どうも、しけたむです!
この記事では
- 「モデュールの基礎についてざっくり知りたい。」
- 「モデュール、モデュルス、モデュロース・・・。違いを確認しておきたい。」
とお悩みの皆様に向けて、
モデュラーコーディネーションの基礎について画像で解説します。
モデュラーコーディネーションとは?
設備や機器類の生産や建築部材の生産においては、「単位」や「比率」を意味する「モデュール(モジュール)」という言葉がさかんに用いられます。
モデュールとは「規格化された寸法の単位」のことで、建築を設計する際に用いられる基準寸法となります。
古代ギリシャでは「円柱の直径」が、日本では「畳」などがモデュールとして使用されてきました。
モデュールを利用することにより、部材が破損しても取り替えが簡単に行えたり、量産化することにより価格を抑えたり、プレハブ化(※)を進めたりすることができるようになります。
※プレハブとは
建築物の部材を規格化してあらかじめ工場で作っておき、現場で組み立てる工法、またはその建築物のこと。
プレハブ工法で建てられた住宅は「プレハブ住宅」などと呼ばれる。
ちなみにプレハブという言葉は「前もって製作された」という意味の英語「Prefabricated(プレファブリケーテッド)」を短くした和製英語である。
モデュールを用いて建築空間を構成することを、モデュラー(モジュラー)コーディネーションといいます。
さまざまなモデュールの利用例
モデュールは建築・インテリア業界に限ったことでは無く、コンピュータ業界を発展させるものとしても利用されてきたのは有名な話です。
アメリカのコンピュータ関連企業『IBM(アイビーエム)』は、1980年代、開発中の新しいコンピュータの仕様を公開し、規格にあったモジュールであれば内部はブラックボックス(内部構造が不明であること)でもかまわないという開発体制(モジュール化)をとりました。
モデュール化の採用により世界中に無数の部品メーカーが誕生し、モデュールの性能を競ったためパソコンの性能は飛躍的に高まりました。
反対に日本メーカーはモデュールを採用せず、系列会社などの生産した部品だけを使い続けたために海外との競争に遅れをとるようになってしまったのです。
これ以降、コンピュータ企業は性能が高くて価格の安いモデュールを世界中から探して組み立てるというビジネスに特化し、格安の賃金で大量生産できる新興企業が幅を利かせることとなりました。
出典:ミライノシテン
▲黒川紀章設計の『中銀カプセルタワービル』(1972年) キューブのかたちをした住宅は交換可能な構造だが、実際には現在に至るまで一度も交換されたことはないそう。当初の計画では竣工から25年毎(最初が1997年)に交換されるはずだった。
出典:Timeout
▲埼玉県立近代美術館に展示されている『中銀カプセルタワービル』のプロトタイプ(試作品)。
▼黒川紀章と『中銀カプセルタワービル』はこちらから▼
代表的なモデュール
モデュルス
モデュールの歴史を過去に遡ると、古代ギリシャにまでたどり着きます。
そもそも「モデュール」という言葉は、ギリシャ語の「モデュルス(モドゥルス)」に由来し、モデュラーコーディネーションの考え方の原型が古代ギリシャの神殿建築に見られます。
▲モジュールの概念を最初に取り入れたのは、古代ギリシャの都市オリンピアにある『ゼウス神殿』だと言われている。ゼウス神殿は古代ギリシャからローマ帝国期までを通じて建てられた神殿の中で、最も大規模な神殿だった。
古代ギリシャでは、神殿の柱の基部(きぶ:根元の部分)の直径を「1モデュルス」という単位とし、これを基準として建築の他の部分の寸法を決めていました。
▼古代ギリシャの「モデュルス」はこちらでも紹介しています▼
木割
出典:Gooブログ/木割り
また、日本では「木割(きわり)」と呼ばれる設計手法が取り入れられました。
木割とは、柱の「見付け寸法」、つまり「柱を正面から見たときの幅(長さ)」を基準として、建築を構成する様々な寸法を比例関係で決めていく設計手法のことです。
例えば・・・
「廊下の幅は、柱 8.5 本分の寸法にしよう!」
→柱の太さが12cmなら、廊下の幅は 12cm×8.5本 で 102cm!!
「階段の1段の高さは、柱 2 本分の寸法で!」
→柱の太さが11cmなら、階段の1段の高さは 11cm×2本 で 22cm!!
