こんにちは、しけたむです!
この記事では
- 「インテリアで使われるプラスチックにはどんなものがある?」
- 「熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂ってなに?」
という皆様に向けて、
プラスチックの種類と特性について画像で解説します。
プラスチックとは?
プラスチックとは、石油や石炭を材料として人工的に合成された「樹脂」のことで「合成樹脂(ごうせいじゅし)」とも呼ばれます。
そもそも「樹脂」とは樹木から分泌される樹液が固まった物質のことで、水に溶けにくく油分が揮発すると固まる性質があり、古くから松脂(まつやに)、柿渋(かきしぶ)、漆(うるし)などの塗料や接着剤として使われてきました。
出典:MAKIE Yasuhiro asai
▲漆の木の幹に傷をつけて、樹液を1滴ずつ採取する作業
▼漆はこちらの記事で紹介しています▼
この樹脂をより腐りにくく、耐久性を備え、軽くて使いやすく、さらに安価で大量生産できるように化学的に開発されたのが「合成樹脂(プラスチック)」で、20世紀に開発されるとそれまで使われていた木材や繊維、ガラスや陶器などのさまざまな素材がプラスチックへと置き換えられました。
プラスチックの特徴
出典:Jutarnji
▲世界で初めてプラスチック(ポリプロピレン)だけで作られたチェア『PANTON CHAIR』(1967年)はデンマークのデザイナー「ヴェルナー・パントン」によるデザイン。
一般的なプラスチックに共通する大きな特徴に、電気を通さない絶縁体(ぜつえんたい)ということが挙げられます。
さらに軽くて耐水性があり、耐衝撃性や耐腐食性も高く、金型などによる成形が容易で大量生産が可能という高性能な素材である為、日用品や工業製品、医療品などにも幅広く利用されてきました。
またプラスチックには熱に弱いという弱点がありますが、耐熱性を強化した「エンジニアリング・プラスチック」を開発することによりその弱点をも克服し、自動車や家電製品などの高温になる箇所に使用されています。
出典:ホッティーポリマー株式会社
▲自動車にはエンジニアリング・プラスチックよりさらに耐熱性を強化した「スーパーエンジニアリング・プラスチック(スーパーエンプラ)」が用いられている。
▼バイオマスプラスチックはこちらから▼
プラスチックの分類
プラスチックを熱的性質から分類すると、熱すると硬くなり、再度加熱しても軟らかくならない卵のような「熱硬化性樹脂(ねつこうかせいじゅし)」と、熱すると柔らかくなって、冷やすと固まるチーズのような「熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)」に大別されます。
熱硬化性樹脂
ポリエステル
出典:Amazon
▲ソファやカーテンなどの生地に用いられるポリエステル
ポリエステルとはエンジニアリング・プラスチックの一種で、合成繊維としてファブリック製品に多用され、またペットボトルの材料としてもなじみ深い熱硬化性樹脂です。
耐久性、耐薬品性が高く、伸び縮みに強く耐摩擦性もあるので、ファッション業界だけではなく、クッションカバー、ソファ生地、カーテンなどのインテリアファブリックにも無くてはならない人気素材のひとつです。
その繊維は非常に強くてシワになりにくく、軽量で形状記憶性もあるなど合成繊維ならではの特長があります。
出典:カーテンじゅうたん王国
▲自然素材にはない合成繊維ならではの利点が多いポリエステル。カビや湿気にも強く、速乾性があるのでインテリアファブリックに多用されている。
また、合板の表面に化粧紙を貼り合わせたものにポリエステル樹脂を塗布して硬化させた板である「ポリエステル化粧合板」は、通称「ポリ合板」とも呼ばれ、比較的安価な収納家具の棚板などとして普及しています。
出典:林木材株式会社
▲化粧紙の色や柄によって様々な柄や色のポリエステル化粧合板が存在する。
ポリエステル化粧合板は、後述する「メラミン化粧合板」と比べると強度や高級感に劣る為、引き出しの中や仕切り板などの目や手に触れにくい部分に使われることが多いです。
出典:ディノス
▲収納内部の可動棚など目や手に触れない部分には、安価なポリ合板が使われることが多い。
またガラス繊維で強化したポリエステルを「不飽和(ふほうわ)ポリエステル」と言って、キッチン・浴室材料、自動車・船舶などの耐水性・耐久性が求められる場所に使用されています。
▼FRPはチャールズ・イームズの家具にも使われていました▼
ポリウレタン
出典:ベガハウス
