こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「インテリア用語で出てくるヴォイドとソリッドってなんですか?」
- 「ついでにネガティブとポジティブについても教えて欲しい。」
という皆様に向けて、視覚心理と造形について画像で解説します。
インテリア計画を造形として捉えると?
ポジティブスペースとネガティブスペース
造形(ぞうけい)とは、言葉の通り「形(かたち)」を「造(つく)」る作業のことで、この形は「フォルム」とも呼ばれます。
インテリア計画を一種の「造形」に例えるならば、何もない室空間(インテリアスペース)を「空洞(ヴォイド)」として、そこに構成要素(インテリアエレメント)である「固形(ソリッド)」を配置していく作業と捉えることができます。
この固形(ソリッド)には、家具やカーテン以外にも壁や窓、そして建物自体も含まれ、これらソリッドの部分を「ポジティブスペース」と呼びます。
反対に何も無い空間であるヴォイドの部分は「ネガティブスペース」と呼ばれます。
ポジティブ、ネガティブと聞くと「積極的↔︎消極的」とか「肯定的↔︎否定的」というイメージをまず思い浮かべてしまうのが一般的かと思いますが、ポジティブには「確固たるもの、形の在るもの」、ネガティブには「それに相反するもの」という意味があることも覚えておきましょう。
ポジティブスペースとネガティブスペースという言葉は、建築・インテリア業界だけでなくデザイン業界全般で使用されていて、何も無い空間であるヴォイドは「余白(よはく)」という意味でも捉えられます。
この余白という意味でのネガティブスペースは、目の錯覚を使用して実際には描いていないものが浮かび上がって見えるようにする、という手法にも用いられています。
「ルビンの壺(Rubin’s vase)」という、1915年ごろにデンマークの心理学者である「エドガー・ルビン」が考案した非常に有名な反転図形があります。
実際には1つの壺があるのにも関わらず、2人の人が向かい合った横顔にも見えるというもので、目の錯覚を利用し、ネガティブスペースを上手く利用した非常に有名な反転図形のひとつです。
また国際的な航空貨物輸送会社の「FedEx(フェデックス)」のロゴにも、「E」と「x」の間にできる余白が「右向きの矢印」のようにも見えるという、輸送会社ならではの反転図形が隠されています。
出典:FedEx
▲「Ex」の中央には隠された「→」が。ネガティブスペースは使い方次第でデザインにインパクトを持たせることができる。
人間の視覚の生理
視点と注視点
人の目は、一般に「前方から後方」、そして「明るい方向から暗い方向」へ視線が動くという特徴があります。
また、人の目が「どこを見ているか」という点を「注視点(ちゅうしてん)」、「どこから見ているか」という点が「視点(してん)」、その2つを結ぶ線を「視線(しせん)」と呼びます。
▲屋根の上にいる猫を注視した場合、見ている目のある位置が「視点」、猫の位置が「注視点」、この2つをつなぐのが「視線」となる。
視線
視線は、特に何も気にしていない状態では水平よりやや下に向けられる傾向があります。
立位や座位姿勢の基準となる視線の方向は、視軸から下方へ約10〜15°とされています。
出典:CCmart7
▲テレビを見ていて疲れない距離は「画面の高さ(H)×3倍」以上、角度は下方へ約10〜15°とするのが望ましい。テレビを壁面に取り付ける際は、高い位置になり過ぎないよう要注意!
視野
視野(しや)とは、両目で見ることができる範囲のことです。
視野の角度は、水平視軸から上方へ約46〜55°、下方へ約67〜80°、左右方向は両目で約200°で、上下方向より左右方向の方が広い範囲を見ることができます。
これらの視野範囲には個人差があり、高齢になると有効視野がさらに狭くなるほか、作業に集中している際や移動速度が早くなるほど視野範囲は狭くなります。
出典:おもいやりライト
▲視野の範囲は意外と広いと感じるかもしれないが、実際は「有効視野」からでしか文字を読むなどの有効な情報を得ることはできない。
なんとなく見えている範囲ではなく、文字を読んだり情報を収集できる視野の範囲が有効視野(ゆうこうしや)です。
有効視野のさらに中央には、中心視野(ちゅうしんしや)と呼ばれる最も細部まで形や色が識別できる範囲があり、有効視野の外側には両目で約200°の範囲で動きや位置を捉えることができる周辺視野があります。
出典:エクシールの工場インフォ
▲中心視野を視ることを「中心視」、周辺視野を視ることを「周辺視」という。
焦点(フォーカルポイント)
焦点(しょうてん)とは英語で「フォーカルポイント」とも呼ばれ、ある空間に入った時に一番はじめに視線が集まる場所のことです。
日本建築で有名なフォーカルポイントには、和室に設けられる床(床の間)があります。
出典:designAC
▲床(床の間)のある方向が和室の正面であり、掛け軸や花瓶などで飾られる。
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また、ゆらゆらと動く炎を使用した暖炉などは、強力なフォーカルポイントとなります。
出典:Ecosmart Fire
▲バイオエタノール暖炉はフォーカルポイントとしてホテルなどにも採用されている。
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最も簡単にフォーカルポイントを作るものとしてはインテリアアートなども効果的です。
▲空間全体の明度や彩度を抑えて、アートでアクセントカラーを入れると効果的な焦点となる。
▼インテリアアートはコチラで紹介しています▼
人の目の基本性能
人の目が対象の形を捉えるためには、「目(視覚)」、「対象」、「光」の3要素が必要になります。
この3要素のひとつで、対象を認識する人の目(視覚)には次のような性能があります。
- 明暗視(めいあんし):明暗を判断する機能
- 色彩視(しきさいし):色を識別する機能
- 形態視(けいたいし):形の違いを識別する機能
- 運動視(うんどうし):動きを認識する機能
恒常性と恒常視とは?
