
⑥上塗り
①素地調整
出典:鎌野商店
▲木材の表面に付着している手垢や汚れ、ささくれなどを研磨(けんま)して除去し、凸凹が無いようにする素地調整は必ず行う作業。
素地(そじ)調整とは、塗装に適した表面を作るため、研磨や汚れ落としを行う作業です。
サンダー(研磨機)とよばれる機械や、紙やすりという言葉でも馴染み深いサンドペーパーを用いて研磨が行われます。
出典:BOSCH
▲サンダー(研磨機)を使えば力をかけなくてもスピーディーに研磨を行うことができる。
②目止め(着色目止め)
目止(めど)めとは、木材の繊維や導管(どうかん)の空間を埋めて、塗面を平滑にするために行なわれる作業です。
さらに、木材への塗料の余分な吸収を防止するなどの重要な役割があります。
出典:ニシザキ工芸
▲木を顕微鏡で見てみると、導管(どうかん)と呼ばれる水を通すストロー状の管がびっしりと詰まっている。この道管を塞がないと塗料が導管の中に無駄に入ってしまい、大量の塗料を消費してしまう。
目止めには、砥の粉(とのこ)と呼ばれる超微細な岩石や砥石を切り出すときに生じる粉末を溶いたものや、サンディングシーラー(塗料の吸収を防ぎ、仕上げ塗料との密着をよくする透明の塗料)などが用いられます。
出典:旭川木工センター
▲石を細かい粉末状にした砥の粉は、原料によって「赤」「白」「黄」などの色がある。この微粒子レベルの細かな粉末が木材のわずかな隙間に入り込み、凹凸を埋める。
出典:Yahooショッピング
▲サンディングシーラーは液状のものとスプレー状のものが販売されている。
また着色目止めとは、目止め材に着色顔料を加えて木材の繊維・導管に充填し、周りより濃い色にして木目を強調することで立体感をつける手法です。
出典:(株)ニシザキ工芸
▲着色目止めが木材の繊維・導管に入り込むことにより、木目の美しさをよりはっきりと強調することができる。
③下塗り
下塗りとは、中塗りと上塗りの前に塗ることにより、それらの塗料がにじみ出るのを押さえたり着色が剥がれたりするのを防ぐ働きがあります。
また目止め材の剥がれを防ぐために、目止めの前に下塗りが行われることもあります。
出典:株式会社鎌野塗装
▲クリアー色の下塗りを1枚板の天板に塗布しているところ。濡れたような色になることから上記のような色を「濡れ色」と呼ぶ。
下塗りを行うことで、木材の表面をさらに均質化させる、木の繊維を固めて安定化させる(乾燥などによって割れたり反ったりし難くする)など、多くの効果があります。
この下塗りの作業には、シーラー(英語で「覆い隠す」という意味のSeal(シール)から)などが用いられます。
出典:CAINZ
▲下塗りで用いられるシーラーはポリウレタン樹脂系の塗料が一般的。下地の細かい凸凹を滑らかにして、木部への塗料の吸い込みを防止するなど目止めとしての効果もある。
④中塗り
中塗りとは、最終的に表面の凸凹を調整し、上塗りのための平滑な面を作る作業です。
上塗りと同系統の塗料が用いられるのが一般的です。
⑤補色
補色(ほしょく)とは、上塗りの前に色の濃淡が顕著に現れている箇所がある場合、刷毛(はけ)やスプレーなどで色を加えて均質にする作業です。
⑥上塗り
出典:株式会社鎌野塗装
▲各種塗装は使用する塗料やどのような仕上げにしたいかによって塗る回数も変わってくる。
上塗りとは、仕上げとして最終塗膜を作る作業です。
塗膜を作る透明塗装
木製家具の透明(クリヤー)塗装では、木材の素地調整や着色の有無が重要となります。
素地が凸凹の状態で透明塗装をかけた場合、塗装の仕上がりも凸凹となってしまい、特に透明塗装だとその凸凹が影となって目立つため不格好に見えてしまうからです。