▲ポリウレタンを発砲させてスポンジ状にした「ポリウレタンフォーム」
ポリウレタンとは「ウレタン樹脂」とも呼ばれる熱硬化性樹脂で、発泡させてスポンジ状にすることによりソファやベッドのクッション材や断熱材として広く利用されています。
他のプラスチックと比べると耐摩擦性や耐油性に優れますが、耐熱性や耐水性はやや劣り、発泡させないものは塗料や接着剤、衣料品ではジャージや水着などのストレッチ素材に使われています。
出典:マリオン株式会社
▲主に鉄骨造やコンクリート造の建物の外壁にはシーリング(コーキング)と呼ばれる弾力性の素材がを充填して建物に水が侵入しないようにしているが、ポリウレタン樹脂はこのシーリング材としても利用されている。
また、発泡させたポリウレタンは泡の密度の高さにより硬質や軟質などに分けられ、硬質のものは住宅の断熱材や椅子のシェル構造のボディに、軟質のものはクッション材に用いられています。
出典:フリッツ・ハンセン
▲シェル構造とは貝殻のような流線型の構造のこと。デンマーク人デザイナーのアルネ・ヤコブセンがデザインしたエッグチェア(左)とスワンチェア(右)にも硬質発泡ポリウレタンが使用されている。
▼アルネ・ヤコブセンの家具はこちらから▼
出典:オーガニックスタジオ新潟
▲発泡ウレタン断熱材を木造の壁体内に吹き込み施工をしているところ。隙間なく施工することが出来るという利点があるが、湿気を通さないため壁体内で結露が発生する恐れがある。
メラミン樹脂
出典:店舗家具のピースワーク
メラミン樹脂とは、引張強度・硬度や耐衝撃性が非常に高い熱硬化性樹脂で、表面に光沢があり耐水性、耐候性、耐磨耗性にも優れているのが特長です。
紙にメラミン樹脂を含浸させて基材に貼ったメラミン化粧合板は、頑丈で見た目も美しいので、キッチンや高級家具の表面材として用いられています。
出典:Toyokitchen
▲耐水性・耐候性に優れ、光沢のある美しいメラミン化粧合板は、キッチンキャビネットをはじめテレビボードやシェルフなど様々な家具の表面材に用いられている。
出典:85Inc
▲メラミン化粧合板は無地はもちろん、木目や石目、柄のついているものもある。
またメラミン樹脂は耐久性・耐衝撃性が高く壊れにくいという特長から、病院や食堂などの食器として利用されています。
出典:モノナビ
▲不特定多数の人が利用し、長期間の使用に耐えうるものとしてメラミンは最適な素材といえる。
フェノール樹脂
出典:Corelic online
フェノール樹脂とは、耐熱性・耐水性・電気絶縁性の高いフェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂で、酸に強いですがアルカリには弱いという特徴があります。
樹脂そのものを製品として成形することはほとんど無く、合板に含浸させて強化合板として建築物や家具などの下地材として多く用いられています。
またポリウレタンのように発泡させることにより高い断熱性能をもつ住宅用断熱材としても利用されていて、代表的な断熱材に旭化成株式会社が開発した『ネオマフォーム』があります。
出典:良質なくらし
▲住宅用の断熱材として用いられる『ネオマフォーム』
ダップ樹脂(DAP、ジアリルフタレート)
出典:特注什器
ダップ樹脂(DAP、ジアリルフタレート)とは、電気絶縁性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、成形性など多くの優れた物性を持つ熱硬化性樹脂です。
ダップ樹脂は電気的特性に優れているため電気部品のコネクターやスイッチ、コイル、プラグカバー等に使用されていて、インテリアの分野ではシステムキッチンの化粧板などの用途にも使われています。
出典:住設ショップ
▲ダップ化粧板はメラミン化粧板と同じように様々な柄や色があり、性能もほぼ同じ。見た目で違いを見分けるのは難しい。
熱可塑性樹脂
ポリエチレン
出典:SEDIARREDA
▲アウトドア用のプラスチックチェアにはポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂が用いられる。
ポリエチレンとは、世界のプラスチック生産量の約25%を占めるという最大の生産量をほこり、また最も原料価格の安い熱可塑性樹脂です。
とにかく加工性に優れ、衛生面の高さからレジ袋、ラップ、タッパーなどに、また薬品と反応しにくい性質からシャンプーや洗剤などのプラスチック容器としても利用されています。
出典:NEES
▲レジ袋やゴミ袋など、私たちの暮らしにとっても身近なポリエチレン
