こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「椅子の上張り材といえばレザーだよね。」
- 「そういえば天然皮革と合成皮革の違いって何だろう?」
という皆様に向けて、椅子の張り材(後編)についてまとめて画像で解説します。
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皮革の上張り材
チェアやソファなどの家具には、古くからレザー(革)が好んで使用されてきました。
レザーは非常に丈夫な素材で、メンテナンスを正しく行えば100年以上持ちます。
これは人工的に作られたレザーには到底真似できません。
出典:BADA
▲19世紀後半のイギリスで製造されたレザーソファ。ダメージもあるが、その美しさを保っている。
本物のレザーは手触りが良く、なんともいえない上質な風合いを醸し出していて、時間が経ってますます味わいが増すのも大きな魅力のひとつです。
天然皮革
出典:Humanscale
まず、動物から剥いだ皮膚のことを「皮(かわ)」と言います。
また皮から毛を取り除いて、鞣(なめ)して得られる製品のことを「革(かわ)」と言います。
つまり「皮革(ひかく)」とは、この2つの総称、生皮から革までを指す言葉ということです。
ちなみに「毛皮(けがわ)」とは、毛をつけたままなめした革のことで、広義では皮革に含まれます。
そして天然皮革(てんねんひかく)とは、人工的に作られた革である「合成皮革(ごうせいひかく)」などと区別するための言葉で、「本革(ほんがわ)」と呼ばれることもあります。
鞣し(なめし)とは?
▲なめし加工後の革。直射日光にあてると色が変わってしまうため、室内で乾燥を行う。
「皮」は、そのまま放っておくと水分が抜けて硬くなってしまい、腐敗してしまうなど使い物になりません。
そんな皮の主成分であるタンパク質やコラーゲン分子を化学的に結合させて、皮の内部構造を安定化させることで耐久性のある、柔らかくてしなやかな「革」へと変える加工が「鞣し(なめし)」なのです。
なめしの加工方法はいろいろありますが、最も有名なものに
「タンニンなめし」と「クロムなめし」があります。
タンニンなめし
▲タンニンで染まった赤褐色の液体に皮を漬け込むことで革が誕生する。
タンニンなめしとは、古代エジプト時代より行われている最も古いなめし加工です。
赤ワインやお茶にも含まれる渋み成分である「タンニン」に皮を漬け込むことで、皮のタンパク質に反応して「革」へと変化します。
タンニンなめしは非常に手間と時間がかかり、完成までに数か月もの期間を要しますが、仕上がった革はしっかりとした質感で丈夫であり、自然素材のため革本来の雰囲気を感じることができます。
▲タンニンが入れられた「ピット槽」は、それぞれタンニンの濃度が異なり、皮は薄い濃度の槽から濃い濃度の槽へ順に漬けられてゆく。
タンニンなめしのメリットは、使い込むほど革が柔らかくなり、色艶が増してどんどん深い味わいが出てくることです。
このような時間が経つことにより素材本来の味わいや質感が増すことを「エイジング」といいます。
しかし雨に弱く、変色・変化が激しいという弱点があるので、取り扱いには注意が必要です。
出典:アナロジコ
▲革が持つ本来の質感を楽しめるタンニンなめし。植物性の材料を使用しているので、環境にも人にも優しいのが特徴。
クロムなめし
出典:func-wallet
▲クロムなめしはピット槽ではなく回転するドラムに皮を投入して浸透させる。
クロムなめしとは、完成までに時間のかかり過ぎるというデメリットを持つタンニンなめしを、もっと早く効率的に作れるように開発された歴史の浅い(100年程度)なめし加工です。
クロムなめし剤と呼ばれるクロム化合物をドラムの中に投入して皮に浸透させるのですが、浸透に要する時間はたった一日程度で、早く大量に革をなめすことができます。
出典:func-wallet
▲ドラム内に投入されるクロム化合物『塩基性硫酸クロム』