また素地の色を変更する場合、透明塗装を行う前に着色する必要があるので、下地の段階でステイン(※)で塗装して色味を調整します。
※ステインとは
木材を着色するための塗料で油性と水性がある。
木目を生かしながら着色することができるのが特徴だが、木に成分を浸透させ色を付けるだけなので塗膜を作らず木の表面を保護する役割は無い。
そのためステインで着色した後に透明塗装で塗膜を作らなければ色落ちする可能性もある。
出典:YAHOOショッピング
▲木に浸透して塗膜を作らないステインは、さまざまなカラーバリエーションがある。色を濃くしたい場合は2度塗り、3度塗りを行って調整する。
生地仕上げ
生地(きじ)仕上げとは、木材のそのままの色合いや木目を生かした仕上げのことで、「木地(きじ)仕上げ」、または「素地(そじ)仕上げ」とも言われます。
色のついた塗料は用いずに、ワックスやクリアラッカーなどの透明塗料で塗装して木材の表面に塗膜を作ります。
これにより塗装した箇所が濡れ色となるのが特徴です。
白木仕上げ
出典:Nagami
▲白木仕上げのフローリングは北欧インテリア、和風、様々なインテリアテイストにマッチする。
白木(しらき)仕上げとは、塗装による濡れ色が出ず、木材の本来の色がそのまま表現される仕上げのことです。
無色透明の水で木を濡らすと木の色は濃い色(濡れ色)に変わってしまうのと同じように、無色透明の塗料を塗っても通常は濡れ色になってしまいます。
白木仕上げ用の塗料は、うっすらと白く着色することで濡れ色を防ぎ、木材本来の色味を残しながら木材をコーティングすることができます。
出典:SUVAKO
▲木材本来の色味を愉しむナチュラルなインテリアは、自然な暮らしを求める人々に人気が高い。
一般着色仕上げ(透明着色仕上げ)
一般着色仕上げとは、(安価な)木材を色のついた透明塗料で着色する仕上げのことで、「透明着色仕上げ」とも言われます。
安価な木材を高級材っぽい色に着色して高級材に似せたり、あるいは家具の大量生産のために色調を統一して(ムラを無くすために)着色する場合などに使います。
木地を見せる仕上で最も多用されている仕上げが一般着色仕上げです。
出典:大橋塗料
▲一般着色塗料によって安価な木材でも高級感のある雰囲気をだすことができる。木目がしっかりと見えることに注目!(だから「透明着色仕上げ」とも言われる)
トラディショナル仕上げ(アンティーク塗装、エイジング塗装)
トラディショナル仕上げとは、家具や室内装飾などに施された彫刻の凸凹部分に色の濃淡を付けたり、塗料が剥がれたりかすれたりした風合いを出したりすることで西洋古典家具のような使い古した感じを出す仕上げのことで、「アンティーク塗装」または「エイジング塗装」とも言われます。
オーク、マホガニー、カバ、ローズウッドなど、欧米の伝統的な家具に使用されていた樹種に施されることが多いです。
ちなみに「トラディショナル仕上げ」は、欧米の伝統的な木製家具に似せる塗装ですが、「アンティーク塗装」や「エイジング塗装」は、シンプルに古めかしく見せるだけの塗装でもあるので、塗装に「クラック」と呼ばれるひび割れをつくったり、新しい木材を古材風に見せたり、さらには金属に錆(さび)を施すなど、塗装対象を木材に限りません。
出典:タカラ塗料
▲トラディショナル仕上げは基本的に木材に使用するが、アンティーク塗装やエイジング塗装は金属など様々な素材にも使用される。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
わからないことや分かりにくい箇所があれば、ぜひお問い合わせよりご連絡ください。
次回もお楽しみに!
▼次回、木製家具の塗装の後編はこちらから!▼