またポリエチレンは低温には強いのですが70℃以上の高温環境には弱く、変形したり燃えたりするため使用には向きません。
インテリアの分野では、内部が空洞になっている家具や雑貨を作るのにブロー成形(中空成形)という成形方法が用いられますが、これにはポリエチレンが使用されています。
しかしポリエチレンは紫外線に弱く、直射日光に当たる環境では劣化が早くなってしまう為、使用場所には注意が必要です。
出典:コトブキシーティング
▲ポリエチレンをブロー成形したものはスタジアムのシートなどにも用いられる。
ポリプロピレン
出典:Vitra
▲アウトドア家具の素材はポリエチレンよりポリプロピレンの方が一般的 『Panton chair』(Vitra)
ポリプロピレンとは、ポリエチレンによく似た熱可塑性樹脂ですがプラスチックの中で最高の耐熱性を誇り、かつ比重が最も軽く水に浮かぶという特徴をもちます。
また非常に硬くて傷がつきにくく、対薬品性・耐水性・絶縁性に優れた性質を持ち、価格も安価です。
繊維としてカーペットや人工芝、ロープやネット、下着などに用いられるほか、射出成形品として食器洗い機やコーヒーメーカー、電子レンジの利用が可能な食品容器、ペットボトルのキャップ、アウトドア家具、フィルムやシートとしてお菓子などの包装紙、レトルト食品のパウチなど、幅広い用途で私たちの身の回りに広く利用されています。
▲ポリプロピレンはポリエチレンと比べると硬く、熱に強く、軽いという特徴がある。
出典:犬の家&猫の里
▲ポリプロピレンのラグは耐水性があり汚れに強く水洗いができることから、こども部屋やペット用のラグにも使用されている。
ポリプロピレンの短所はポリエチレンと同じように、紫外線による劣化が早いことが挙げられます。
また合成樹脂への接着、印刷がしにくいというのも難点です。
塩化ビニル(ポリ塩化ビニル、PVC)
出典:NEWSCAST
▲水道管のパイプは塩化ビニルが用いられていて、「塩ビ管」という名称で幅広く利用されている。
塩化ビニルとは「塩ビ」「ポリ塩化ビニル」とも呼ばれる熱可塑性樹脂で、長期間にわたり強度を維持できる安定性と、劣化しにくい耐久性を持ち合わせながら、非常に安価に大量生産できるのが大きな特長です。
そのため用途は多岐にわたり、壁紙、網戸の網、水道管パイプ、椅子やソファの張地(ビニールレザー、合成皮革)、断熱材、防音材などに用いられています。
出典:モダンデコ
▲「フェイクレザー」とも呼ばれる合成皮革には、塩化ビニルが用いられることもある。
▼フェイクレザーとは?てかたはこちらから!▼
短所としては、ほかの合成樹脂と比べると衝撃に弱く、低温環境でさらに耐衝撃性が低下することと、耐熱温度が60〜80℃、融点が85〜210℃程度と耐熱性に乏しいことです。
また、火にさらされると溶融して炎を消す働きがあるため難燃性の材料とされますが、溶融時に有害物質であるダイオキシンが発生することが問題となっています。
出典:Wallkriti
▲塩化ビニル壁紙では、3Dの印刷技術を使用した高繊細な壁紙も登場している。
ABS
▲子供が踏んだり投げたりしても割れにくいよう、頑丈なABS樹脂が使われたおもちゃのブロック。
ABSとは、3種類の樹脂を組み合わせ、それぞれの長所を兼ね備えた高性能な熱可塑性樹脂です。
その3種類の樹脂の長所とは、
「A:アクリロニトリル」の耐熱性、機械的強度、耐油性
「B:ブタジエン」の耐衝撃性
「S:スチレン」の光沢性、加工性
です。
また着色可能で光沢もあるので、見た目やデザイン性を求めるプラスチックとして、プラモデルや玩具、自動車部品、デスクの引き出しやスーツケースなどに利用されています。
出典:MAARKET
▲加工性が高く、耐衝撃性、耐油性も高いABSはデスクの引き出しによく利用される。
出典:RIMOWA
▲一部のスーツケースにも硬質プラスチックとしてABSが使用されている。
ポリアミド(ナイロン)
ポリアミドとは、エンジニアリング・プラスチックの熱可塑性樹脂で、1935年にアメリカのデュポン社が開発した「ナイロン」と呼ばれるポリアミドの一種が有名です。
「蜘蛛の糸より細く、絹よりも美しく、鋼鉄よりも強い」というその特徴を現したキャッチフレーズで、合成繊維として女性用ストッキングに使われたのが始まりと言われています。
ナイロンの誕生はファッション業界に革命を起こしたとも言われており、今では衣類やバッグ、ストッキングだけでなく、携帯端末など幅広い製品に利用されています。
※ポリアミドとナイロン
ポリアミドとナイロンは、なぜ2通りの名称があるのか?