クロムなめしのメリットは、タンニンなめしと比べて変色・変化が控えめで、メンテナンスを頻繁に行う必要がないことです。
薄くて軽く、革が柔らかいのも大きな魅力と言えます。
また、ドラムから取り出された革は白っぽい色味となるため着色がしやすく、オレンジやピンクなど鮮やかな色の表現が可能です。
▲鮮やかな色味のバッグや財布の革の多くはクロムなめしが用いられている。変色がしにくく、メンテナンスを頻繁に行う必要がないなどのメリットもあり。
デメリットは、クロムなめしは重金属系なめしのため、アレルギー体質の方には不向きの場合があるということと、植物タンニンなめしのような革本来の経年変化によるエイジングを楽しむことができないということがあります。
人造皮革
出典:Kyowa
人造皮革(じんぞうひかく)とは天然皮革に似せて作られた人工素材のことで、模造品の皮革という意味合いを込めて「フェイクレザー」とも呼ばれます。
天然皮革と比べて安価で耐水性が高く、また動物を殺さないので動物の権利などの倫理上の問題が無いなどのメリットがありますが、質感や風合いは天然皮革に劣り、また寿命が短く自然分解しないため焼却処分が必要になるなどのデメリットがあります。
合成皮革
出典:札幌革職人
合成皮革(ごうせいひかく)とは、布地に合成樹脂(ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など)を塗って天然皮革に似せて作られている人造皮革で、「合皮(ごうひ)」とも呼ばれてさまざまな製品に使用されています。
▲合成皮革の断面図。皮革のように見えても実際は樹脂であるため、手触りなどは天然皮革に敵わない。また水分を通さないので、内部に湿気が溜まりやすい。
▼ポリウレタン樹脂やビニール樹脂はこちらでも!▼

合成皮革の表面の質感については、天然皮革に似せるために「型押(かたお)し」が行われているものが多く、見た目としてはかなり本物に近いものもあります。
出典:HUSTNET
▲合成皮革にも天然皮革と見紛う見た目のものも開発されている。
また天然皮革は丁寧なメンテナンスを続ければ長持ちし、色味や艶感の経年変化を楽しめますが、合成皮革は製品によって年数の差はありますが徐々に劣化し、数年で表面が割れる事があります。
出典:HUSTNET
▲劣化して表面の樹脂が割れてしまった合成皮革。
人工皮革
出典:Kyowa
人工皮革(じんこうひかく)とは、マイクロファイバーの布地(不織布が多い)に合成樹脂を「含浸(がんしん:浸み込ませること)」させたもの、またはそれを基材として合成樹脂を塗布した人造皮革のことです。
人工皮革と合成皮革との見た目の違いについては、どちらも合成樹脂を使用しているためぱっと見で見分けることはなかなか難しいです。
両者の違いについては家庭用品品質表示法で定められていて、基材(ベース)に不織布を用いられているものが「人工皮革」、不織布以外のものを用いられているものが「合成皮革」となります。
表面材では無く合成樹脂が含浸・塗布されている基材の違いというのがポイントです。
▲人工皮革は不織布などに合成樹脂を含浸・塗布しているのが特徴。今更だが、不織布とは「繊維を織らずに絡み合わせたシート状のもの」のことをいう。
◼️人造皮革の違い
人工皮革:基材に「不織布」を用いる
合成皮革:基材に「不織布以外の織物」を用いる
合成皮革が1850年代ごろに登場したのに対し、人工皮革は1964年に日本企業の「クラレ」が、1970年に「東レ」が販売開始した比較的新しい素材です。
もともとは天然皮革に限りなく見た目も質感も近づけることを目的として開発され、現在では天然皮革と同じような艶のあるタイプや、起毛したスエードタイプなども発売されていて、家具だけではなく衣類や靴などにも使われています。
出典:Cropozaki
▲合成皮革と人工皮革を見分けるときは裏面を見てみよう。写真のように不織布が使用されていれば人工皮革である。
お疲れ様でした。
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