恒常性(こうじょうせい)とは心理学用語で、物の大きさ、形、色、音などは、距離、光の明暗などの条件によって違っているはずなのに、ほぼ同じように(一定に)感じられる傾向のあるさまをいいます。
例えば、円形テーブルの天板を斜め上から見下ろした時に、自分の目には距離と角度によって楕円形に映っていても「これ楕円形のテーブルだわ」とは思いませんよね?
これは恒常性によって、自らの脳が「これ距離と角度で楕円形に見えているだけで、実際は円形だろ?」というように認識・判断しているのです。
▲上記のテーブルは楕円形の形をしているが、「円形は奥行きと角度よって楕円形に見える」という経験による恒常性から、実際は円形だろうと脳が認識することができる。
このような、瞳には形が違って映っていても、実際の形を認識できる恒常性を「形の恒常性」といいます。
また、下の画像のテーブルに置かれた二つのケーキの大きさを比べてください。
出典:NTT
右にあるケーキの方が大きく見えませんか?
ところが実際は二つとも同じ大きさで、恒常性により「奥行きが違うのに大きさが同じに見えるっていうことは、右のケーキめちゃめちゃデカイな!」と脳が判断しているのです。
このように、目に映る物を頭で整理して判断するものの見方(知覚)を恒常視(こうじょうし)といいます。
もうひとつ、下のイラストを見てください。
特に不自然さはありません。
出典:NTT
▲遠くにいる巨大な像が小さなネズミの居る方を見ているように見える?
奥には大きなゾウが小さなネズミを見つめているように見えますが、背景を取り払ってゾウとネズミのイラストだけにしたものを改めてご覧ください。
出典:NTT
▲巨大なネズミ?ミニチュアサイズのゾウ?
背景の無い単体のイラストで見ると、ゾウのイラストはネズミのイラストより小さいのです。
私たちの脳は背景や環境の奥行きと物の大きさを同時に計算していて、それに基づいて大きさを認識しており、このような脳の働きを「大小の恒常性」といいます。
ナンタルカのまとめ
■インテリア計画を造形として捉えると?
造形とは(①)を造る作業のことである。インテリア計画を一種の造形に例えるならば、何もない室空間(インテリアスペース)を(②)として、そこに構成要素(インテリアエレメント)である(③)を配置していく作業と捉えることができる。(②)の部分は(④)スペース、(③)の部分は(⑤)スペースとも呼ばれる。
■人間の視覚の生理
(1)人の目は一般に前方から後方、明るい方向から暗い方向へ視線が動くという特徴があり、人の目がどこを見ているかという点を(①)、どこから見ているかという点が(②)、その2つを結ぶ線を(③)と呼ぶ。また視線が自然に集中するところを(④)という。
(2)両目で見ることができる範囲のことを(①)といい、文字を読んだり情報を収集できる視野の範囲が(②)という。さらに中央には(③)と呼ばれる最も細部まで形や色が識別できる範囲があり、(②)の外側には両目で約200°の範囲で動きや位置を捉えることができる(④)がある。
■人の目の基本性能
(1)対象を認識する人の目には明暗を判断する機能の(①)、色を識別する機能の(②)、形の違いを識別する機能の(③)、動きを認識する機能の(④)がある。
(2)目に映る物を頭で整理して判断するものの見方(知覚)を(①)といい、脳が背景や環境の奥行きと物の大きさを同時に計算し、それに基づいて大きさを認識するような脳の働きを(②)という。
お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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