ナイロンとはアメリカの化学メーカー『デュポン社』の商標であり、ナイロンはポリアミドの1種ということになります。
ナイロンはデュポン社によって開発された世界初の合成繊維で、「ナイロン6」、「ナイロン66」、「ナイロン11」などさまざまな種類があります。
ちなみに日本では「ナイロン」での表記が一般的ですが、ヨーロッパなどでは「ポリアミド」での表記が一般的とされています。
伸ばしても耐えることが出来る靱性(じんせい)と、表面が硬く、こすれても摩耗しない優れた耐摩耗性を持ち合わせているのが特長で、また染色性にも優れていることから、インテリアの分野ではカーペットなどに使用されています。
出典:JAB
▲耐摩擦性に優れるナイロンは、靴を履いて使うようなラグに最適。
ポリアミドは潤滑性にも優れている為、家具では引き出しのレールや椅子のキャスター、引き戸の戸車などにも用いられています。
出典:Ctel
▲オフィスチェアに用いられるポリアミド(ナイロン)製のキャスター
またプラスチックの中では比較的融点が高く(225℃〜265℃)、耐薬品性や耐油性が優れているため、自動車産業や薬品を使う実験器具、装置などにも利用されています。
ポリカーボネート
出典:ASE Europe
▲ポリカーボネートは板ガラスのようなものから、耐衝撃性の高さから上の写真のような中空のパネルとして軽さを出したものもある。カラーバリエーションも豊富。
ポリカーボネートとは、ドイツのバイエル社が開発した熱可塑性樹脂の一種で、後述のアクリル樹脂などと共に「有機ガラス」とも呼ばれます。
耐衝撃性や耐久性、透明度に優れた素材であることから、建築物の外装、テラスやバルコニーの囲いパネル、他にもカメラレンズや車のヘッドランプなどに活用されています。
ちなみに一般的な耐衝撃性の高さは、ガラスの約200倍、アクリル樹脂の約30倍にもなります。
出典:Dazeen
▲紫外線に強いプラスチックとして外装に利用することが出来る。-40℃~125℃までの温度にも耐えられるため、屋根や看板などの屋外利用に最適。
難点は耐薬品性が低いことで、特にアルカリ剤や溶剤で劣化してしまいます。
また接着剤などの使用ができず、引っ張り強度を超える力を加えると白く変色して透明度が低下することなどが挙げられます。
▲透明度や強度の高いポリカーボネートは家具としても用いられる。『LOUIS GHOST』(Kartell)
アクリル
出典:アクリルアイ
▲「プラスチックの女王」とも呼ばれるアクリルは透過率93%とガラスより透明性が高く軽くて頑丈。
アクリルとは、非常に透明性が高く、繊維としてアクリル繊維、透明固体材としてアクリルガラスとして利用されている熱可塑性樹脂で、ポリカーボネートなどと共に「有機ガラス」と呼ばれています。
アクリル繊維は、ふんわりとした羊毛のような軽さと暖かさを兼ね備えているのが特長で、静電気が発生することと毛玉ができやすいのがネックではありますが発色も良いため、遮光カーテンやラグなどのインテリアファブリックや衣料品に利用されています。
出典:びっくりカーペット
▲アクリル製のカーペットやラグは、比較的安価なものが多い。
アクリルガラスはガラスより高い透明度を持っている上に軽く割れにくい為、ガラスの代用品としても用いられています。
しかし性能が高い分、値段においては通常のガラスよりも高価という難点があります。
また熱や傷に弱いことも難点で、擦り傷や引っ掻き傷がつきやすい為、雨風が当たる屋外で用いる際には注意が必要です。
▲加工のしやすいアクリルガラスは、倉又史朗がデザインした『ミス・ブランチ』(1988)にも使用されている。
▼倉又史朗って誰だっけ?て方はこちらから!▼
お疲れ様でした。
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