ということです。
▼木割はこちらの記事でも紹介しています▼
畳割
日本の代表的なモデュールといえば、やっぱり「畳(たたみ)」です。
畳の大きさは部屋の広さを表す上での基準として、多くの人に認知されています。
畳を利用したモデュラーコーディネーションとして、江戸時代の京都を中心に考案された「畳割(たたみわり)」があります。
畳割とは、畳の大きさと配置方法(畳の置き方)に合わせて柱と柱の間隔を決めていく設計手法です。
「まず最初に畳ありき」で畳の位置を決めた後、畳の周囲に柱の位置が決められているので、敷いてある畳の大きさが全て同じサイズで畳をどこに敷き変えてもぴったりと納まります。
出典:前田伸治+暮らし十職
▲畳割の畳の大きさは全て同じ。柱と柱の間隔は毎回調整されるため異なる。近畿地方を中心に普及した設計手法。
▼畳割って何だっけ?となったらこちらから▼
モデュロール
20世紀を代表する偉大な建築家「ル・コルビュジエ」は、独自の美の基準である『モデュロール』という寸法体系を設計に用いています。
モデュロールとは、コルビュジエが「人体の寸法(約183cm=コルビュジェの身長)」と「黄金比(※)」から作った、建築物の基準寸法の数列のことです。
※黄金比(おうごんひ)とは
古代ギリシャで発見された、最も安定し、美しい比率「1:1.618」のことで「神の比」とも呼ばれる。
黄金比は芸術や建築の分野にも応用され、古代ギリシャの『パルテノン神殿』や『ミロのビーナス』、パリの『エトワール凱旋門』などにも、黄金比が用いられている。
長方形の短辺と長辺に黄金比が用いられた長方形は「黄金長方形」と呼ばれ、身近な使用例には名刺やクレジットカードなどがある。
出典:株式会社アーティス
▲黄金長方形から正方形を取って切り離すと、残った図形は再び黄金長方形となる。この角の点を滑らかにつないでいくと渦巻き状の螺旋を描くが、これを「黄金螺旋(おうごんらせん)」と呼ぶ。
モデュロールは、フランス語の「module(モジュール:寸法)」と「Section d’or(セクション・ドール:黄金分割)」という言葉から作ったル・コルビュジエによる造語で、人が立って片手を上げた時の指先までの高さ(ヨーロッパ型のモデュロールでは226cm)を黄金比を使って各所の寸法を割り出すという方式です。
これだけ聞くとなんだか訳わかりませんが、とにかくこのモデュロールを使うと人間が腰掛けやすい椅子の高さや快適なソファの奥行き、通りやすい廊下の幅や、登りやすい階段の高さなどを求めることが出来て、住みやすい快適な住宅を設計することが可能になる、ということなのです。
▲ル・コルビュジエとモデュロール
▼ル・コルビュジエはこちらの記事にてご紹介▼
ベーシックモデュール
1973年には「ISO(国際標準化機構)(※)」によって、10cm単位のモデュールであるベーシックモデュールが提案されています。
※国際標準化機構とは
国際標準化機構( International Organization for Standardization)は、世界各国の国家標準化団体で構成される、1947年にスイスで設立された非政府組織のこと。
「ISO(アイエスオー、イソ、アイソ)」という略称で呼ばれる。
国際標準である「国際規格 (IS : international standard) 」を策定している。
ISOのモデュールは大文字のアルファベット「M」で表されます。
例えば、「2M」と表されたときは「2メートル」のことでは無く、「20センチメートル」を意味しています。
ナンタルカのまとめ
■モデュラーコーディネーションとは?
設備や機器類の生産や建築部材の生産においては「規格化された寸法の単位」である(①)が利用され、建築を設計する際に用いられる基準寸法となる。(①)を用いて建築空間を構成することを(②)という。
■代表的なモデュール
モデュールという言葉はギリシャ語の(①)に由来し、神殿の柱の基部の直径をモデュールとしていた。日本でも(②)と呼ばれる合理的な寸法体系が書院造の設計に取り入れられていた。これは、柱の(③)をモデュールの1単位とするものである。
■ル・コルビュジエの寸法体系
フランスの建築家ル・コルビュジエは(①)と呼ばれる、人体を(②)で分割した建築デザインのための寸法基準を考案した。
■ベーシックモデュール
1973年には(①)によって、(②)単位のモデュールであるベーシックモデュールが提案されている。
お疲れ様でした。
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